インサイド・トヨタ(10)
新プラットフォーム(車台)開発の中で、一つの技術的な課題が持ち上がる。
車台の前側には「フロントサイドメンバー」と呼ばれる部品が取り付けられている。
この部品は、車が正面衝突した時に意図的に折れるように設計されており、この部品が折れることで衝突の衝撃を吸収し、キャビン(車内)を安全に保つ事ができる。車の安全性に関わる重要部品だ。
しかし、新プラットフォームは、内部構造が全く違うガソリン車からEV(電気自動車)までを一つの車台で共通化するという条件が与えられており、そのことが制約となってフロントサイドメンバーの成立性を困難にしていた。
新プラットフォームの設計担当の鷺谷氏はカメラの前で次のように述べる。
「フロントサイドメンバーの折れるモード(折れ方)をコントロールするのが難しく、そこが安定しないと確実にキャビン(車内)を守ることができなくなってしまうので、この設計開発にものすごく時間をかけてやっている」
ガソリン車とEVとで車台を共通化するということは、トヨタとしてもなんとしてでも実現させたい目標だった。鷺谷氏自身も次のように語る。
「バッテリーEV(電気自動車)の台数って読みにくいじゃないですか。本当にいろんな車で共通化できる構えをとっておかないと、無駄な投資かけて全然使わないものにいろんなバリエーションを起こすことになりかねない」
EVの需要が読めないからこそ、ガソリン車とEVで車台を共通化し、ガソリン車とEVとで柔軟に作り分けができる状態を作ることが大切だった。
そしてそのためにも、そのフロントサイドメンバーの課題を解決する必要があった。
工業製品を開発から量産まで持っていく途中には、「出図」という重要イベントがある。
設計担当は製品の機能や品質を満足できるように部品やユニットの図面を作成し、「出図」によってその図面を製造担当に引き渡す。そして図面を受け取った製造担当が金型作成などの量産準備に入っていく。
新プラットフォーム(車台)の出図日が訪れる。
しかし、その時点においてもフロントサイドメンバーの技術的課題はまだ解決していなかった。




