テスラ“安全神話”の真実(2)
2019年4月、一つの交通事故がアメリカで発生する。
テスラの「モデルS」が一時停止標識と信号を無視して交差点に時速約100キロで侵入し、駐車していた別の車に衝突。車外に立っていた女性1人が死亡、男性1人が重症を負った。
「モデルS」は、車に搭載されていた「自動運転機能」で運転されていた。
テスラ車には二つの種類の自動運転機能が搭載されている。
一つは「オートパイロット」という名称でテスラ全車両に標準搭載されている。
ドライバーの運転支援を目的にし、高速道路など特定環境での支援を行う。ただし、ドライバーは常にハンドル操作と監視が必要となる。自動運転レベルは「レベル2(ドライバー主体)」で、日本でも全機能が利用可能となっている。
そしてもう一つは「FSD(Full Self-Driving)」で、一部の国でベータ提供されている。
ただし日本には導入されていない。
完全自動運転の実現を目的とし、都市部・住宅街など全ての道路を想定している。現時点ではドライバーの関与が必要とされているが、将来的にハンズオフ運転を想定する。テスラ車の購入者は有償(8000ドル)でこの機能を追加することができる。
自動運転レベルとしては「レベル3〜4(高度運転自動化)」を目指して開発中となっている。自動運転レベルとは車を運転する作業をどこまでシステムがやるかを決めたレベルのことで、レベル2まではまだ人が運転する段階だが、レベル3以降はシステムが運転する段階となる。
「FSD」はまだ開発中の機能にはなるがベータ版としてユーザーに提供されており、この機能を搭載した車が実際にアメリカでは公道を走っている。
ベータ版とはソフトウェアやアプリの正式公開前に、動作や意見を集めるために一般へ提供される未完成の試験版のことだ。正式版を出す前のバグ(不具合)発見や使いやすさの確認のために一部ユーザーに提供される。ソフトウェア会社ではよく行われる手法だ。
テスラ社は「FSD」に対しても、その手法を用いている。
まだ未完成の「FSD」を一般ユーザーに有償で提供し、その中で実際に公道を走る車を介して様々な自動運転に関するデータを収集し、ソフトウェアの改善に役立てていた。
しかし、ソフトウェア会社が作るソフトウェアと、自動車会社が作るソフトウェアにおいては、一つの決定的な違いがある。
エクセルなどのソフトウェアが暴走しても人は殺さない。
しかし、車に搭載されたソフトウェアが暴走したら人を殺すこともあるのだ。
交差点で暴走し死亡事故を起こしたテスラ車は、その「FSD」で運転されていたという。




