第4話 四天王揃って自己破産、担保は魔王城の所有権です
四天王の一人、猛将バルザスが最前線基地に乗り込んできてからわずか数日。
魔王軍の最高中枢は、人間の想像を絶するスピードで『資本主義の闇』に完全汚染されていた。
「――バルザスよ、お前だけズルイぞ! 我ら四天王を差し置いて、自分だけ【インフィニティ・ゴッド会員】などという最高ランクに就くだと!?」
「そうだ! 我が魔導研究の予算をすべて注ぎ込んででも、俺はバルザスより上のランクに行ってやる!」
魔王城の一等地にある作戦会議室。
かつては人間を滅ぼすための血生臭い軍事作戦が練られていたその場所は、今や四天王たちによる「マウンティング必死のマルチ勧誘バトル会場」と化していた。
武闘派のバルザスだけでなく、知性派の妖術師、冷徹な女暗殺者、巨躯の魔獣使いという、世界を震え上がらせる四天王の4人全員が、ギラギラとした目で怪しいピラミッド組織図を睨みつけている。
なぜこうなったか。
理由は単純だ。
悪魔のトップに君臨する彼らは、誰よりも「プライドが高く、他人に負けるのが大嫌い」だったからである。
バルザスが「寝ているだけで金貨1万枚の不労所得システム」を自慢した瞬間、他の3人の対抗心に火がついてしまったのだ。
その会議室の特等席で、俺は最高級のソファに深く腰掛け、高級な葡萄ジュースを喉に流し込んでいた。
「いやあ、四天王の皆さま。素晴らしい向上心ですね。これぞ真のビジネスパーソンです」
「タカシ殿! 頼む、この妖術師の俺を今すぐ【ハイパー・プラチナ・ゴッド会員】にしてくれ! バルザスのピラミッドの下に入るなど、プライドが許さん!」
「俺もだ! 魔獣使いの俺の組織の方が、バルザスより大きいに決まっている!」
彼らは叫びながら、俺の前にゴールドの袋を叩きつけた。
だが、彼らは致命的な経済の仕組みを理解していなかった。
すでに最前線基地の悪魔は全員がルシ夫やゴル大佐の下層会員として埋まっている。
つまり、四天王がどれだけ高い初期投資を払って最上級のランクを買ったとしても、その下に勧誘できる『新規の悪魔』は、この魔王軍に一匹も残っていないのだ。
結果として、四天王たちに待っていたのは、基地の悪魔たちよりも桁違いに悲惨な「自腹営業(爆買い)」の地獄だった。
「クソッ、今月のグループ売上ノルマが足りん! このままだとバルザスにランクを抜かれる!」
「俺もだ! 組織の体裁を保つために、今月は『幸福の輝魔石・業務用コンテナ(ただの砂利3トン)』を自分で10個買い占めるしかねえ!」
四天王たちは、自分の地位とプライドを守るためだけに、魔王軍の国家予算を横領し、私財をすべて売り払い、ひたすら俺から『ただの砂利』を買い続けた。
当然、そんな自転車操業が長く続くわけがない。
わずか1週間で、四天王全員の個人資産は底を突いた。
「タカシ殿……! 頼む、あと金貨10万枚を融資してくれ……! 部下たちも皆、石の在庫を抱えて破産し、誰も戦わないのだ! このままだと今月の魔王城の家賃や、魔王様への上納金が払えん!」
青い顔をした四天王たちが、揃って俺の特設デスク(タカシ金融・魔王城出張所)に駆け込んできた。
かつての威厳はゼロ。ただの多重債務者の顔である。
「いいですよ、四天王の皆さま。私はビジネスパートナーを見捨てたりしません」
俺は営業スマイルを崩さず、引き出しから分厚い特別な契約書を取り出した。
「ただし、今回は大金ですので、金利はトイチ(10日で1割)。そして、返済が滞った場合の担保として……『魔王城の土地・建物の所有権』および『魔王軍の全資産の譲渡権』をいただきますが、よろしいですね?」
「う、魔王城を担保に……!? そんな大それたこと、魔王様に知られたら首が飛ぶ……!」
「おや、嫌なら結構ですよ? 今すぐランクが剥奪され、ルシ夫さんの下級会員に降格するだけですが」
「ぐあああっ! ルシ夫の下になるなど絶対に嫌だ! 書く! サインすればいいんだろ!」
プライドを人質に取られた四天王たちは、発狂しながら契約書に次々と血判を押していった。
ククク、かかったな。
返せるアテなど最初からないのだ。
これにて、魔王軍の総資産と拠点のすべてが、合法的に我がタカシ金融の懐へとスライドした。
あとは、ピラミッドの最上階に居座る「あの男」に、現実を突きつけてやるだけだ。
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