だからホラーはry(しろめ)
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次回の更新は、2/27です。
何で山登りくらいでそんな悲壮な顔になるんだろう?
皆同じことを考えたのか、各々首を捻っていた。
そんな私達に、エイルさんとリヴさんとエムブラさん三人ともが大きな息を吐く。
切り出したのはリヴさんから。
「実はね、ルッジェーロ山の山頂には、その……強いモンスターがいてね」
「はあ」
そんな話を冒険者ギルドで聞いた覚えがある。
熊だったか何だったか。
かなり大きいようだけれど、私達が山に登っている間は一度もモンスターに遭遇しなかった。原因は主にエルフ三先生だけど、大根先生が加わってからは更に山も谷も静かだったな。
寧ろ野生動物が活発だったように思う。夜中に私達のテントの上をムササビ的な生き物が飛んでたらしいから。
素直に冒険者ギルドで強いモンスターがいることは聞いていると告げる。それでもエイルさん達の悲壮感はなくならない。
なんだろう?
首を再度捻る。
エイルさんぼそっと呟いた。
「……ザスターって呼ばれてるのがいるんだ」
「え?」
「だ、だから、その、ルッジェーロ山の頂上にはディザスターって呼ばれるくらい強いドラゴンがいるんだよ!」
「……はあ?」
目が点になる。
はて、ディザスターってなんだっけ?
意味としては災害とか何とかだったけど。
分かりかねていると、ロマノフ先生が「ああ」と頷いた。
「鳳蝶君、モンスターの強さの階級の話を以前にしたでしょう? 丁度一年くらい前です。ほら、天地の礎石にいたアンデッドの件で」
「えぇっと? そうでしたっけ?」
「そうだよ、あーたん。アレ、楼蘭で調べてもらったら民間伝承級だって言われたやつ」
「あー……? そう言えば?」
「まんまるちゃん、興味ないから忘却の彼方だね……」
「えへ?」
笑って誤魔化しておく。
そう言えば何か瘴気の残量とかを量ると、民間伝承に残るくらいには本来強いアンデッドとか何とか。
その時に、冒険者ギルドが定めるモンスターの危険度とかを一応聞いた覚えはある。
二百年程前のロマノフ先生による名付きのドラゴンが一応最高の危険度設定で、アレがディザスター……だったような?
思い出しつつ話せば、エイルさん達がぎょっとした。
ロマノフ先生が笑う。
「まあ、ディザスターもピンキリですよ」
「そうそう。ボクらなんかエルフだけど、そのドラゴンよりある意味怖がられてるし」
「だよねー。実際そのくらい強くても、人里に降りても悪さしないモンスターなんか幾らでもいるもん。ラナー嬢とかそうでしょ?」
「たしかに?」
紡くんがこてりと首を傾げつつ頷く。
ふっとそれまで大人しく話を聞いていたレグルスくんが「ん-?」と声をあげた。
「あにうえ、ラナーさんのかあさまのことじゃないの?」
「ああ!」
ポンっと手を打つ。
そうだよ。
ルッジェーロ山はラナーさんのお母様の縄張りで、そこでラナーさんのお母様が薬草を採取している人間に会ったって話からこっちに来たんだ。
そしてラナーさんのお母様はラナーさんよりかなり強いそうな。とすれば、そのディザスタードラゴンはラナーさんのお母様で決まりだろう。
でもそれならちょっと話がおかしいな?
私と同じように気が付いた奏くんが怪訝そうな顔をした。
「そのディザスターとか言うドラゴン、十年前に亡くなったって聞いたぞ?」
「え!? そうだけど、何で坊ちゃんはそれを知ってるの!?」
エムブラさんが驚く。リヴさんもエイルさんも目が点だ。
アレ? これ、秘匿情報だったのか?
