プロローグ
「えー・・・っと。」
一体、「これ」はなんなんだ・・?ていうか、誰なんだ?
俺、三宅隼人、
22歳、独身でもって現在求職中なフリーター。
都内某所に一人暮らし・・の身なのはいいんだけど、たまにあれこれやるバイトの他に、家賃と生活費確保のため、月に一回は今はもういない、ジィちゃんちの倉庫の掃除やら、家の管理やらをしてはそれなりの小遣いをもらってたりする。
昔は会社起こしたりえらい金持ちだったらしいんだけど、まぁ、引退してから趣味やりたい放題、好き勝手にやって、ある日コロッと。
俺が15歳くらいの頃まで、毎年夏休みには遊びに行って、あれこれ見せてもらうのがかなり楽しみだった。色んな話をきかせてもらったりしながら江戸時代のカラクリ人形やら、茶碗やら、そんなものを見せてくれてはよく遊んでくれた、大好きなジィちゃんだった。
まぁ、そんなジィちゃんが死んでから、住む人もいないし、いくら田舎とはいえ、空き家のまま放って置く訳にもってことで、こうして小遣い稼ぎにありつけるんだから俺としてはありがたい。
その屋敷も、遺産相続やら土地管理やらで、秋には取り壊しになる。
正直、なんていうか、懐かしいし、寂しいのが本音だけど、若干22の若造がどうこうできることでもないもんでこうしてあれこれ倉をあけては勝手にノスタルジィみたいなもんに浸ってみる、俺。
本来ならもっと早く取り壊しなりになるはずだったんだけど、ずっと、ジィちゃん、俺が22なるまでは毎年こいよって常日頃いってたのがあったんで、遺言みたいに、ここが残されて、俺は毎年夏をここで過ごしていた訳で。
そんな感じで、今日もあれこれ見て回っては軽く掃除をして、換気をして帰る予定だったのだけど───。
取り壊しが決まってからは今まであけてなかった倉やらを見て回って、つい、今。
木の、古びた箱。
埃っぽい空気の中で、煤ぼけて、多分古い巻物やら着物でも入ってると思った箱。
「それになんで人形が入ってるんだぁ?」
しかも、昔みた、江戸時代のカラクリとかとは全然違う。
よく、デパートなんかである、マネキン。あれをすっげぇ上等にした、っていうか。
いや、そんな安っぽい感じじゃなくて、なんていうのかな・・・。
「これ、何のために使うんだ?」
箱から気をつけて取り出してみる。
床にそーっと寝かせてみると・・・。
身長は多分、俺の半分もない位かな。でもって、背中位までの髪の毛。触った感じで絹かっていうような、古ぼけてはいるけど質のいい着物を着せられた、人形。
「って、ほんとに人形か・・・?いや、そうだよな・・・?」
ありえねーって、マジで。とか思いつつ、服を脱がしてみる。
いや、マジで見るからに普通なんだって、前見たやつみたいな切込みもねーし、髪の毛とかも被せてあるんじゃなくて埋め込んである・・・生えてるみたいな・・・、ほんとに。
首から紐で木片に穴を開けてお守りみたいにぶら下げて、それ以外には、
「ゼンマイ・・・ねぇな。」
背中を確認する、が、それらしいスイッチがみつからない。
「何のために作られたんだ、これ。」
上半身まで脱がせたところで、なんていうか、なんともいえない気分。
22にもなって、バービー人形だとか、そういうのの着せ替えとかわんねーじゃん!って思うんだけど。さすがにこんだけでかくて等身大に近いっていうと、なんつーか。
「と、とりあえず調べてみるだけだからな!」
誰もいやしないんだが、なんとなく言い訳がましい。
「・・・ない・・・な。」
やっぱり、どこにも、ない。
スイッチやゼンマイがないのは、まぁいいとして。
カラダのあちこちに継ぎ目がないってのは・・・どういうことなんだ・・・?
「・・・頼むぜジィちゃん、先にこれをみせて、説明とかしてくれよな・・・。」
なんとなく気まずいので、服を着せてやる。
両脇をかかえて、起こしてみる・・・と。
───ぱちっ。
「・・・!?」
ふっと顔をみてみると。
「ぇぇぇぇえええええっ!?」
人形が、目を開いて。
「うわあああああああああああああああああ!!!!」
情けないとでもなんとでも言え!俺はこういう恐怖物語の類は大ッ嫌いだし、大の苦手なんだ!
暗闇で(倉は日当たりもいいしドアがあいてるんで結構明るいが)、古い人形が目を開いてにたーっと血まみれの口で笑って(血まみれでもないし、にたーっと笑ってもないが)なんてことがあったら、成人男性として涙目で叫ぶ位は当然だろう。
唯一、投げ捨てて逃げ出さなかった(硬直して動けなかったとかいうな)あたり、俺は自分を褒めてやりたい。
「・・・ハァハァ、びっくりした・・。」
改めて、見てみる。
なんちゃこたない、起こしたら目が開くタイプの、よくちっちゃい子が使う抱っこ人形だろ、よくあるよくある!!
「目開いてるとほんと、本物みてーだなー・・。」
なんとなく、顔にかかっている髪の毛数本をどけてやり、軽く撫でる。
「って、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
思いっきりのけぞった拍子に、人形ごと後ろに倒れこむ。
成人男性として涙目で・・・って当然だと思うっ!いきなり、人形がにこっ、と、にたーっとじゃねぇけどいきなり微笑んだんだぞ!?
そりゃ、「今から微笑みマース♪」なんていわれたってびっくりするにはかわんねぇけどさ!?
「な、なんなんだよー・・・ジィちゃん、頼むよー・・・。」
胸の上に倒れこんできた人形の顔が怖くてみれない・・・てか、腰が抜けて動けない。
「ぁぃ。」
「!?」
き、き、きききききのせいだよな・・・っ!?
「俺がわるかったよー・・・(何が悪いかわからねーけど・・・。)」
「ぁぃ。」
気のせいじゃねぇぇぇぇぇぇ!?!?!?
ガバッとおきあがり、深呼吸。
よし、人形なんだ、いざとなれば勝てる!(どうやって?とか思うな、ソコ!)
気合をいれて、心の中で適当なお経らしきややこしい言葉をつぶやく。
「(ナムナムサンダラアリゲーター・・・なんだっけ・・・)」
よしっ、と、そーっと首をのばして、顔を覗きこ・・・む・・・。
「ぅ。」
仰向けに寝転んだまま、覚悟を決めて覗きこんでみたもの。
ぱちっと目を開いて、不思議そうに俺の顔を覗き込む、推定3歳前後の少女!
「ぇー・・・っと・・・。」
頼むぜジィちゃん!「これ」は一体なんなんだ!てか、誰なんだ!?




