世にも不思議なOne Night Carnival !
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本日20時に書籍16巻発売記念SSを更新いたします。
さて、一頻り場が温まった頃合いで蜘蛛が二匹、私とレグルスくんが腰かける倒木の前、開けた広場に出てきた。
その左右には一匹ずつマンドラゴラが付いている。
正直右が奈落蜘蛛で、左が魔女蜘蛛かなっていう程度の見分けしかつかない。
二匹の蜘蛛が握手するように脚を互いに一本差し出してちょんっと合わせたのを合図に、左右のマンドラゴラがゴザゴザぴぎゃぴぎゃ鳴き出す。
その鳴き声には抑揚が付いていて、何とはなしに聞いたことのあるような調べになっていた。
もしやと思ってレグルスくんに聞いてみる。
「レグルスくん、もしかしてマンドラゴラ達、歌ってる?」
「うん。かげきだんのおうた、おぼえたんだって」
「へぇ」
そういえば、お庭で踊ってるときになんかみぎょみぎょゴザゴザやってるとは思ってたけど。
よくよく聞いてみると、帝都公演のオープニングの東京ならぬ帝都ブギウギだ。
軽快なリズムに合わせて二匹の蜘蛛がピョンピョン横に跳ねたり、上下に跳ねたり。或いは四対八本ある脚の、一番前にある脚を持ち上げて左右に振ったり、上下に振ったり。
蜘蛛ってダンスが得意なんだよ。
求愛の時にも踊るし、タラちゃん達奈落蜘蛛は同族同士の決闘の時もムエタイみたいに戦う前に踊るんだ。
その時のピョンピョンは猫の「やんのかステップ」に似ている。
因みにうちにいる猫……獅子型の霊獣のぽちは、やんのかステップが下手くそだ。ボニャールっぽい動きになってて、相手が和んで戦意喪失しそうな気がする。
それはおいといて。
奈落蜘蛛の方が後方二対の足を地面から離して逆立ちのようになれば、魔女蜘蛛はその反対に前方二対の足を地面から離して万歳をする。
二匹とも上げた足を器用にくるくる回していると、ギャラリーの蜘蛛達が飛び跳ね、マンドラゴラ達もぎょぴぎょぴと声援だろうか? 何か声を挙げている。
どうやら二匹の蜘蛛、どちらも大技を披露しているみたい。
「なんか分かんないけど、ダンス上手だねぇ」
「そうだね! おれもダンスすきだし、すごくたのしいね!」
にこにこと微笑ましく見守っていると、マンドラゴラの帝都ブギウギが終わる。
それと同じくして蜘蛛達もお尻を高くあげて逆立ちするような格好でフィニッシュ。
拍手とマンドラゴラ達の声援や口笛が飛ぶ。だから口はどこなんだってばよ?
その拍手の中で、また蜘蛛が二匹、中央にやって来た。
けれど左右のマンドラゴラは大根型から蕪型にチェンジ。蕪が二つ、揃ってお辞儀する。
二匹の蜘蛛は凄く派手なカラーリングだ。具体的に言うと、胴体とかは黒なんだけど、お尻が雄クジャクの飾り羽の目玉模様とそっくり。
種族名も孔雀蜘蛛だって。名前はまんまだけど、猛毒持ち。気性は……なんだろうな?
陽気でお祭り騒ぎが大好きだし、堅苦しいことは嫌いなはずなんだけど、初めて菊乃井にこの種の蜘蛛がやって来たときに仁義を切られた。
お控ぇなすって、というアレ。ビックリした。蜘蛛にもそういうのがあるんだなって……。
まあ、気のいい子には違いない。町の治安維持活動に協力してくれるしね。
その孔雀蜘蛛達のダンスが始まる。
蕪マンドラゴラ達が歌い始めたのは、今年の帝都公演で使われた曲。
皆がダンスナイトの主役になれる~って感じの、あの陽気な歌だ。
二匹の蜘蛛がマンドラゴラの歌声に合わせて、派手なお尻をふりふりする。曲のテンポは速いけど、フラダンスを見ているような揺れ具合が可愛い。
曲に合わせて前脚二本をくるくる回したり、後ろ足二本を逆立ちの要領で浮かせて回したり。
最後は二匹で上下に重なって、上の蜘蛛が下の蜘蛛の頭部に前脚を置いて逆立ちでポーズを決めた。
蜘蛛それぞれに個性的なダンスで、見ているのがとても楽しい。
「ダンスコンテストっていってたけど、かげきだんのショーみたいだね。すごくたのしい!」
「そうだねぇ。優勝者を決められるか分かんないくらい、蜘蛛ちゃん達凄いよね!」
レグルスくんが楽しげに笑うのに、ついついにこにこしちゃう。
次の演目も凄かった。
今度は狩猟蜘蛛という種の蜘蛛達なんだけど、この子達はもうガチガチの武闘派。
