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「えー・・・、これ、食うか?」
「ぁぃっ。」
食うよ食うよ、しゃべるよしゃべるよ、・・・。
とりあえず、アパート帰るわけにもいかねぇんで、コンビニでその日の食事を買ってきて。
外でマキ燃やして風呂入って。
人形も倉庫にいれとくのもなんなんで、ジィちゃんの部屋で二人で向き合って、食事・・・。
───って、おかしぃだろ!?なんで俺、こう馴染んでんだ!?
「ぇー・・・っと。」
さっきから何回繰り返してるかわかんなくなってきた、何十回目かの「えーっと。」
間違いなく、彼女とのデートでこんな俺だったら、「なんなの?」って振られること確定だよなー・・・って、問題はそこじゃなく!(そこも大事だが)
「君、誰さ・・?」
いくらなんでも、おい人形、ってのもなんだ。
だが、はたからみたら人形に話しかける22歳、成人男性。
鉄板のリーチ目でどうみても「ヤバイ男」。
「ぁぃっ?」
小首をかしげて返事が返ってくる。
「えーと・・・さ、あそこは俺のジィちゃんの倉なんだけど・・・。」
──ってちょっとまった!あそこに拉致監禁されてたとかいうオチだったら俺、犯罪者!?!?しかもこんなちっちゃい子・・・もしやロリかよ!?
「ぅー・・・?」
やべぇやべぇやべぇ!ショックで口が聞けねぇとか言ったら・・・
いやまて、ジィちゃんはきっと無関係だ!通りすがりの悪いヤツがきっと
「じぃー・・ちゃ。」
まーーーじーーーでーーー!?!!?
「よし、警察いこう。」
さようなら、日常生活。
こんにちわ、変質者と呼ばれる毎日。
ああああああ、正直にげちまいてぇぇぇ・・・とはいえ、さっき俺も服脱がしたし、これ以上ややこしくなる前に・・・。
「ぅ?」
首をかしげる少女。その腕を掴んで──
・・・冷たい・・・?
「冷えたか?」
「ぅー?」
熱をはかってやろうと、額に手をかける・・・が。
「ぇー・・・っと。」
ひんやり、冷たい。
明らかに、今飲んでるペットボトルのお茶よりも。
「すいません、いっこ聞いていいでしょうか。」
「ぁぃっ。」
「アナタ、何者なんでしょうか?」
「すいませーん、どうやら疲れてるみたいでー。」
「あー、いい、いい、若いもんには良くあることじゃて、はよぅ帰って布団はいれや。」
「はーい、そうしまーす・・・。ご迷惑おかけしました。」
あたりも薄暗くなって、田舎独特のちっちゃい電灯の下。
二人のおまわりさんにあたたかーい眼差しで哀れまれ、缶コーヒーなんてもらっちゃう、俺。
ああ、やっぱ俺がおかしいのか・・・なんてシミジミ。
・・・ってうそだろぉぉぉぉぉ!?
彼女(っていうのか人形っていうのか)の手を引いて、おまわりさんとこいってっ。
田舎だから派出所だったりするわけだけど、そこで、とりあえず迷子みたいでーっていって・・・。
「俺の頭がおかしいのか?」
「ぅ?」
いるよ、いるいる、確実に俺には見えてる・・。
いぶかるように俺の顔をしげしげと眺める、二人のおまわりさん。
このこなんですが・・・。っていって、つないでいた手を引っ張ってみたけど。
二人して、首をかしげて。
「あー、今年は初夏だってのに暑いでなぁ・・・。」
と、俺を座らせると、
「受験のいろーぜ、ってやつだな?テレビでみたことあるぞ。」
なんていって、延々世間話をしてくれて。
「このこ、迷子だとおもうんですが・・・。」
って、2,3回ほど言ってみたけど。
「うんうん、早くかえってゆっくりやすめ?」
とか、ひっさびさに他人に頭なでて哀れまれて、今に至るわけで。
念のためいっておきたいっ!
