口開け
夕飯を済ませ、部屋へ戻った。
…布団が敷いてあり、すぐにでも休める様になってるが
妻とちょっと外出する事に。
「営業時間は20時からだったな…」
「そうね。浴衣じゃ寒いかしら?」
「丹前を着て行けば丁度いい位かな。もし暑ければ脱げばいいしね。」
…日中は暖かいけど…夜は少し寒い。
丹前を羽織り、妻と共に部屋から出た…。
その頃…20時前から営業していた店では…
日が完全に暮れ、星が見え始める頃…。街の看板にも燈が灯る。コツコツと女モンの靴の音。
それに加えて、車の往来する光が窓から見えたりしていた。
「…結構賑わって来たな。…混まねぇうちに帰るか…。」
最初に来ていた客…槻さんがポケットから財布を取り出した。
「もう帰るのか?」
と…聞いた。
「混むのはどうも苦手でよ。だから口開けに来んだ。…紅葉ちゃん、なんぼ?」
「はい…」
…伝票を手に、レジに向かう紅葉。
「…槻さん、はい…」
伝票を槻さんに見せた。
「…ん。」
「五千円から…お釣りは二千円になります。」
…相変わらず…三千丁度に飲む…。
「…じゃ…またくっから。」「はい…♪ありがとうございました♪」
…紅葉がレジから離れ、槻さんを玄関まで見送りに出た。
からら…と玄関の引戸を開けて、槻さんが外へ
「またご贔屓に…」
「…ん。」
……
「……」
見送りを終えた紅葉がカウンターの皿を片付ける。
「…あら?」
…?…
「どうした?」
「…何か落ちて?…写真?」「え?」
写真…とな?
「…綺麗な方ね…。槻さんの奥様かしら?」
「どれ?」「…」
「…」
古い…白黒写真だった。と…
「…あれ?この方…確か…」
生ビールを飲みつつ、スポーツ新聞を見ていた、鉋さんが写真を見ながら言った。
「…槻さん懐かしいヤツ持ってんな。」
「?懐かしい?」
「…芸者の秋桜さん…俺らにゃ高嶺の花だった方だ。」
「秋桜?コスモスよね?」
…だよな?




