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ひとりたび  作者: 木卯さやの
33/34

べっ甲飴

こちらの言葉はね…難しいから、今の言葉に翻訳?してお話しますからね…。

菊ちゃは私より1つ上のおねいさん。

私を「あきちゃ」と呼ぶの。

街にでれば、地元の言葉で話すけれど、ここに入ったら…

「菊ちゃ…いえ…菊和さん…」

と…さん付けで話す。…言葉も変わる。

「…」

菊和さんはべっ甲飴をお口に運ぶと…そっと目を閉じた…。

「…。」

…癒しなのね…。

「この飴にずっと助けられてる…秋桜さんのお陰よ。ありがとうございます。」

「何時でも…」「…」

…夕方になり、街に明かりが点る頃…。

私は鏡台に向かい…髪を梳かして髪結いを始めた。

「…」

顔には微かな白粉をして…紅をさして…。

…鏡台を見た。

「秋桜…ね…」

頬が少し赤いから白粉をするとほんのりと桜の様になり、紅をさした唇は艶やかさを醸し出していた…。目尻は少しだけ…

「秋桜…菊和…」

…襖を開けて…女将さんが部屋に…。

「何でしょうか?」

「…2人とも、今日ははなやでは無く…」

「?」「え?」

「良いね?…2人にとっては初めての事だ。くれぐれも粗相のないように。」

…そう話して…部屋から出ていった。

「…宿の宴…」

菊和さんが思わず声を零した。

「…太いお客が…付いた…の?」

「…そ、そうかもしれません。」

…私達2人は…宿の宴に呼ばれる事は無く、このお座敷だけでお客のお相手をしていた。

だから…初めて…外のお宿に行き…お客の相手をする事に…現実では無い気がしてならなかったの。

けれど…時が経つに連れて

「…そろそろ行く時間だ。お前たち…」

旦那様が来てくれた。

「…分か…りま…した。」「……」

き、緊張…して…自然と震えてしまった。





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