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第六話「瑞鳳殿に眠る鍵」


 秋田での捜査が一区切りした翌朝、捜査本部は鴻池達郎議員の携帯に残された断片的なメッセージ「ZUIHODEN」を手掛かりに、仙台への調査班を編成した。瑞鳳殿――伊達政宗公を祀る霊廟。豪華絢爛な桃山様式の建築で知られるその地は、観光名所であると同時に、議員の最後の足取りが刻まれた場所だった。


 遼真は山岸刑事、西園寺一課長らと共に車両に揺られ、秋田から仙台へと向かった。窓の外には奥羽山脈の稜線が続き、雪を戴いた峰々が春の光に淡く輝いている。だが遼真の心には、風景を味わう余裕はなかった。議員がなぜわざわざ瑞鳳殿に立ち寄り、そして事件当夜にその名を暗号のように残したのか――疑問が頭から離れなかった。


 仙台市青葉区、木立に囲まれた瑞鳳殿の参道。杉の大木が並ぶ石畳を進むと、空気はひんやりとし、遠くで鶯の声がかすかに響いた。観光客の姿はまばらで、朝の光が霊廟の金箔に反射し、淡く輝いていた。


 境内で出迎えたのは地元の案内人だった。年配の男性は、前日に鴻池議員を見たと証言する。

「観光に来た、というより……誰かを待っている様子でした。展示にはほとんど目もくれず、境内を落ち着かず行ったり来たり。しばらくすると、黒いコートの男と短く言葉を交わしていました」


 山岸刑事がすかさず問う。

「その男の顔は分かりますか」

「残念ながら、距離がありまして。ただ、背丈は中肉中背。眼鏡をかけていたように見えました」


 それは、昨夜の目撃証言――議員が噴水のそばで会釈していた男の特徴と一致していた。


 境内の探索が始まり、捜査員たちは石段の隙間に異物を見つけた。鑑識が丁寧に掬い上げると、それは折れたSIMカードの破片だった。半分以上は欠けていたが、通信記録を消去する際に故意に破棄された可能性が高いと見られた。


「これが……議員の携帯から削除されたデータと繋がるかもしれません」

 山岸が低く呟く。


 さらにもう一つ、意外な証言が寄せられた。境内近くの土産物店の女性店員が、鴻池議員から封筒を預かったというのだ。

「『誰にも言うな』と念を押されて、封筒を託されました。宛名はホテル名でしたが、受け取りに来る人はいませんでした」


 西園寺一課長が封筒を開くと、中には数枚の写真が収められていた。瑞鳳殿だけでなく、松島、秋保大滝、大崎八幡宮――宮城県内の観光地で撮られたスナップ。その中で議員の隣に映っている人物がいた。


 眼鏡を掛けた四十代半ばの男。横顔だけだったが、その姿は明らかに同一人物で、昨夜の目撃証言と重なる。


「議員は、この男と行動を共にしていた……」

 西園寺が写真を手に固く言葉を刻む。


 遼真は写真を見つめながら、胸に冷たい感触を覚えていた。確かに昨日、イベント会場の廊下で同じような男を見かけた記憶がある。スタッフに紛れ、携帯を耳に当てていた――。


「やはり“呼び出し役”と“実行犯”は分かれているのかもしれません」

 遼真が呟くと、山岸も頷いた。

「議員を観光名目で誘導し、最後に噴水で殺す。そのための段取りを、この男が担っていたのか」


 瑞鳳殿の森を吹き抜ける風が、杉の枝を揺らし、低いざわめきを響かせる。その音はまるで伊達政宗の声が、遠い時代から「まだ終わっていない」と告げているかのようだった。


 遼真は心に誓う。

(議員を呼び出した人物……必ず正体を突き止める。そして、この“虚像”の影を暴き出す)



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