ひっそり解決した世界の危機について
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次回の更新は、2/20です。
「そんで、お宝って結局どのくらいあったんだい?」
「うーん、まだ回収したばかりで鑑定にも出せてないんですけど……」
多分このくらいと、片手を広げて見せる。
するとエイルさんがこてっと首を傾げた。
「ん-? 金貨五百枚くらいか。そりゃ凄い」
「や、少なくともその十倍くらいですって」
「……どんだけ凄いのか、桁違い過ぎて分からないね」
「ですよね。流石に私もその数の金貨は見たことないです」
破壊神の討伐というかお宝略奪から一夜、私達は以前キャンプした河原に戻って来ていた。
菊乃井に帰っても良かったんだけど、奴が件の病に罹っていたため、事の次第を蜘蛛蜘蛛ネットワーク経由でロッテンマイヤーさんとルイさんに報せ、帝国への連絡もお願いして、私達は自主隔離というわけ。
本来なら七日は隔離なんだけど、そこはほら。ニルスさんを除いて、私達神様の厄払いを受けているので。
でもニルスさんも大丈夫だと思うんだよね。だってあの呪いより私の解呪の方が強いし、それを紡くんの反閇と奏くんの弦打ちで強化して浄化までしたんだから。下手な司祭さんより強い祝福になってる。
心配なのは風邪症状の方だけど、ござる丸の葉っぱで大根先生が作ってくれて滋養強壮の薬湯を飲ませておいた。これもなんとかなるでしょ。
そういうわけで明日か明後日には菊乃井に一旦戻ろうかと。
そんな相談を皆でしているときに、エイルさんが馬車を駆って訪ねて来たのだ。
そんでまあ、エイルさんも破壊神のことを知っているので顛末を話しているわけで。
「にしても、心臓に直接切り込んでもダメって凄いね? 本当に倒せるのかい?」
「大丈夫ですよ。実際私やレグルスくんの攻撃でも深手を負わせることは可能でしたから。ノエくんの攻撃力が上がって、奴の防御力が下がればすぐです」
「破壊神って実は弱かったのかい?」
エイルさんが苦笑いを浮かべる。
強いか弱いかで言えば、弱かったんだろうな。
ただしそれは私達と比べて、だ。自分でいうのも何だけど、私達ちょっとおかしい集団だから。
でも私達子どもだし。
私達をただの子どもじゃないと感じられる冒険者や武芸者・魔術師は、その時点で結構な実力者だ。隠ぺいを見破ってるわけだから。
だけど分からなくても大半の人は困らない話だし。
とりあえず世界の危機はもう何とかなる。エイルさんにもそれだけ理解してもらえればいい。
それで持って帰って来たお宝の話になったんだけど、これが。
ヴィクトルさんがざっと見ただけでも、結構なお宝が貯め込んであったんだ。
奴はノエくんの御先祖に封印されてたんだけど、その封印される前から色々溜め込んでたみたいだし、封印されてからも時々ドラリーチェ山の山頂を通る鳥型モンスターやワイバーン、小型のドラゴン系統のモンスターを襲ってたそうな。
小型のドラゴン系統のモンスターの中にも、ドラゴンの本能というのか金銀財宝が好きな種類がいて、身体にじゃらじゃらつけて飛んでたりするんだってさ。そういうのを殺して奪った財宝の他、被害モンスターの魔石やら骨やら。まあ、沢山。
金貨だいたい五千枚って言ったな? あれって実は最低査定額。最高額だとさらにその十倍は行けるかも、という。
どちらにせよ、今はまだ捕らぬ狸のなんとやらだ。
私達の破壊神退治はこれにて終幕……には寸足らずって感じだけど、一件落着としよう。
それで訪ねて来たエイルさんのほうだけど。
彼女の方も進展はあった。
件の病に罹ったドラゴニュートの村長のことでなく、彼女の一族の身の振り方のほうで。
エイルさんが眉間にしわを寄せる。
その表情でお断りされるのかと思いきや、そうじゃないらしい。