何か情報が錯綜しておかしなことになっている。なので、まず私の知っている情報から開示しようか。
レグルスくんや先生達、奏くんや紡くんと顔を見合わせる。ニルスさんは置いてけぼりで、状況を見守っている感じだ。
ここらでマルフィーザ行の理由をキチンと話そう。
「私達、エイルさんにマルフィーザに来たのは人探しと知人のお墓参りだと話したと思うんですが。覚えてます?」
「あ、うん。そう言えば」
「アレなんですけど」
一番最初の目的、人探しについて。
これは実はエイルさん達、魔女の一族であること。
イゴール様から紹介状を書くから、説得して菊乃井に移住してもらえないか交渉しておいでと言われた。
そう告げると、リヴさんもエムブラさんも納得してくれた。
これに関してはニルスさんも知っているので、おさらいって感じ。
それで次なんだけど。
「知人の墓参りなんですけど、そのお墓の場所は分かってないんです。ルッジェーロ山だというのは解ってるんですけど」
「そうなのかい? でも、あたいら以外の人間がルッジェーロ山に住んでたなんて聞いたことも見たこともないよ」
「ああ、はい。それなんですけど人間ではなくてですね」
「うん? 人間じゃ、ない?」
こくっと私もレグルスくんも先生方も頷く。
エイルさん達もだけど、ニルスさんも目を丸くした。
「えっと、人間じゃない……とは? エルフの方ですか?」
こっちの大陸のエルフに友人がいるというのも、ニルスさんには伝わっているのでそういう発想になったんだろう。
これに首を横に振る。
「えぇっと、ドラゴニュートかい? あの村長さん絡みの?」
「いや、あの人は探し物というか破壊神(笑)の関係ではありますけど。その関係の勇者の末裔くんはぴんぴんしてるし、来月また破壊神(笑)の心臓を突き刺しに行くそうなんで」
「そ、そう。野遊びにでも行くかってくらい気軽に言うね……」
「空飛ぶ洟垂れトカゲにロマンを見いだすのは、流石に創作に携わってない人間には無理です」
にこやかに言えば、レグルスくんや奏くん紡くんも笑う。先生達から生温い視線が注がれているけれど、ニルスさんは何かちょっと考えている。
眉間に皺を寄せつつ、ニルスさんが口を開いた。
「もしも、ですよ? あの破壊神的なちょっと違うかもしれない生き物を、討伐しきれなかったと仮定しますよ? ノエシス殿がドラゴンに変ってしまって、最早誰も倒せない。その状況で、彼の呪いの病を持ち続けたままの破壊神だったかどうか今更定かでない生き物が、世に解き放たれていたら……世界は終わっていたんじゃ……?」
「かもしれませんけど、今となってはね。というか、ニルスさん。貴方何かしら破壊神(笑)に思うところがおありで……?」
「なんというか、あの手の生き物を破壊神と言い切ると良くない気がして……。それに物語にならないじゃないですか、空飛ぶ洟垂れトカゲって」
「ニルスさんも大分若様に染まって来たな!」
けらけらと奏くんが笑う。
一瞬どういうことかと思ったけど、エイルさん達が微妙に引いていることに気付く。
咳払いを一つして話題を元に戻した。
「知人と言うのはドラゴンです。ラナーさんという女性のドラゴンで、ルッジェーロ山に棲むドラゴンさんの娘さんなんです」
直球勝負。勝ち負けとかないんだけど、変に持って回った言い方をしても仕方ないだろう。話が脱線しそうだし。
すると反応したのはエイルさんだった。
「あー!? そういや聞いたことあるわ! 中々顔見せに来ない娘がいるって!」
「えー!? ワジュドおばちゃん、娘さんいたの!? マジで!?」
「あたしも聞いたことがあるよ。あんたらが言うこと聞かないってワジュドさんに愚痴ったら、どこの娘もそんなだって言ってさぁ」
「おお……」
エイルさんの言葉にエムブラさんが驚き、リヴさんがしみじみと話す。
なるほど、ラナーさんのお母様は彼女達に受け入れられていたらしい。ほっこりしていると、ふとエイルさん達の顔が曇った。
そうだよな、十年前にラナーさんのお母様は亡くなっている。お悔みの言葉を言ったほうがいいんだろうか?
ちょっと測りかねて黙っていると、エイルさんが「それ、なんだけど」と言った。
「それ?」
「うん。たしかにワジュドおばちゃんは十年前に亡くなった。でも、まだ生きてるんだ!」
「へ?」
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