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ロボティクス・メイカー  作者: 藤岡 幸春


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18/25

#-01:カズミ

【小説内の記号ガイド】


* 「」:登場人物の会話。

* 《》:通信などの隠密会話。

* ():登場人物の心の中の声。

* []:AIの初期状態。アナウンスUI。

* ▶ :カメラアングルを動かす、最小限の状況ナレーション。

* ━━:カメラを別の場所・時間へ飛ばす場面転換。

* /////:キャラクターの赤面演出。


掃除婦|リョウコ・カザモリの独白


先日、久々昔の元同僚のカズミとカフェでお茶した。

カズミはメカ音痴で、私のようにRW(搭乗型人型作業機械)に乗ったりというのはムリなのだそうだ。

それで若干、カズミは私に対してコンプレックスを抱えている。

あなたはいいわね、適性があって。私は未だRWにも乗れず、こうして地面で小さく掃除しているだけ。

私は貴方が羨ましいわ、と言われた。しかし私はこう、返した。


掃除の作業にどちらが上とか下とか無い。私はRW乗りの清掃員になってしまったけれど、

RWじゃ入り込めない、人間の生活に根差した細かい場所の清掃は貴方達が未だに必要。

ロボット掃除機もあるけれど、人間の繊細な判断力、行動力が求められる分野はまだまだある。

だからどうか、貴方も誇りをもって、掃除をして。誰からも感謝されなくても、誰かがきっと見ている。

少なくとも私は貴方のことを尊敬している。これからもお互い違うフィールドでがんばりましょう。


そう、私はカズミに伝えた。彼女はやっぱりアナタには敵わないわ、と少し呆れたように私に言った。


お互い、身体に気を付けて日々を過ごしましょう。

お互いのささやかな楽しみのために毎日を生きましょう。


また逢う日まで、さようなら。


---


掃除婦|カズミ・タケバヤシの独白


元同僚のリョウコとカフェでお茶した。

リョウコは私なんかと違って、とても輝いている。自分で道を切り開けている。

私には何も取り得が無い。ただただ決められた場所を掃除するだけ。

もちろんそれでも十分恵まれているとは思う。

身体も五体満足だし、毎日健康に働けている。


しかし私の中にパッションが無い。情熱を注げるものが無い。

毎日をただ、ただ、生きているだけ。


明日もWMD内の巨大ショッピングモールの清掃作業が入っている。

毎日が同じように続いていく。


それでいいのだ、と自分に言い聞かせながら、働く。



━━西暦2056年。地球。

ここは超巨大なインフラ、ウェルカムマスドライバー(WMD)内の商業施設エリア。

WMDとは宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。

レールの中は住居になっている。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


<ウェルカムマスドライバー住居エリアの構造>

* 【階層1:低所得層・スラム】:地上(海面)〜高さ400m(約100階建て相当)。最も横幅が広く(3km)、空気循環が滞りやすいため下層になるほど過密・劣悪化。工業エリアの騒音が響く。


* 【階層2:中流層】:高さ400m〜800m。最も標準的な都市機能、巨大ショッピングモール、オフィス街が集まる。


* 【階層3:上流層】:高さ800m〜1,200m。最も見晴らしが良く、空気が綺麗。頂点付近は超巨大な避難宇宙船になっていて、WMDから分離・発艦できる仕組みになっている。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



━━WMD内の巨大ショッピングモール



カズミ「よし、ここは終わりっと」


迷子の女の子|メグ「えぇぇぇええんっ!おかーさぁあんっ!どこーっ?!」


カズミ「どうしたの?迷子?」


メグ「う、うん……。ぐすん……」


カズミ「サービスカウンターまで行きましょう♪」


メグ「ありがとう、おねーちゃん」


カズミ「いやだもぅ///// 私なんかもうおばさんよ♪」



━━サービスカウンター



カズミ「それじゃ、あとはお願いします……。って、アレ?」


サービスカウンタースタッフ「あらあらw カズミさんはお掃除しなくっちゃいけないんですよw メグちゃん♪」



▶ メグはカズミに懐いてしまって、カズミの作業着の裾を掴んだまま離さないでいる。



カズミ「じゃあメグちゃんのおかーさんが来るまで居てあげようか?」


メグ「うん!ありがとう!」



▶ カズミは仕事用の端末で上司に連絡を入れた。



カズミ「……というワケなので、しばらくいいですか?」


カズミの上司「その仕事も立派な仕事だ。そのまま居てあげなさい。勤務扱いにしておくから。今日作業できなかった分は明日以降で構わないよ」


カズミ「ありがとうございます!」



▶ 1時間ほどしてメグの母親がサービスカウンターに到着した。



メグの母親「すみません!こんなによくしていただいて!ここのショッピングモール、巨大すぎて時間が掛かってしまって……。申し訳ないです!」


メグ「おかーさーん♪ あ、おねーちゃん!これあげるっ!」


カズミ「えっ? いいの?」


メグ「いいの~♪ おねーちゃん! ありがとうっ!!」



▶ カズミはメグから飴玉を1袋もらった。うずまきしるこ味の限定品だ。



カズミ(これ……、めちゃんこ人気でめったに手に入らないのよね……。正直助かる。あとでゆっくり味わいながら食おう……)


メグ「おねーちゃん! バイバイ! いつもお掃除ありがとうっ!! これからも応援してまっす♪」


カズミ「うん、メグちゃんも元気でね!」


メグの母親「本当にありがとうございましたっ!」



▶ メグと母親は幸せそうな背中を向けながら、その場をあとにした。



カズミ「案外、この仕事も、悪くはない……、かな♪」



━完━


---


【用語】


・ウェルカム・マスドライバー:略称「WMD」。宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。レールの中は住居になっている。


・ロボティクス・ワーカー:略称「RW」。人型汎用作業機械。全高15メートルの搭乗型ロボット。


---


【ロボティクスメイカー|設定紹介】


ロボティクスメイカーの公式サイトはコチラ↓

https://robotics-maker.jimdofree.com/

本編第1話の前日譚です。

本編第1話はこちら▼

https://ncode.syosetu.com/n9533le/5


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