魔法は儚く。
重め。
私、ヘパブルルカは9歳当時小学生だった。
「今日、おにーさん来るってー。」
両親は日本人で、本名は奈緒。
だけど、ヘパブルルカという名前を使っているのには理由がある。
近所に綺麗なドレスを着たお兄さんがいた。
お兄さんは毎度毎度変なものを作っては、近所の子供たちと公園で遊んでいる。
いつの間にか近所で有名になっていて、お兄さんが来ると、人だかりができていた。
「おにーさん!今日は何を作ったの?」
「今日はねぇ―――」
そうやって毎回違うものを見せてくれて、小学校時代は飽きることがなかった。
女の人みたいな見た目なのも面白いと評判だった。
・・・
私は病気に倒れた。
小さいころから体が弱かった私は、とうとう重い病を患ってしまった。
なんと、通常の免疫では太刀打ちできない未知の強力な細菌だった。
息はだんだんできなくなって、体中のいたるところが腫れていった。
寝返りがうてないほどの強烈な苦痛に耐えながら、ベッドで動けない日々だった。
怖い、痛い、痛い、痛い。
痛みにぎゅっと体を緊張させ続けて、疲れ切って気絶するように眠りに落ちる。
そんなとき、お兄さんがやってきた。
公園の子どもたちの中に、私がずっといないのに気づいたんだとか。
お兄さんはある缶ジュースを取り出して飲ませた。
舌すらヒリヒリする痛みが、その一瞬だけ消えた。
これを毎日飲むように言った。次からは両親が持ってくるから、と。
・・・
驚くべきことに、症状はみるみる回復した。
それに、前よりも元気に動けるようになった。
1日、2日、3日…1週間と飲むうちに、全身の腫れと痛みは自然となくなっていった。
数日、パチパチと体が音を立てるのを感じた。
ある日、お兄さんが飲んでいるところを見たいと言って、飲んでいるところを見てもらった。
頭の中に電子音のような音が響いた。
『人体と魔力デバイスが完全に適応しました。』
私は、完全に病気に打ち勝った。
・・・
私はお兄さんに言った。
「あなたが魔法使いなの?」
お兄さんは優しく微笑んで、
「そうだよ。お兄さんは危ない魔法使いだ。」
君の体を改造しちゃうようなね。と言った。
病気の後遺症で永遠に成長が止まってしまっただけでなく、
魔力という不純物を吸収させた罪悪感からか、
関わらない方がいいと忠告されてしまった。
「ついていってもいい?」
「だめ!」
私はずっと駄々をこねた。
「ついていってもいい?」
「だからだめって!」
次の日も、
「やぁあぁぁあだぁぁあぁあああ!!!連れてってぇぇええ!!」
「あー!!きこえなーい!!!」
その次の日も、
「つい―――」
「だめです。」
3日お願いしても突き放され続けた。
ようやく許してくれて、立派なコードネームをくれた。
「”ヘパブルルカ”」
リズムがいいからなんて言ってつけてくれた意味もない音だけれど、
私にとってはとても神秘的に感じられた。
パパとママには内緒ね?って言われたけど、お兄さんはちゃんと相談していたみたい。
この日から、私はヘパブルルカとしての人生を歩み始めた。
お兄さん―――魔法使いのまーくんのための人生を。
・・・
7年後、私は、
暗殺者に頭を撃ち抜かれて死ぬことになる。




