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ひとりたび  作者: 木卯さやの
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時の虚ろい

…妻が俺の話を聞いて…

「そんな事あったわねぇ~」

妻が懐かしそうに目を細めていた…。

「ふふ…今じゃ信じられないけど…当時は本当に…信じてたわよ。写真機なんて、話でしか聞いた事なかったから…」

ママもくすくすと笑っていた。

「あのお宿に泊まってたのも驚いたけど…貴方が私と気が付いたのも…」

「そうよねぇ…」

そりゃ…

「分かるさ…。」

…。

そんな話をしていたら、いつの間にか夜の10時を過ぎようとしていた。

「…貴方、そろそろ戻る?」「…そうだね。」

「楽しい時間はあっという間だわ。」「本当ね。」

…あの時も…


あの女性が何処の何方かは分からない。…探したい。と思った俺はこの街にしばらく居る事にした。…宿で1人…あの女性の事を思い出していた。

背丈は俺より…ちょっと低めで…

コロロろ♪♪♪

…なんか音…?

…♪♪と音が障子の方から聞こえた。

…鈴のような?…そっと…立ち上がり、障子を開けた。…窓からは真っ暗な庭しか

チリリリ♪…な、なんだ??


お宿のお座敷には…3名の殿方が…。

「良く来たね…さ、こちらへ。」

…1番歳上の殿方が私を隣へと…

「失礼します。」

…その方は私を見て…

「秋桜さん。貴方にお願いがありましてね。」

「は、はい。なんで御座いましょう?」

「この2人にな…ここでの“遊び”を教えてやってはくれないか?…ようやく…“こういった事が出来る歳”になったんだ。今まで俺ん所で修行してきたから、こういった場所を知らない。」

…そ…それは…そのまさか…

「…酒席の嗜みというのを…ま、その後は…時の常に任せる。」

…時の常…。



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