EP.7 全裸だった
時計は深夜二時を示していた。冷蔵庫を開けると、両親が手配した作り置きが、芳しい匂いを放っている。牛乳だけを手に取り、素早く扉を閉めた。最後の一滴までコップに注ごうと振ったとき、下からぎゅうっと音がする。パックを置くのと同時に、コップを勢いよく呷った。
轟音。噎せそうなのを抑えながら、俺は窓へと駆け出した。
そこには寸分の明かりもない。炎も、電気も。一瞬の違和感だけが、夜の闇に溶け込んでいた。
「はぁ……」
身体は余計に目覚め始めた。洗い桶に器を浸し、私室に戻って窓を覗く。三階の高さから複数方向を見ても、なおも何にも見えやしない。
パソコンのモニターには、何度目かも知らない動画が流れている。焦点を合わせようとしたとき、大きなあくびがそれを遮った。
キーボードを打ち、轟音の正体を探る。しかし直前の出来事に、ネットはさしたる意味を持たなかった。
漫然と画面に対面する。意識が鈍ってゆく、その刹那。
再び、果てしない轟音。それも、先とは毛色の違う、刺すような手触り。東にある窓が、微かに揺れたかと思うと、凄まじい明るさで騒ぎ出した。
思わず窓にかじりつく。南東の片隅に、橙色の塊が居座っていた。反射的に過ったのは、キャサリンの顔。
――キャサリンは、あっちの方に住んでいると、そう言っていなかったか。
咄嗟に靴下を掴んでいた。ほかの家がまばらに照り始める中で、ただ大きな火柱だけが、夜の静寂を食い破っている。
寝間着にスマートフォンを突っ込み、玄関先まで立ったところで、急に足が震えだす。
――確かめないと、後悔するに決まっている。
玄関横から鍵を抜き、思い切り扉を開け放った。真横の公園の木々は、不気味に揺れている。
その奥に、確かに知っている人影を見つけてしまった。
俺は走り出していた。もはや、理屈はどうでもよかった。
「キャサリンッ!」
素裸の女は、アタッシェとロケットランチャーを抱えながら、今まさにランチャーを沈めようとしている。
垂れる胸よりも、真っ白な身体よりも、ただ彼女に似合わない破壊兵器を一点に見据えながら、俺はただ呼吸を荒げていた。
「なんで、そんな、何が起きてる、どうして……」
「知ラナクテ、イイ。」




