↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きな人の死亡エンドを回避したい雑用係  作者: 懐中電灯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/21

第7話 呑気なモンスター討伐

 翌朝、思ったよりも早く目が覚めた。よく眠れたからだろうか。

 洗面をし、着替え、今日の荷物を確認する。今日は上級モンスター討伐に行くので、念には念を入れなくてはいけない。もっとも、上級と言えど勇者パーティの敵ではないのだろうけれど。

 携帯食、ポーション、護身用のナイフと毒……。


 「アーディ、そっち行ったぞ! ディア、左!」

 今日も今日とでモンスター討伐だ。相手は上級モンスターだが、エドワード達は強い。つまり、俺の出る幕は無い。荷物番をしながら逃げてきたモンスターに試作品の毒薬を掛ける。

 モンスターとはいえ殺すのに抵抗がないわけではないけれど、そんなことを言っていたら勇者パーティには居られない。それにあまり良いことではないと思うが、もう慣れた。

 彼らの戦いは、アニメの戦闘シーンをそのまま再現したようだ。エドワードとアーデンが前衛として派手に敵を蹴散らし、後方からクローディアとマーガレットが魔法で支援する。

 アニメと違うのは、血や臓物の見た目と臭いが少々キツイところだろうか。最初は吐いた。

 しかしエドワードはモンスターと戦っているときが一番生き生きしている。四方八方の敵を無駄のない動作でどんどん切り刻んでいく様はまさに勇者様という感じだ。

 「終わったよ~。楽勝らくしょー」

 「お疲れ様です」

 マーガレットの治癒能力を使う必要もないらしく、ぞろぞろとやってきた彼らに水筒を渡す。剣さばきが上手い人が往々にしてそうであるように、返り血もかかっていない。

 素材になりそうな部位を持ち帰るのは俺の仕事だ。最初は夢に出てきた。特に皮を剥ぐのとか。

 少し休んだら、更に奥へ。どれも例えば俺単体で突っ込めば即死するようなモンスターだが、みんなあっさりと倒してスイスイ進んでいく。

 そこそこ強いモンスターがこちらに逃げてきて少し焦ったが、さっきのとは別の試作品の毒を塗ったナイフで刺せば倒せた。他力本願だが、万が一倒せなくても誰か助けてくれるので気楽である。

 「今日はこんなものにするか」

 「はぁい」

 「はい」

 エドワードの言葉を合図に、それぞれ帰る支度に入る。素材をたくさん入れたかばんはずっしりと重く、いくらになるかなかなかに楽しみだ。

 「チハヤ」

 「はい! なんですか?」

 エドワードが歩調を緩めて俺に並び小声で話しかけてきたので、俺も小声で応じた。他の人には聞かれたくない内容でありながら、今話さなくてはいけない緊急性がある、つまり大事な話だと思ったから。

 「明日、休みにするんだけどよ……。一緒に“偵察”に行くか?」  

 小石に躓いて転びそうになった。偵察とはつまり、娼館に行くことである。いつからかエドワードは隠語としてそう表現し始めた。

 「金のことなら心配すんな。俺が出すから」

 そんなこと心配していない。

 ……もしかしてこれは遠回しにうざったいと言われているのだろうか。好意を向けられるのにはうんざりだから、少しは違う奴に目を向けろと、そういうことだろうか。

 エドワードの顔色を伺って目線を上げた。

 「遠慮しなくていいぞ。まぁ……なんだ。借りは作らないタイプなんだ」

 借り……?

 なんで急に借りとか出てくるんだ、と思ったところでおそらくこれだという答えが浮かぶ。

 この前、酔って突き飛ばした詫び及びその後諸々の礼ということだろう。翌日一緒にあの場に居合わせた全員に一緒に謝罪し、弁償もし、その他諸々の後始末もしたのだ。別に貸しにしたつもりはないが、それを借りというのは、わかる。それにきちんと返そうとするところも素晴らしい。

 が、よりによって娼館とは……。

 エドワードは不思議そうに俺を見下ろしている。本当に他意はなく、善意のようだった。

 「せっかくですが……俺は、興味が無いので」

 「そうか? お前行ったことないだろ? 男娼もいるぞ」

 そうなんだ。少し興味をそそられなくはないが。

 「いいです」

 「そうか」

 「ちょっと男子~。何こそこそしてんの~?」

 クローディアが振り返る。すぐ近くでこそこそ話されたらそりゃあ、気にもなるだろう。エドワードはなんでもないように肩をすくめた。

 「ちょっと男同士の会話を、な」

 「え~? なんかやらし~」

 「そんなんじゃねぇよ」

 そんなんだろ、どう考えても。

 本当に、本当に平和である。魔王? なにそれ美味しいの? という感じだ。

 つい緩みそうになる気を引き締めんと頬を軽く叩く。ここは『ぼうスロ』の世界なんかではなくて、全部考えすぎだったのではないかと思えてしまうから。

 呑気なことを言っていたら、大事な物を取りこぼしてしまうかもしれない。

 「おい、汗拭いてくれ」

 「はいっ」

 「ちょっと、甘やかさないでって言ってるでしょ!」

 無視してタオルでエドワードの汗を拭う。汗くらい自分で拭かせるべきだという主張はもっともなのだが、俺の生きがいなので奪わないでほしい。

 エドワードは汗をかいていても、いや汗をかいている方がいい匂いだ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。