べっ甲飴
こちらの言葉はね…難しいから、今の言葉に翻訳?してお話しますからね…。
菊ちゃは私より1つ上のおねいさん。
私を「あきちゃ」と呼ぶの。
街にでれば、地元の言葉で話すけれど、ここに入ったら…
「菊ちゃ…いえ…菊和さん…」
と…さん付けで話す。…言葉も変わる。
「…」
菊和さんはべっ甲飴をお口に運ぶと…そっと目を閉じた…。
「…。」
…癒しなのね…。
「この飴にずっと助けられてる…秋桜さんのお陰よ。ありがとうございます。」
「何時でも…」「…」
…夕方になり、街に明かりが点る頃…。
私は鏡台に向かい…髪を梳かして髪結いを始めた。
「…」
顔には微かな白粉をして…紅をさして…。
…鏡台を見た。
「秋桜…ね…」
頬が少し赤いから白粉をするとほんのりと桜の様になり、紅をさした唇は艶やかさを醸し出していた…。目尻は少しだけ…
「秋桜…菊和…」
…襖を開けて…女将さんが部屋に…。
「何でしょうか?」
「…2人とも、今日ははなやでは無く…」
「?」「え?」
「良いね?…2人にとっては初めての事だ。くれぐれも粗相のないように。」
…そう話して…部屋から出ていった。
「…宿の宴…」
菊和さんが思わず声を零した。
「…太いお客が…付いた…の?」
「…そ、そうかもしれません。」
…私達2人は…宿の宴に呼ばれる事は無く、このお座敷だけでお客のお相手をしていた。
だから…初めて…外のお宿に行き…お客の相手をする事に…現実では無い気がしてならなかったの。
けれど…時が経つに連れて
「…そろそろ行く時間だ。お前たち…」
旦那様が来てくれた。
「…分か…りま…した。」「……」
き、緊張…して…自然と震えてしまった。




