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星の家族:シャルダンによるΩ点―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科医の愉快な日々ー  作者: 青夜


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《オペレーション・ゴルディアス》 XⅧ : 花岡斬 2

 斬は《位相反射》のことを恐れてはいなかった。

 最初から高威力の技を繰り出している。

 「業」が《位相反射》で反撃すれば、そのまま自分が爆散して終わる。

 虎白さんが俺の傍に来た。


 「斬の奴、「業」に当てずに試しているな」

 「はい。自分の周囲への技も反射するとしたら一発アウトだったんですが」

 「ああやって、俺たちにも示してくれているんだろう。これから技を寄せて行って、直接撃ち込むぞ」

 「そうですね」


 俺にも分かっていた。

 「業」の《位相反射》は自分への攻撃を反射する技だ。

 単身で「業」に突っ込んだ斬だったが、もちろん冷静に戦略を立てているのだ。

 そしてギリギリまで攻め込んで、万一自分が死んでも俺たちに道を示すつもりなのだろう。

 形は石神家の「見切り戦」になっているが、斬は当然「業」を殺すつもりでいる。

 あいつの壮絶な鍛錬と戦場での経験の積み上げで、《位相反射》について独自の解析をしたのだろう。

 それを俺たちも黙って見ている。


 「そろそろだな」

 「はい」


 虎白さんが言う通り、斬の攻撃はもう「業」のすぐ近くに及んでいる。

 斬がいきなり全身の周囲に「魔方陣」を展開した。

 そして方向を無作為に「獄雷花」を撃ち出した。


 「ほう、無差別攻撃か」


 斬は「業」への攻撃の意志を示さずに周囲全体に攻撃したのだ。

 「業」がもしも自分への攻撃に対する反撃に対して《位相反射》を使うのか、これで確認出来る。

 それに、自分へ返される攻撃も、斬であれば対応出来るかもしれない。

 実際に斬は高速機動で常に場所を移動している。

 「業」の姿が霞んだ。


 「斬!」





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「業」がそこにいることが分った。

 ここにいる他の連中ももちろん感じているだろう。

 戦う者として一流の連中だからだ。

 だからわしは真っ先に飛び出し、「魔方陣」で「トールハンマー」を撃った。

 あやつが聖とやるつもりだったのは聞いていたからだ。

 その前に、わしが「業」と決着を付けなければならん。

 あやつよりも先にわしが出れば、他の人間もわしの戦闘を見て「業」の《位相反射》を観測しようとするに違いない。

 「トールハンマー」はあやつが創った広範囲技であり、これで《位相反射》が使われるのであればわしが操る技も限られる。

 反撃の準備をしていたが、何も来なかった。

 これで一つ分かった。

 《位相反射》は自分への明確な攻撃でなければ発動しない可能性が高い。

 そのこともわしは読んでいた。

 何らかの感覚で「業」は攻撃を認識し解析する必要がある。

 攻撃を異次元へ流し、そのまま相手に向けて空間を繋げるのだ。

 だから自分から離れた攻撃は対処出来ない。


 「業」が地上へ出て来た。

 以前にも増して邪悪さが濃厚になっている。

 進化したと言うよりも、元々の性質が表に出て来ただけだ。


 「お前が来たのか」


 「業」が言った。

 それほど大きな声では無いが、わしには明瞭に届いた。

 後ろにいるあやつらには届いておらぬだろう。


 「「業」決着を付けに来たぞ」

 「お前ごときが何を今更。あの時に俺を殺しておけば良かったものを」

 「ほざけ!」


 わしは「業」には技を当てず、その周囲を破壊して「業」がどう出るかを測った。

 やはり思った通り、「業」は直接自分に向かう攻撃以外は操れないようだ。

 徐々に範囲を狭め、「業」に衝撃波が及んでいく。

 しかし「業」は《位相反射》を使わないし、動こうともしない。

 だが油断はしない。

 「業」はわしを弄んだ挙句に殺したいのだ。

 そういう奴だということは分かっている。

 自分の力を絶対のものと確信し、わしの絶望が見たいのだ。

 そしてわしはその驕りに付け込もうと考えている。


 衝撃波が「業」の無視できない強さになっていった。

 「業」はもう反撃か回避を行なうはずだ。

 そのギリギリの加減をわしは狙っていた。



 「獄雷花」



 あやつにしか見せたことの無いわしの最強の技だ。

 それを全身に展開した「魔方陣」から撃ち出す。

 同時に「虚震鎧」で全身を覆った。

 あやつに指導され教えられた技だ。

 どのような攻撃も、体表を流れる「虚震花」が霧散させる。

 「業」が《位相反射》を使って来るか、別の反撃をするか、それとも回避するか。

 いずれであっても何かしらの答えが出る。

 少なくとも《位相反射》を使う切っ掛けは掴めるだろう。

 どのような技でも有効なのか、殺気に関連するか、敵の位置の補足はどうなっているのか。

 様々な要素が判明する。


 「じじぃ!」


 「業」が叫んだ。

 その左の頬から黒い血が流れている。

 わしは更に「獄雷花」の数を増した。

 各々の威力は落ちるが、「業」へ向かう数が圧倒的に増える。


 「業」の身体が霞んだ。

 高速機動ではない、別なものだ。

 次の瞬間。わしの右腕が飛んだ。

 常に高速で移動していたわしの位置を確実に捉えている。

 移動での回避は無駄ということがこれで分かった。

 わしは更に「獄雷花」の数を増した。

 右の膝から下が消えた。

 「業」がどのような攻撃で返しているのかは分からないが、反射した攻撃は「獄雷花」ではない。

 「業」の身体は霞んだままであったが、血しぶきが飛んで、必死の表情をしている。

 わしは「業」に近づいた。



 「螺旋花」



 「業」は更に顔を歪めてわしを睨んだ。

 わしの左腕が「業」の胸に大穴が空け、そしてすぐにそれは閉じた。

 「花岡」の技を「業」はかわせなくなっていた。


 「「花岡」の技が衰えたな!」

 「黙れ!」


 幾度も再生する身体では、技も鈍る。

 やはり、もうこいつは「花岡」とは縁が切れているのだ。

 しかし、わしでは「業」は殺せないことも分かった。

 だから存分にやってやる。


 「螺旋花」を一呼吸で数百を撃ち込む。


 「業」の姿がまた更に霞んだ。


 わしの下半身が消えた。

 破れた下腹から臓物が飛び去っていく。

 左の顔面が喪われた。

 最後に残った視界で、「業」の苦痛に歪む顔が見えた。


 そして全てが闇に閉じた。

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