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本当はこんなこと中学生がすることではないのだけど、作者の頭の中の戦争中ではこんなことがあっても不思議ではないのでは……と思ってしまったので、書いてます。
「さて、彼の他にも連絡班を作る?」
千颯は香月に相談してから判断しようとしたが
「そうだね。その方がいいかも」
簡単に肯定されてしまった。
あまりにも速い決断で大丈夫なのかと心配になるが、今は悩むよりも香月の判断力に任せてどんどん決めていったほうが良いのかもしれない。
やると決めたのだからと千颯も気合いを入れる。
「よし。連絡班を募集します! やる人~、僕の右隣に来てください! 連絡班を作ります!」
「オレやります」「俺も」
そう言って一年生が三人ほど集まってきてくれた。
「了解。じゃあ君たちには伝令の仕事をしてもらうね。大変な仕事になると思うんだ。けど、頑張ってやってほしい。まずは各教室に避難している人たちの情報を集めてほしい。名前・年齢・住所・職業・家族の有無。これは絶対に必要になる。これから罹災証明書を発行してもらうためのものだから、間違えないように丁寧に」
「あの、りさい……なんですか?」
一年生の中の一人が質問してきた。
「火災や地震で多くの人が災害に見舞われたときにこの手続きをすれば、支援を受けられる証明書のことなんだ。初めて発行されたのは関東大地震の時だと聞いた。これがあれば配給ももらえて、ご飯が食べられるし住まいの確保も優先されるんだ」
「へえ~……」
「そんな便利なものがあるんですね」
「そう。だから正しい情報を一人一人丁寧に聞いて、誰がどこの教室にいるのかを把握して、役所の発行手続きを滞りなく進めたいんだ。わかるかい?」
「はい、分かります」
「ではよろしくね。あ、ちょっと待った。帳面がほしいな。誰か持ってる?」
「このご時世に余ってる紙の束があるか?」
「無いよね。僕のはさっき原田君に渡してしまったし。……うーんどうしようか」
皆がここで物資不足に止まってしまう。
紙がない。
紙がないとなるとどこから調達するか。
一番ありそうな場所は……教員室?
「教員室に仕丁さんがいるから相談してみてくれるかい? あ、その前に救護室にいる教頭先生に報告してからだ。二年の坂上から指示されたと言えば大丈夫だ」
千颯は大人がいつもいる部屋、と連想してみると可能性の高い場所は教員室だと見当をつけた。
教頭先生に報告と相談することも忘れないように指示をする。
「はい、教頭先生に報告・相談してから仕丁さんですね。行ってきます」
「はいよろしくね。」
これで連絡担当ができた。
紙類が調達できれば伝達連絡の間違いが少なくなる。
連絡担当になった下級生は校舎の中に足取り軽く入っていった。
彼らを上手に動かしていけば避難所の運営がうまくいきそうだ。
「では次。届け出などの、役所との連絡ができる人……。これは配給や罹災証明書のやり取りとか、手続きを避難者と一緒に進めていくことになると思うので、難しい役目ですが、やってみたい人はいますか?」
少しずつ集まってきている学徒たちを見回して、千颯は声をかけた。
「そういうことは巣鴨中代表会にやってもらう方がいいと思うけど。……あ、ほら。ちょうど登校してきたよ。副代表の川辺さんだ」
香月から助言と報告が入る。
「あ、本当だ。じゃあ川辺さんに頼もう。僕が説明するよ」
校門から野菜が植えられている畑の畝を跨ぎながらこちらに向かって歩いてくるのは、巣鴨中学校学徒代表会の副代表を務めていた三年生の川辺優さんだった。
代表会は軍の方針で秋に解体されていて半年ほどしか活動できていなかったが、それでも代表会の肩書きがあるのとないのとでは多少なりとも扱われ方が変わるはずだと千颯は思っている。
「おはよう。君たちどうした?教室に行かないで」
「おはようございます。いま教室に入ることができません。空襲で焼け出された避難者でいっぱいなんです」
「あ……そうなんだ。あの空襲は凄かったみたいだね。昨日姉さんが職場の取引で世話になっている下町の工場に行ってみたけどひどい有様で気分が悪くなってすぐに帰ってきてしまっていたんだ」
