第19話 愛しています
「愛してます、エドワード」
「……っ、お前さぁ」
「え?」
何か間違えただろうか。エドワードは顔をそむけてしまった。
「……俺も嫌いじゃねぇよ、お前のこと」
「へっ!?」
確実に赤くなったであろう、そして確実ににやけているであろう顔を隠すために片手で覆った。もっともエドワードはそもそもこちらを見ていないので関係ないのだが。
と、思ったらいつの間にかこっちを向いていたらしいエドワードに無理矢理手を外される。
「照れてやんの」
「な……っ」
にやっと笑う様はまるで小学生のようだ。それでいて間違いなくイケメンだから困るのだけれど。
「……キスしていいか?」
「は!?!?」
「声でけぇよ。……いいかダメか、二択だ」
先ほどの叫び以降声帯が休暇に入ってしまったので、勢いよく頷いてみた。
「どっちだよそれ」と言われたが一応伝わったらしい。エドワードの整った顔がぐっと近づいてきた。
肌が陶器みたいに綺麗だ。戦って、野宿だってするのに。
「おい、目ぇ閉じろや」
「はひゅっ」
ほとんど空気みたいな声を出して、慌てて目を閉じた。
俺の顔から発される熱がエドワードに届いているのではないだろうか。全身にじっとりと汗をかいている。
やたら長く感じられる時間ののち、ふにっと柔らかいものが唇に当たる。
そして、俺は。
「#△&%〇~!?」
椅子ごと後ろ向きに倒れた。軽い椅子でよかった。椅子の種類によっては大事故である。
「うるさ。何語だよ」
エドワードは余裕の笑みだった。というか俺のこの反応を見れば大抵の人間が冷静になるよなと我ながら思う。人間というのは自分より動揺している人間がいると却って冷静になるものなのだ。
なんとか起き上がって再び椅子に座りなおすと、エドワードは手で口を押さえながら大笑いしていた。
なんとムードのないファーストキスか。原因は間違いなく椅子ごと倒れるとかいう失態を犯した俺にあるだろうけれど。
「お前ほんとにおもしれぇな」
「お褒めにあずかり光栄です……」
思い切り打ち付けた肘と足首が痛い。
「……あの三人だって、エドのこと大好きですよ」
あとでわかることではあるが、一応言った。
俺だけが感謝されるのもあの三人に悪いし、何よりそれを知った方がエドワードは嬉しいだろう。このくらいなら勝手に伝えてもいいはずだ。……多分。
「……あいつらは、俺が強いから付いてくるだけだろ。魔王討伐だの、名を上げるだの、目標があるなら俺に付いてくるのが早い。ビジネスの関係ってやつだ」
「パーティに居ること自体はそりゃ、ビジネスでしょうけど。でもそれはそれとして、エドワードのことも好きです」
「なんでわかんだ」
「本人に聞いたからですよ」
エドワードの瞳が揺れた。
「ま、細かいことは俺の口から言うわけにはいかないですけど。そのうち聞いてみたらいいんじゃないですか?」
深い場所に根付いてしまった寂しさは、時に目を曇らせる。近くにある確かな愛情でさえ、見えなくさせてしまう。
でも。
「ねぇ、エドワード。あなたはあなたが思うよりずっと、素敵な人ですよ」
不器用で、わかりづらいけれど。強さとか称号とかそんなわかりやすさがなくとも、わかる人にはわかるのだ。
エドワードの目が見開かれて、それから逸らされた。
「あ、そ……」
照れている。エドワード専門家の俺でなくともわかるくらい、あからさまに。
指摘したら面倒なことになるから、しないけれど。




