金星の輝き
「さぁ!今日は栄えある入学式だ!」
と、紬が一声あげる。
ん?紬の表情が変わらない、緊張だろうか。
「知っての通り、この学園…いや、簡易的なテントではあるが…では、勇者になりうる君たちを教育する機関だ。君たち30名の中から、私の後任の勇者が選ばれる。」
淡々と説明をしていく。
「―――それでは…まぁまず私の実力を見てもらおう。知ってはいるだろうが見たことは無いだろう。」
それを聞いて子供たちは盛り上がる。が、ただ一人だけがまっすぐ紬の目をじっと見ていた。
犬飼劔だ。他の子どもと違いずっと冷静でいる…あるいは、緊張で動けないか。
「君たち、ここに来るとき変な光る膜通っただろ。」
うんうん、と子供たちが頷き、顔を見合わせる。
「あの膜はピュリフィケーションと言ってな…その外にいる君たちは魔物に襲われるかもしれん。」
え?と子供が首をかしげる。
暢気なものだ…こんなにも危ないのに、紬のせいで安心できてしまう。
「見てな、恐くてもだ。」
ずしん、ずしん、という足音と共に、大きな黒い化け物がこちらに向かってくる。
足音が速くなる。低く腹に響く轟音を叫び、突進しようとする。
「プロテクト」
子供たちは四角い結界に保護される。
「ほんの最近作ったやつでね、派手で割とかっこいいから見せたくて。」
そう言って胸をそらす。
「フレア」
辺りが暗く見えるほどの光。
その中心には紬が佇んでいる。
体に沿って高速回転するその魔力は、勢い余ってはじき出され、戻る。
赤い光の糸にくるまれたように、紬の輪郭はぼやけていく。
魔物が走る。こちらに接近する。
その化け物は紬にぶつかり…
―――吸収された。
赤い糸が魔物を包み、魔物それ自身の魔力を変質させ、取り込んで見せた。
しゅるしゅると糸のような魔力がほどけて散る。
赤い魔力が照らす強烈な光が、それと対となるように、一時的な宵を生み出した。
宵の明星は、地上でひときわ輝いていた。
大多数の子どもは、縮こまって震えて泣いていた。
・・・
それから授業が始まった。
勇者になるための厳しい訓練だったが、ほとんどが音をあげずにやり遂げた。
劔の実力は突出していた。
自身の体で何度も実験し、自分自身の魔法を作り上げてしまった。
「…ぇえ?」
紬が困惑する。自分が思いつかなかったことを悔しがっているようにも見えた。
前方に成形した魔力をレールガンの要領で飛ばす。
それによって軌跡が一瞬にして真空となる。
その真空に押し寄せた空気と魔力に乗って"自身を高速で移動させる"という文字通りぶっ飛んだ技。
彼の得物は剣だ。高速移動しながら冷静に敵を切りつける化け物と化すだろう。
その魔法の名前は―――「遊」
No.32 [フレア]
体の表面に魔力を高速で滑らせ、回転させ続ける
勢いあまって飛び出した魔力が、高熱かつ高速の武器となる。
相手の魔力を取り込むことも可能。
No.33 [遊]
レールガンの応用。
飛ばした魔力の後方に意図的な真空を発生させ、自身を吸い込ませることで追従させる。
上方向への移動は得意じゃないため、丁寧な構築が必須。




