Chapter20
――世界が敵にまわった気分だよ。頭が痛い。あいつに、別の世界の自分に出会って、何かが変わった気がした。どこか諦めていた自分に希望がさしたような。そんな気がしてたんだけどな。
この世界はもう駄目だって、最上心が死んだ時、そう思った。オレは最上心の世界を守ろうって。最上心の作ったドールたちを集め、そして守ってきた。あの日から、それだけがオレの生き方だったんだ。
だけど、その生き方にも限界が来ていた気がする。皐に戦争を止めようと誘われれば悩んでいる自分がいた。
戦争は止めたい。戦争が最上心を一人にした。オレは戦争が最上心を殺したとさえ思っている。――でも、オレの世界を保つためには最上心のドールを守ることしかない。
今まで、そう思ってやってきたけれど、やっぱり今思うと限界だったのだろう。最上心の信じたオレ。ドールを傷つけることも躊躇して、どこのチームにも属さない。聞こえは良いかもしれないが実際には自分の身が誰よりも大切なだけだ。わかっていたけれど、最上心の信じたオレを信じていたかった。
そして、その想いに限界が来た時、――あいつらがやってきた。
まだ幼いオレと、皐、それに、最上心によく似た女の子……。彼らは別の世界から来た。それがオレの希望になった。
『それね、心ちゃんが幼くして死んでしまう世界には条件があるの。心ちゃんが死んでしまうのは半々くらいかな。――その条件はね、キミと出会うことなの』
オレと最上心が出会ったから、最上心は死んだ。それが今の世界のルールなのか? そんな理不尽があっていいのか。
オレには難しい事はわからない。だけど、やっぱり許せないよな。
「うん、それじゃ、ルシファーが戻るまで、ボクたちの考えをまとめとこうよ」
そう言った皐を無視して、立ち上がる。オレには行かなきゃいけない所があった。
「月見、どこ行くの?」
皐がニヤニヤした顔をこちらに向けてくる。きっとこいつはわかってくれているのだろうと思える。
「話は3人でしててよ。悪いけど、オレにはそういうのは向いてない」
そう言ってオレは部屋を後にした。
――この世界は痛みを知らないんだな。
電波塔前。その光景は悲惨なものだった。ドール達がお互いを壊し合う。これがこの世界の戦争なのだろうか。
オレたちがやっていた戦いは遊びにすぎなかったのか。
チームによる戦争。話には聞いていたけど……。
「やっぱり戦争なんだよな」
ドールが機械だから、遊びやゲームに思えていたのかも知れない。それってなんか悲しいよな……。
「……颯ッ」
オレが静かに呟くと颯の小さな4本の銀色の羽根が大きな4つの光へと変わっていく。
電波塔前、その喧噪に向かって4つの銀色に包まれた小さな希望が落ちていく。
「翔……? それにあの光……」
あの光は何? なんで、あそこに翔がいるって思うんだろ? ううん、どうして翔がいるってわかるんだろ?
不思議とこの光を見た時、頭の痛みは消えていた。痛みの消えた頭に残ったの優しくて静かな記憶。
――私はずっと翔といたかった。翔は年に数回、2週間程度私たちの町にやってくる男の子だった。私は何でか翔を好きなっていた。
――私は最上心のそばにいたかった。彼女を殺したくなんてなかった。最上心がいて、月見里翔がいて、私がいる。そんな夢を見ていたかった。




