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Chapter5

 オレたち3人は今日も学校に残っていた。

 皐が仲間に加わり、文芸部候補だったオレたちは文芸同好会という形で正式に活動が許可された。

 あの日――別の世界に行ってしまった日から数日が経ったが、誰も重複世界とやらの話はしようとしなかった。

 そんなオレたちが学校に残って何をしているかと言うと――――文芸同好会らしく、演劇の台本を考えているわけだ。

 もう大体の話は決まっている。


 それは、一人の少女の話しだ。――いや、二人と言ったほうが適当かも知れない。


 ――とある世界に一人の少女がいた。その少女には友達と呼べる友達がいなかった。

 そこで、彼女は1つの人形を作ることにした。寂しさが癒えると思ったから。友達が欲しかったからだ。

 一所懸命、気持ちを、心を込めて一人の女の子の形をした人形を作っていく。

 もちろん、少女もそれが本当の友達になるなんて思っていない。ただ寂しさを癒して欲しかった。そばにいてくれる存在が欲しかったのだ。

 人形が完成した時、その人形は人の心を持ってしまった。

 少女の友達が欲しいと言う気持ちが強すぎたのだろう。――人形は少女に笑いかけ、そして少女とおしゃべりをした。

 次第に人形は動けるようになり、その身体も人間に近いものに変わっていった。

 少女は、「気持ちが悪い」と罵られ、その人形以外、誰もまともに話してくれなくなった。

 少女は泣いた。けれど、その人形を嫌いになることはなかった。

 しかし、その人形は周りの人間に受け入れられることはなかった。

 邪険にされ、中には人形を燃やそうとする人まで何人も現れた。

 少女の親も例外ではない。

 ――そして、少女は旅に出ることを決意する。その人形を連れて。

 誰からも非難されない二人で住むことが出来る外の世界。そんな世界を夢見て。

 ――少女たちは外の世界に行くことができた。二人で誰にも邪魔されるずに住むことが出来る世界。

 しかし、少女はそんな世界を望んでいたわけじゃない。

 望んでいたのは、『友達が欲しい』それだけだった。

 彼女は、自らの作った人形に自分を殺すように命じる。人形は彼女を殺し、自分も後を追おうとした。

 しかし、それは人形だった。自分のことを傷つけても死ぬことが出来なかった。

 しばらく、一人の時間が続いた。人形は、自分が最初から人間だったらと何度も思った。

 ――ある時、その人形から涙が流れた。

 その時だった。神様が人形の元に現れ、その人形を殺してくれたのだ。


 それから、少女と人形は、仲の良い友達として生まれ変わり、今も楽しく暮らしている。


 大体こんな内容だ。演劇って言うよりは絵本だ、とかツッコミたいかも知れないがそれは胸にしまって……。

「これが、詩歌の作りたかった世界か……」

 この話を考えたのは詩歌だ。オレは話を聞き、まとめる係り。皐は……。何かしたか?

「え、あ……うん」

「小鳥の話、すごい面白いよ。あ、面白いっていっても悲しいし……」 

 皐はそのまま長考に入った。何が言いたいのか……。

「この話、ずっと考えてたのか?」

 皐は無視決定ってことで。

「ほえ……? えっと、考えてたって言うか……」

 詩歌は言葉を探しながら、少し顔を俯ける。

「知ってたの……」

 はい……? どこかで聞いたことがある話だってことだろうか。確かにありそうな話なのだか――それだけなら、どれだけいいか。

「それじゃ、この話が小鳥の元いた世界?」

 お前はずっと長考でも何でもしてろ! とか口には出しません。

「わかんないけど……。こんなような話を昔の記憶だけど、確かにこの世界を知ってるの……」

 話を知ってるじゃなくて、世界を知ってる……ですか。

「わかったところで、皐の世界でその世界に行けるのか……?」

「月見は冷めてるね……。どうせ、ボクの力は行きたいって思った世界に行けるほど便利じゃないですよー」

 皐に横目で睨まれる。

「前から聞こうと思ってたんだけど、詩歌は自分の世界を探して、そこに帰りたいのか?」

 皐を無視して詩歌をまっすぐ見つめる。皐も同じように詩歌を見ていた。

「ほえ……?」

「だから、仮に詩歌がこの世界の人じゃなかったとしても、詩歌はココにいればいい。無理して探す必要ないんじゃないかって」

「月見は、優しいねー」

 皐が肘で突いてくる。……はい、皐のガン無視が決定いたしました。

「わかんない……。でも、この話を考えてる時も、今読んでみても、胸がこう締め付けられるみたいに痛くなるの……。どうしたい、とかはわかんないけど、私は探さなきゃ行けないんだと思う」

 詩歌は真剣な眼差しでオレと皐を交互に見つめる。

 ――――と、急に世界が傾くような感覚に陥る。


「月見っ! 小鳥の手を……」

 皐が何かを叫んでいる。すると、詩歌がオレの手を堅く握る。


 何が起きたのか考える時間なんてなかった。世界が曲がったかと思うと、オレは知らない場所にいた。

 どうやら、別の世界に来てしまったらしい。

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