俺は受験でノイローゼになるほどがんばった記憶もない(いばれることじゃないが)し、暑さで幻覚見るほど暑さに弱いわけじゃないっ(なんせ俺の東京の部屋はクーラーなし、今にも止まりそうな扇風機と団扇のみで夏は常時室内気温は30度だ!)・・・とはいっても。
幻覚見てますって言う方がなんぼか状況楽なんじゃねぇか、俺・・・。
「ぇー・・・っと。」
とりあえず、どうするわけにもいかなくて、戻って来ましたジィちゃん家。
「俺がちっとばかしおかしいってこと・・・か・・・・?」
「ぅー・・・。」
いや、いるよな?
「ちょっと失礼。」
「ぁぃ。」
返事してるよな?
とりあえず、なでなで・・・って、やっぱり、ひんやりとした感触がちゃんと手に、ある。
顔をぐーっと近づけて、・・・後ろのものが透けてるわけでもない。
片目つぶって・・・・やっぱり、居る。
「とりあえず、どうしろと・・・。」
「ぁぅぅ。」
心なしか、哀しそう、にも見える。
「さっきのおまわりさん達にはみえてない・・ってこととか・・・?いやそんな。」
とかいったって、実際そういう対応な訳で。
・・・俺マジでノイローゼ?それとも、幻覚みてる?
てかそもそも受験はとっくの昔に終わってるっていう説もあるんだが。
「ま、まぁ、幻覚だろうと、夢だろうと、明日考えるか!今日はもうねよねよ。」
「ぁぃっ!」
「・・・。」
こくっ、と、頷いてるんだが。
「・・・一緒に寝る?」
「ぁぃっ!」
性犯罪とかに───はならないよなっ、人形だし(みえてるとしたら。)。
「んじゃ、布団しくぞ。」
「ぁぃっ!」
にこーっ、と笑って、手伝ってくれてる・・・ぽいな。
とりあえず、布団しいて、寝るに限る!
明日の朝起きて、そんでもおかしいようだったら、・・・どうしよう。
目に刺さるような朝日、そして鳥の声。
鳥の声・・・あ、あれ?
「あ、そっか、ジィちゃん家だ・・・。ってっ!」
ふと思い出して、自分の隣を見る。
「ぁぁ・・・夢じゃないって・・・いやまて、むしろまだ俺夢の中か?」
とりあえず、布団を半分ほどかぶって(夕べは暑かったのだ。)丸まって寝ている、隣の、人形。程よくひんやりとしていて、気持ちいい。
「ぇーっと・・・どうすっかな・・・。」
目がさめて、また普通の日常に戻るんじゃーなんておもっていたのが、あっさり消えた訳で。
幸い、バイトも、デートの約束も(そんなものは最初からないが。)特に急ぎの用事も無い。
「とりあえず、あのババァんとこいかねーとな。」
若干、顔あわせるのは月に一回とはいえ、気が重い。
ここの掃除と管理で、月に一回俺に小遣いをくれるわけだが。
くれる──っていうのも、言い方がおかしいか。
天涯孤独の身、ってやつだったりする、俺が成人するまで、遺産の管理やら、金の管理をしてくれて(いるらしいが実際どうだか)る、親戚。
顔を見せるっていう名目で、月に一回、ここにくるついでに、そのババァんちによって、現金手渡し。いい加減、顔合わせるのも嫌なんで、振込みにしてもらうなり、二十歳こえたんだし、全額渡してくれてもいいとおもうんだが、
「まだまだコドモに大金管理なんて、危険すぎる。」
だとかで、毎月定額で少しづつ。(ぜってー何かしらに使ってるよな。)
まぁ、22にもなったんだし、そろそろ変えてくれよ、とか思うんだが。
「ぅー・・・。」
「お。」
なんてことをぼんやりと考えていたら、隣で目を覚ますところらしい。
猫が寝起きにするみたいに、体をぐっとのばして、「んー。」なんて声を漏らして、目を開く。
「おはよ?」
声をかけてやると。
「ぁーぃっ♪」
たいそうご機嫌で、胡坐をかいたままの俺の膝に上半身をのせてくる。
「・・・よくねたなー。」
なんとなく、経験ないことなもんで、妙に照れる・・っていうか。
人形だ、人形だ、ってわかっちゃいるんだが、一瞬言葉がでない。
「ぁぃっ!」
「今日、俺、ちっとババァんとこいって金受け取ってくるからさ。えっと、・・・(なんて呼べばいいんだ?)」
ふと、普通に話かけてる自分に若干違和感は残るものの、昨日よりは自然な感じに気がつく。
呼びかけるのに、名前がなくて困る、なんて。
「あー・・・名前、なんていうんだ?」
「ぅ?」
「あ、いや、・・・のこと、なんてよぼうかと。」
・・・のところで、人形、を指差す。
「ぁぃっ。」
「いや、返事じゃなくて・・・。」
「ぅ?」
口あんまきけねぇのか・・・って、人形がしゃべる時点ですげぇことなんだよな。なんか俺麻痺してねぇか?
