Chapter6
――――いきなり町のど真ん中に立ってるけど、大丈夫なのか……?
町の人たちはオレたちが最初からそこに在ったような顔をしていた。
しかし、詩歌の顔を見ると小さな声で何やら話し始める。
「この世界がビンゴだったのかな?」
「うぉぃっ!?」
そこにいたのは、男の皐……。わかっていてもビックリするよな、普通……。さっきまで女の子だったんだから。
「そんなに驚かなくてもいいと思うけどな……」
「いや、びびるだろ」
「そんなことより、歓迎ムードじゃなさそうだよ?」
皐が集まってきた人たちを顎で指す。
「詩歌。大丈夫か?」
町の人々を見たまま詩歌に顔を向ける。
――「シーカ?」と、何人かの人が口にすると、目の前から竜が飛んできたりしたわけで……。
「やばそうだね……」
皐が奥歯を噛み殺す。
「ちが、違うの……! 私は、何も……!」
詩歌は頭を抱えて叫びだす。
わけわかんねぇ……。詩歌は、頭抱えてるし、竜は襲って来るしさ。
「皐っ! この前みたいに元の世界に……」
「できない。もうすこし、この世界に身体がなれないと、この世界を抜けることはできないんだ」
どうするよ……? こんなに危ないなんて聞いてないんですけど……。
竜はオレたちを襲っている、と言うよりは詩歌だけを狙っていた。だからオレなんかでも避けたり出来てるわけだけど、そろそろ限界だ。
「もう少し……。よし、飛ぶよっ!」
詩歌を振り回しながら竜を何とか避けていると、少し離れたところにいた皐がオレと詩歌の腕を掴む。
「……っ!」
オレは尻餅をついた。皐はオレを見下ろし笑いを堪えている。
「あれは何なんだ……?」
「ボクは知らないよ……? けど、小鳥なら……」
詩歌は頭を抱え丸くなっていた。
「ふざけるなっ! こんな状態の詩歌に何がわかるって!」
「月見は、男には厳しいよね……」
皐は、はぁ、と肩をすくめてみせる。
「人の家の中で騒ぐのは関心しないよ……?」
突然、知らない声が響く。皐がすぐに身構え、オレと詩歌の腕を掴もうとする。
「やめたほうがいいよ。キミのそれ場所が特定できないんだろ?」
「……」
皐は言葉に詰まり。だが、いつでも飛べる体勢をつくる。
「キミのその能力がなんなのか知らないけど。町の連中に見つかるのはまずいだろ? オレはキミたちの味方をするよ」
町の連中……? 世界を抜けてはなかったのか……。
「何のために……?」
皐が淡々と警戒心剥き出しで問いかける。――意外と頼りになるんだな。
「そこの女の子が知り合いに似てるからかな? あと、キミたちもだけど」
そういうと微笑を浮かべる。
その顔は、オレと同じ顔だった。――正確には、オレより年上のオレの顔がそこにはあった。
「僕は、月見里翔」
そう言って握手を求めてくるオレ……。
「そうですか……」
呆然と苦笑いするオレを皐は大笑いで指指し、年上のオレは首を傾げていた。
詩歌を眠らせて、年上のオレ――この世界のオレからこの世界について聞いた。
――この世界では、“ドール”と呼ばれる機械を一人一体以上は持っているのだという。
さっきの竜もそのドールというものらしい。
ドールを作る人達は人形技師、ドールを操る人達を機功師というらしい。
この世界の人々は、ドールを操ることで発展してきたという。
戦争はドールを使い、労働などもドールが行う。
より良いドールを作れる人形技師が称えられ、よりドールの能力を惹きだせる機功師が称えられる……そういう世界なのだそうだ。
「それで、町の人たちは何で小鳥に――あの子に反応して襲い掛かって来たんです?」
皐が、この世界のオレに聞いている。
「それは、オレの口からは言いたくない事件なんだ……。町の連中が勘違いしてキミらを襲った。それは謝るよ」
彼はオレたちに頭をさげた。
オレはそこにあった機械――ドール、だっけ? に興味を引かれていた。
何体かある中で一体だけ、まるでオレを呼んでいるような感覚。
「あー、そこにあるドールは主を選ぶんだ。キミも選ばれたんだろう」
そういうと彼はそのドールに少し触れ、オレの前に持ってくる。
「こいつは癖があるが凄いドールだ。キミにやるよ」
「え、オレに…? けど、金とか持ってないし……」
「金はいらない。これはオレが作ったものじゃないしね。それに主を選ぶって言ったろ? 貰ってやってくれ」
くれるって言うなら、もらうけどさ、さっきみたいに狙われるかも知れないし。
「ありがとうございます……」
受け取ると、その機械の目に光が灯り、そのドールはまるで生きているかのような存在感を放ち始めた。
「キミは、何かあるかい?」
彼は皐にも問いかける。
皐は黙って真っ直ぐ一体のドールに近づく。
「その子か」
そう言って皐にもドールを渡した。
なんか、オレ、かなり良い人じゃね? ――まあ、別の世界のオレだけど。
オレが貰ったドールは、小さなドラゴン。頭の上に乗るくらいのサイズで、四枚の翼を持ち、白銀の鱗に覆われている。
皐が貰ったドールは、精霊のようなものだろうか。赤色の液体が女性のような形を作っている。その形は、何にでも変化することができるようだ。皐がいろいろと命じて試していた。
「ドールにも心はある。特にその子たちは。それだけは忘れないでくれ」
この世界のオレは真剣な表情になる。
「あ、後で地下室に来なよ。その子たちの戦いかたを教えてあげる」
そう言って、この世界の翔は歩き去った。




