希望
重い話が続きましたが、私がタグに付けている”ハッピーエンド”の存在をお忘れなく…。
「…まぁ、殺すとは言っても、今の私たちじゃ絶対に勝てない。なぜだか解るか?」
紬は、集まったレジスタンスの団員に呼びかける。
場は静まり返る。
それもそうだ、いきなり「私は勇者になる。」なんて言われて、
しかも魔王を殺すだとかふざけたことを言っておいて、
今度は「今のお前らは話にならん。」なんて罵倒されたわけだ。
正直、私も面食らっている。
というより、半ば絶望している。
私は彼女を「勇者」と認めた。それほどの力を持っている。
それでも足りないのか、と。
「―――おや?通じていない…分かりました。私が勇者たる所以を見せちゃいましょうか…」
ぼそっと、呟いた。
腕を真上に挙げ、大きく息を吸う。
「パープル・キューブ」
頭上に、これまでよりもはるかに巨大な紫の立方体が浮かぶ。
「基地に―――いや、ここら一帯に結界を張る。」
見て居ろ、と、その眼は訴えかける。
「ピュリフィケーション!」
周囲に無数の槍のような光線が放たれる。
光線は無駄なく魔物の核を貫通し、蒸発させる。
いつの間にか、空には正三角形の大きな格子が浮かび上がる。
「いいか?これが、私が勇者たる所以だ!では、続きを話そう。」
ひとつ、咳ばらいをして、紬は話し始める。
「人類が戦えるようになるのは、おそらく十数年後だ。」
紬は、予想をひとつずつ丁寧に話す。
まず、今の人類にとって、大気中の魔力成分は毒であるということ。
魔力成分に体が慣れるためには、”バッテリ缶”を使って”適応”することが求められるということ。
”適応”した人間は魔法を使えるということ。
人類で魔法を使える、つまり”適応”した人間は紬と魔王、その側近しかいないこと。
そして、バッテリ缶は、もう一人分しか残っていないということ。
「…私が注目したのは、いまだ母胎で成長する胎児だ。」
胎児は、その親から栄養をもらうことになるが、その中に、わずかばかりの魔力の粒が入り込むことで、バッテリ缶と同じような効果が得られるだろうと予測したのだ。
同時に、身体機能が発達しきっていない時期に魔力を刷り込むことで、適応の速度は指数関数的に上がると仮定すれば、胎児の適応速度は常人の何十倍もの速さに跳ね上がる。
(なぜそう仮定したのかは、聞き出せなかったが。)
そう、紬はこれから生まれる子供は魔力に適応した…いわば新人類が台頭すると言った。
「―――ただし、私のように無制限の魔力制御能力を与えられるとは思えない。」
規格的な詠唱や、魔力総量の限界が今後追加される、もしくはすでに追加されているだろう。
レジスタンスの団員は、みな聞き入っていた。魔物の海に囲まれたこの基地が、陥落することに震えながら眠っていた昨日までとは全く別物の、涙を流していた。
これは確かな、希望だった。
No.23 [ピュリフィケーション]
浄化という意味。魔物を一掃し、広大な範囲を覆う結界を展開する。
結界内で発生した魔物はすべて実体を持つ前に死滅させられる。
一度張ったら永続的に残り続ける。
後に歴代の大魔法使いが拡張していくのが通例となる。




