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ひとりたび  作者: 木卯さやの
25/34

口開け

夕飯を済ませ、部屋へ戻った。

…布団が敷いてあり、すぐにでも休める様になってるが

妻とちょっと外出する事に。

「営業時間は20時からだったな…」

「そうね。浴衣じゃ寒いかしら?」

「丹前を着て行けば丁度いい位かな。もし暑ければ脱げばいいしね。」

…日中は暖かいけど…夜は少し寒い。

丹前を羽織り、妻と共に部屋から出た…。

その頃…20時前から営業していた店では…

日が完全に暮れ、星が見え始める頃…。街の看板にも燈が灯る。コツコツと女モンの靴の音。

それに加えて、車の往来する光が窓から見えたりしていた。

「…結構賑わって来たな。…混まねぇうちに帰るか…。」

最初に来ていた客…槻さんがポケットから財布を取り出した。

「もう帰るのか?」

と…聞いた。

「混むのはどうも苦手でよ。だから口開けに来(く)んだ。…紅葉ちゃん、なんぼ?」

「はい…」

…伝票を手に、レジに向かう紅葉。

「…槻さん、はい…」

伝票を槻さんに見せた。

「…ん。」

「五千円から…お釣りは二千円になります。」

…相変わらず…三千丁度に飲む…。

「…じゃ…またくっから。」「はい…♪ありがとうございました♪」

…紅葉がレジから離れ、槻さんを玄関まで見送りに出た。

からら…と玄関の引戸を開けて、槻さんが外へ

「またご贔屓に…」

「…ん。」

……

「……」

見送りを終えた紅葉がカウンターの皿を片付ける。

「…あら?」

…?…

「どうした?」

「…何か落ちて?…写真?」「え?」

写真…とな?

「…綺麗な方ね…。槻さんの奥様かしら?」

「どれ?」「…」

「…」

古い…白黒写真だった。と…

「…あれ?この方…確か…」

生ビールを飲みつつ、スポーツ新聞を見ていた、鉋さんが写真を見ながら言った。

「…槻さん懐かしいヤツ持ってんな。」

「?懐かしい?」

「…芸者の秋桜(あきざくら)さん…俺らにゃ高嶺の花だった方だ。」

「秋桜?コスモスよね?」

…だよな?



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