それから川辺さんに今の学校の状況を説明してこれからのことを相談し、支援活動を進めていこうとしている最中であることを話した。
「ふむ。大体のことは分かったよ。説明ありがとう。先生が不在にもかかわらず自ら行動を起こしたこと、嬉しく思う。君の思うようにやってみるといい。僕は君の駒となって動こう。船頭が増えるとどちらに進むか迷うからね」
「え……僕で良いのでしょうか……?」
「いいんだよ。やってみれば。失敗しても許されるのは学生である今のうちだ。大人になってからでは許されないことが多くなるらしい。これは僕の父の言葉だ」
「ありがとうございます」
千颯は一つ深呼吸した。
「では、今は一年生が避難者の名簿を作るために各教室に行って一人ずつ話を聞きに行っています。川辺さんは役場に行って、巣鴨中学に避難者が多数いることを知らせて罹災証明書の発行手続きの依頼をお願いしてきて下さい。かなりの人数なので避難者が各自で役場の窓口に行くと溢れてしまいそうなのでお役人にきてもらって発行したほうが混乱が少ないかと考えています。それに今、彼らは空襲から何も食べていないし、怪我人もいるのですが救護室にも入れる状態てもありませんし薬もない状態です。ご近所さんからの物資を分けてもらってはいますが到底足りるとは思えません」
「現状を確認してもらうためにも視察という形でこちらに案内するようにしようか」
川辺さんは百聞は一見に如かずだねと、
「頑張って役人一人連れてくるよ。今から行ってくるから期待して待ってて」
それからにこやかに
「ダメだったとしたら……泣き落としてみよう」
とつぶやいた。
「泣き落とし?」
「うん、そう。どこの役場でもいいかな。かなり広範囲の空襲だったらしいじゃない?」
「僕は昨日は隣組の人たちの手伝いをしていたので、下町の方には様子を見に行っていないので」
「僕も行ってないけど……いかない方がよかったと姉さんは泣きながら帰ってきたよ」
川辺さんは少し表情が暗くなった。
「え?」
「まぁ取り敢えず行ってくる」
「はぁ。行ってらっしゃい。よろしくお願いします」
川辺さんは来た道を引き返していった。
「次は何やる?」
香月がすぐに催促した。
千颯は自分の頭の中で思い出す。
「さっき風呂って言ってなかったか?」
千颯たちのやり取りを聞いていた中から声が上がった。
「そうだ、風呂だよ。お風呂の準備……」
「ふろ? そんなのまでいる?」
「そりゃあないよりあった方がいいでしょ。体を洗ってさっぱりしたらホッとして生きる気力が湧くんじゃない?」
「文字通りの命の洗濯!」
「うん。あ、着ているものも洗いたくなるね」
「衣食住の衣だな」
「そう。住は自分たちでなんとか都合をつけてもらわないといけない。それは罹災証明書を発行してもらってからになるし、今はこの避難所になっている学校で過ごしてもらうけどいつまでもここにいるわけにもいかないから早く落ち着ける場所を探してもらうことになる。けどそれ以外は僕らが助けてあげられるでしょ」
「そうだな」
「ふむ。ふろと洗濯ね。どうするか……」
「ここには風呂なんてないしねぇ」
「学校だから住むことを考えて作られた施設でもないし、あるわけない」
「風呂はないね」
「ないなぁ」
「どっか落ちてないか?」
「馬鹿?」
「うん。馬鹿だよ。だから言ってみた」
「はいはい。で、どうする?」
「ないよりはあった方がいい」
「あった方がいいのは当たり前だよ」
「じゃあ作る!?」
「どれくらいの規模で?」
「大人数が避難してきているんだし大きいの?」
「そんなの俺たちで作るなんて無理だろう?もっとよく考えてから発言しろよ」
「え~言ってみるくらいいいじゃないか。それとも小さいのをいくつも作る?」
「たくさん作るにしても材料が集まらないだろう?」
「そうだった……」
千颯の周りに集まってきている学生たちからいろいろな声が上がる。
「取り敢えず今! 煤まみれの人たちをきれいにしてあげたい」
「温かいお湯で濡らした手ぬぐいで身体を拭くだけで違うと思うんだ」
「なら、今日は身体を拭くだけにしてもらおう」
「そうしようか」
「もしどうしてもというならご近所さんにお風呂を貸してもらえるようにお願いしてみよう」
「了解」