糸を作るより狩りをするのが専門で、タラちゃん以上にアグレッシブ個体が揃っている。菊乃井の衛兵達と組んで、ならず者をお縄にするのが専らのお仕事だ。
リーダーらしき大人の拳くらいの大きさの一匹目を起点とし、同じような大きさの二十匹前後の蜘蛛達が扇形に整列する。そして長い足で自分の足を叩いて音を出し始めた。
それに呼応するように、大根と蕪、人参型のマンドラゴラが吼え始める。
低い唸り声というか、明らかに威嚇の要素が詰まったそれに、レグルスくんが「おお」と声を挙げた。
その声に合わせて蜘蛛達は脚を踏み鳴らし、あるいはクラップするように足同士を打ち合わせる。
しゃがんだり立ったり。或いは強さを誇示するように足を振り上げ、左右に振り回す。けれどその動きは一糸乱れず、統率された兵士の如くに。
ああ、これはハカとかシピタウというやつじゃん。
「ははぁ、戦う前の舞踏の儀式か……!」
「かっこいい!」
「頑張って頑張ってしーごと!」 っていう空耳CMを何となく思い出してしまった。
それはどうでもいいんだけど、蜘蛛達の勇壮なこと。流石蜘蛛族一の武闘派種族だ。何気にマンドラゴラ達も声に合わせて二の腕を叩いたり、足を膝について地面を殴る仕草をしたりと一体感が凄い。
レグルスくんも何となく身体を動かしつつ、マンドラゴラと一緒に雄たけびを上げている。
マンドラゴラの気合の入った「びゃ!」という掛け声に、前足四本を天に掲げた姿で蜘蛛達が静止した。これが彼らのフィニッシュポーズなのだろう。
大きな拍手を送ると、礼儀正しく全員で礼をして整列したまま退場する。軍隊みたいだな……。
そして最後の演目は、子蜘蛛達による混成ラインダンスだった。組んでるマンドラゴラも、幼い種……ベビードラゴラらしい。
小っちゃいのが整列して、前と後ろの足を交互に持ち上げたりジャンプしたり。
でも赤ちゃんが多いのか、ぽてぽて時々転んでるのが可愛い。
因みにラインダンスの曲は「きらきら星変奏曲」で、ユウリさんがアンジェちゃんに教えて、アンジェちゃんが小っちゃいマンドラゴラに教えたとか。
蜘蛛だろうが大根だろうが蕪だろうが人参だろうが、小っちゃいのが一生懸命頑張ってるのは正義なんだよ!
可愛い子蜘蛛達に癒されたので、私とレグルスくんのダンスの審査は子蜘蛛達一択。
栄えある夏のダンスコンテスト優勝は、子蜘蛛達の混成チームと相成った。というか、他の蜘蛛達もマンドラゴラ達も、子蜘蛛達に贈る声援と拍手が一番多かったからね。文句など出ようはずもない。
さて、お次はマンドラゴラの肉体美コンテストなんだけど。
「肉体美ってどういうこと?」
首を捻ると、レグルスくんも「うーん」と小首を傾げる。
「なんか、はっぱのふぁさっていうのをくらべたりするんだって」
「はっぱのふぁさ……?」
「あとはムキムキのバインバインのぼよよん?」
「大根にあるまじき擬音では?」
しおしおとかしなしななら解るんだけど、ムキムキでバインバインでぼよよんとは?
意味不明な擬音に思わず真顔になるんだけど、同じくらいレグルスくんも真顔だ。
ちょっとよく解りませんね?
二人でそんな顔をしつつ、広場の中央を見れば今度はめぎょ姫が司会なのか、ぎゃぴぎゃぴと話し始めた。
「今から始まる、のかな?」
「うん。ござる丸もでてるみたい」
「へぇ……」
ステージは月明りで結構明るい。
めぎょ姫がめぎょめぎょ言いつつ、枝というか腕を振ると腰に「1」と書かれた紙を張り付けた大根マンドラゴラがステージに現れた。しかも上半身半裸。野菜だけど、普段着ているツナギの上を脱いでいる。
そして舞台中央までくると、そのフサフサと生えた緑色の葉っぱをふぁさっと靡かせ一回転。
どういう顔をしていいのか迷っているうちに、ふぁさっが終わった大根マンドラゴラが正面……私達の方を向く。
そしておもむろに両腕を上にあげつつ曲げて、腕……枝なんだけど、心なしムキッとしたそれを見せつけるようなポーズをとった。大根なせいか逆三角形の体格と、シックスパック通り越してエイトパックも露わな姿なんだけど、そもそも大根に筋肉は無いはず……?
なにを見せられているのかな?
お読みいただいてありがとうございました。
感想などなどいただけましたら幸いです。
活動報告にも色々書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。




