入試はつらいよ。
―――数十年がたった。
レジスタンスの中には魔力を使うことのできる子供が増えていたので、
勇者を継承する者を育てることができる。
紬は"勇者学園"なるものを企画し、生徒を募集した。
勇者になるということは、"魔王に挑んで死ぬかもしれない"ということだ。
子供は来たくないだろうし、親も行かせたくないだろうと思っていた。
せいぜい希望者が数十いれば上々…と、思っていたのだが、
なんと、レジスタンスの子供のうちほぼ全員が希望者として集まり、親も同意した。
これは、紬の力が大きい。
紬はこのレジスタンスで様々な偉業を成し遂げた初代勇者だ。
それに憧れた子供が多かったのだろう。
勇者という概念はもうすでに、現実のものとして確かに存在していた。
しかし、いくら紬でも、100を超えるような人数相手に教えることはできそうにない。
そこで、試験を設けた。
―――が、しかし難しすぎた。
紬は魔力が生まれる前の世代でありながら、魔力を扱うことのできる人間でもある。
魔王によって国家が崩壊する前、紬は高校生だった。
今の世に生まれた子供は、教育など受けられるはずもなく、試験の意味も理解できないようだった。
「そうだった…今学校ってないのか…。」
と、高校生の面影がみじんもない、紬はがっくりしていた。
数十年がたっても、その身体は十代の若々しさを持っていたが、その言動は冷静になっていった。
「紬、今回はロマンに走らないんだな。」
ぽかーん、と口を開けて、何を言っているのかわからないと主張しているようだ。
「いやほら、"ほら集え!戦え!最後に残ってた奴が入学だ!"みたいなやつの方が好きなんじゃないかと思って。」
「んー、でも、やっぱり演算ができないとなぁ…。」
確かに、紬の武器はその圧倒的な発想力と演算能力。やはりその二つは欠かせないだろう。
「―――それならパズルでもやったら?無言語のパズルくらい作れるだろ。」
「お、いいね。それなら難易度別に作った方が極端に差がつかなくていいかも、無言語だから知識もいらないし―――」
・・・
「と、いうわけで、出来ました~。」
紬はウキウキで図面を見せてきた。
曰く、このパズルは魔力で脳に直接ヴィジュアライズする方式で、解けたら紬に直接伝わるらしい。
難易度が5種類、各1問で5問用意してあって、全部時間内に解き切ると満点だそうだ。
「これなら大丈夫だ。試験は…1か月後とかでいいか?」
早い方がいいだろう。バッシングを受けたら延ばせばいい。
・・・
試験は大成功だった。子供の思考能力が広く分布したので、上位30名をとることにした。
中でも犬飼劔という古風な名前の子供は異様だった。
試験時間の4分の3を思考に使い、それぞれ5つのパズルを1回目の試行で成功させた。
思考時間は長いものの、ずば抜けて正確な思考能力は、圧倒的に紬の興味を引いた。
No.31 [ヴィジュアライズ]
思考を脳に直接伝える機能の応用。オブジェクトとして、相手の思考から独立させることでまざって崩壊することを防ぐ。相手が意図的に干渉することも可能。