「俺、隼人っていうんだけど。」
「ぁゃと?」
「はやと。」
「ぁゃと。」
「はーやーとっ!」
「ぁーゃーとっ!」
一文字ごとに首をこくこく振りながら、一生懸命繰り返してくるのが、みてて面白い。
「あー、いっか、それが俺の名前、な?。」
「ぁぃっ。」
「はいはい、それで、名前は?」
「ぁゃとっ。」
「それは、俺。俺じゃなくて、キミの名前は?」
「ぅーりー。」
「瓜?」
「ぅーりっ!」
「うり・・・。」
ウリちゃん、・・・って、どんな名前だ?名前にウリ・・ウリ・・・ウリ坊って、いのししの子供だっけ、確か。あ、それいいな。
「わかった、ウリ坊。」
「!」
ぱちっ、と目を見開く。
「*@#*#@!」
興奮してるのか、なにやら言葉になってない言葉を発しながら、ぎゅうーっとくっついてくる、ウリ。
まぁ、喜んでるみたいだし、いっか。
「んじゃ、うり、今日俺ちょっとでかけてくるんだけど。」
「ぅりも。」
「マジで?」
「ぃもっ。」
「芋っ?」
「ぅりもっ。」
「えーっと・・。」
別につれてっても構わないとは思うんだ・・・が。(他に見えてないみたいだし。)
そもそも、ほんとに見えてないのか、確かめるにはいいか。
もし、見えてた場合は、まぁ、友達の子供・・・っていうにはでかすぎるな・・・。
「うり、お前、年いくつだ?」
「ぅ?」
「・・・年齢──、って、まぁ、いいかっ。」
「ぁぃっ!」
「んじゃ・・・うりもいくか?」
「ぁぃっ!」
ご機嫌で立ち上がる、うり。
「朝飯は、昨日の残りでいっか。」
「ぁぃっ!」
元気のいい返事をきいて、外の井戸で顔を洗い、適当に口に入れる。
そういや、うりは飯普通にくってるが、人形て、飯食うもんなのか?
・・・って、実際、人形っていうよりも、妹みたいな気がしてきてる、俺。
「うり、着替えってもってる?」
「ぅー?」
「服──って、他に見えてるかどうかなんだよな・・・。」
他の人に見えてないんならいいけど──って、なんでこんなフツーに順応してるんだろ。
「ぅ?」
じー、っと俺の顔を見上げてくる。
まぁ、もしなんだったら、今日金もらったらちらっと何かうりの服でも買うか。
着せ替え人形、とかふっと言葉が浮かんだが、実感がない。
なんていうのか、妙な気分。
「んじゃ、俺だけ着替えたらいくか。帰りになにかうまいものかって帰ろうな。」
「ぁぃっ♪」
嬉しそうにうんうん、と頷く。
その頭をなでてやる。
やっぱり、ひんやりと冷たい。




