インサイド・トヨタ(9)
新型カローラに課せられた、ガソリン車からEV(電気自動車)までカバーする新プラットフォーム(車台)の開発。
豊田章男氏は、その新プラットフォームについて、次のような質問をなげかける。
「それによって面倒な話はどうなの?
たとえば(工場での)生産とかね。
(幅広い車に対応できる)マルチプラットフォームもいいけど、『これ、現場たまんないんですけど』という話はないの?」
新プラットホームの設計担当である鷺谷氏は正直に、
「実際、開発のバリエーションとしましては開発リソーセス(資源)の難しさは当然ございます」
と答える。
多くのタイプの車に対応するため、当然開発は困難になる。しかも短期間での開発が求められている。それが課題をより困難なものにしていた。
それを「設計」という立場から率直に答えたものだった。
その場には、生産担当役員である志賀氏も出席しており、「製造」という観点から志賀氏も新プラットフォームについてのコメントを求められる。
「(部品)全部一緒なら簡単ですけど、(車によって細かく部品を)追加したり削ったり色々ごちゃごちゃしているので、僕たち生産技術もちゃんと(開発に)入って、(部品の)差し引きが簡単にできる構造を一緒にやりくりしています。
それがちゃんといけば、衝突の性能も全部満足すれば」
ガソリン車とEVで共通のプラットフォームを使う。
そのためには共通部分、差異部分を切り分け、組み立ての現場で作り分けをしていかなければならない。当然、製造という点においてもプラットフォーム共通化の課題は大きかった。
次に、豊田章男氏はEVの需要予測そのものに話を転じる。
「だけど営業が予想、予想と言って、予想を全部外すでしょう。
それで需給(予測)が合わないから、逆に工場側でフレキシビリティ(商品の幅)を与えようという事かもしれないんだよ」
アメリカで政策転向があり、EVの需要が急減速したことを念頭においた発言だった。それによって多くの自動車メーカーがEV関連の巨額な減損を強いられている。
「いつも『絶対大丈夫です』と言って当たったためしがない。
だから(将来の予測は)当たらないんだと思ったほうがいい。
だからさ(何を進めて、何をやめるか)誰がいつ決めてくれるかだね。ボトムアップ(で決めるのは)無理だから。
リスクはそれなりの上位者に取ってもらうことが僕は必要だと思います」
未来を予測する努力は当然するのだけど、100%の未来を予測できるわけがない。予測が外れる場合の備えはするにしても、それでも、どこかではトップが腹をくくって、トップの意思でもって方向性を示さなければならない時もある。
自分自身の経験に照らし合わせて、そのトップの覚悟を表現した言葉だったのだろう。
様々な議論の末、新型カローラ開発は決済され、開発が進められることになる。