「よし決まり。えーと、それだとたくさんのお湯を沸かすことになるから調理班の近くに竈を作ろう」
「あ、その竈作り、やりたい。やらせてくれ。いくつ作ればいい?」
「ありがと。数は二つでいいと思う」
「調理班の使う竈と同じ大きさにできるかな?流用できるように?」
「うん、できれば」
「了解。スコップはどこに仕舞ってるんだ?仕丁さんに場所聞いたら早速作るぞ」
「よろしくね」
「応」
「おれも手伝うぜ」
「助かる」
そう言ってまた数人が自分にできることを全力でやるために千颯から離れていった。
「オレ風呂作ってみたかったな~……」
ポツリと一年生が千颯の後ろで呟いたのが聞こえた。
「それなら河原で洗濯場を作るっていうのはどうだい?」
「え?」
「簀の子とか必要になるかな」
「作りたい!」
「ついでに河原の整備も頼むよ」
「了解~。じゃあ河原の状態を確かめてくる。そのあとで木材提供してくれそうなところを探してみる」
「ありがと」
「なぁ、坂上。オレは教頭先生の手伝いに行ってきてもいいか?」
「それはありがたい。教頭先生一人では大変そうだったんだ。ほかにも手伝いにいけそうな人はいるかな……」
「けがの手当てはできなくても水汲みとか……。ひたすら井戸で水汲みしてやるぞ」
「あはは、いいね。水汲みだけに専念するの?」
「だったら俺は水運びやる!」
「じゃあ僕はバケツの回収してあげるよ」
「そんな細かいことまで決めなくてもいいんじゃないか?」
香月がボソッと指摘するがそれが何だか可笑しく聞こえてみんなが笑い始めた。
明るい気分になって和やかな雰囲気が少し漂った。
「あ、そうだ……」
千颯はちょっと思いついたことを提案しようと声を出した。
「ん?どうしたんだ?」
「どこか、屋根のある場所はないかな」
「なにするんだ?」
「雨に濡れない場所に黒板を設置して支援本部がほしいなと思って」
「支援本部?」
「うん。ほら、何ができて誰が担当しているか黒板に書いておきたいなって思った。みんなが黒板を見たらすぐに分かるでしょ。何が足りてないか確認できるし相談もできるし」
「そうだろうけど黒板をどこから持ってくるんだ?どこでやる?」
「場所が思い付かないんだよね。開いている教室はないから廊下の片隅でもあれば……数人でも集まれる感じで、黒板に決まったことや連絡事項とかを書き留める伝言板みたいにね。掲示板を勝手に使うと軍から怒られそうだし」
「確かに俺たちが勝手に使うといろいろ言われるかも。あそこは陸軍からの連絡事項専用になってるし」
「え~と……、軒下?備品室?倉庫?昇降口?……教員室はだめだろうか」
避難者は廊下までいるのか?
「教員室はダメだろ。でもその前の廊下には黒板設置はしてもいいんじゃないか? 先生が来たら何をやっているのか分かってもらえるだろうし」
「あ、教員室の中の空いてる場所に衝立で間仕切りしてそこをオレたちの会議に使うのは?」
「それは~…良いなとは思うけどさ。教員室は生徒に使わせてもらえるか?」
「教頭先生に相談だな」
一つずつ避難者にやっておくべきことを片付けていく準備はできていく。
そして実行に移すだけだ。
心配なことは何だろうかと考えてみても、まだ始まったばかりなのでどこで問題が起きるのかも不明。
教師がいない中で中学生が主体となり支援活動をするなんて、無謀もいいところだ。
誰か相談できる相手がほしい。
しかし、今はその人は救護室で、傷病者を看ている教頭先生しかおらず大変忙しくしているのだ。
「ちょっと教頭先生のところに行ってくる。支援本部の場所の確保と黒板が余ってないか、あと紙、なんでもいいから記録できそうなものがないか相談してくる」
「俺も一緒に行ってやる」
「ありがとう」
「僕たちは自分にできそうなことやってみる」
「自分はここに留まって登校してきた者に説明して自主的な行動をするように呼び掛ける」
「じゃ俺はご近所さんに風呂を使わせてもらえるか聞いてみる」
「ありがとう。みんなよろしくね。ただし、さっきも言ったけど無理はしないように」
「了解」
登場人物のセリフがいっぱいです。
思春期男子の猪突猛進な会話に追いつけない文才の無さ……。
誰がどのセリフを言っているのやら作者にもよく分からない。
誰だお前?というのが情けない~。