「いや、長老も皆もイゴール様の紹介状を読んだからね。行きたいって言ってるんだ。だけど、問題があって」
「問題? 薬草の植生とかの話ですか?」
こてりと首を傾げる。
横合いからコップが差し出されて、そちらを向けば識さんがお茶を準備してくれたようで、エイルさんには奏くんがお茶の入ったコップを渡していた。
実はひよこちゃんや皇子殿下方、ノエくんやニルスさんは河原でまだノジュール探してるんだよね。先生方も何か掘ってるし。
紡くんは大根先生と、ドラゴニュートの洞窟で見た前期神聖文字の翻訳に夢中だ。
なので識さんと奏くんが私達の護衛というか、なんというか。
お茶を飲みつつ、エイルさんが首を横に振った。
「そういうことじゃないんだ……」
エイルさんの目には困惑があって。
何かはあるんだけど、その何かをどう伝えればいいか迷っている。そういう様子が見て取れた。
こういうときは急かしちゃいけない。
言葉を待っていると、エイルさんが覚悟を決めたのか口を開いた。
「一回うちの集落に来てもらっていいかい? 説明はあたいじゃなくて、長老にしてもらったほうがいいと思うんだ」
「それは……私は構わないんですけど、そちらはよろしいので?」
「ああ。菊乃井に移住したいのは総意なんだ。ただ移住前に確認しておかなきゃいけないことがあるし、それ次第で頼みたいこともあるというか」
「はぁ。私で出来ることであれば協力なりなんなりさせていただきますけども?」
確認というのがちょっと引っかかるな。
でも、移住してくれるつもりがあるということならば、その条件確認はお互いに必要だろう。
だけど今日はちょっとマズいかな。何せ自主隔離期間だ。
そういう話をすると、エイルさんが頷く。
「ああ、うん。明日迎えに来るから、それでいいかい?」
「はい。大所帯でお邪魔することになると思いますが」
「ああ、あたいんとこは構わないよ。それについでと言っちゃなんだけど、若様から預かってる病人のこともあるしね」
「いましたね、そういう人……」
そうだ。言われて思い出したけれど、ドラゴニュートの隠れ里の長を預かってもらってたんだよね。
エイルさんによると、その人の容態は大分回復してきたそうな。
風邪症状はどうも私達が考えた以上に重かったらしい。熱は下がったけど咳が止まらなくて、マンドラゴラの葉を煎じた薬を三日三晩飲ませてようやく治まったとか。
それが余程堪えたのか、大人しく看病されているそうな。
ただそれで村長が改心したかと言えば。
「分からないね。一言も喋らないから」
「そうなんです?」
「というか、最初は咳が酷くて話せる状態じゃなかったしね。咳が治まってもそれまでに喉に負ったダメージで、声が出しにくくなってる。喋ろうにも気力が湧かないのかもしれない」
「なるほど」
「まあ、食事は摂れるようになったから、気力は体力と一緒に戻ってくるとは思うけど……」
看護師としてエイルさんの見立てはそんな感じなんだな。
命があるだけましだとは思うんだけど、さて村長的にはどうなんだろうね?
日頃の行いが原因でこうなったにせよ、家族から棄てられるという経験をしたのだ。その心境がどういう風になっているのかが気になる。
前非を悔いるか、それとも恨みで元々曲がっていた根性が更に捻くれるのか。
どちらにせよ、村長には必要経費を払ってもらうつもりだ。
その方向性が穏便になるか不穏になるかの違いは、彼の心境の方向性次第だな。
そう言えば件の病の件で気になることがある。
破壊神も件の病に罹っていて、そのくしゃみや鼻水で感染爆発に近いことが起ころうとしてたんじゃないかと私は思っているわけだけど。
それはどうもエイルさん達には降りかからなかったようで。
何故なんだろうかと呟けば、エイルさんが少し考えて口を開いた。
「ああ、あたいらマルフィーザの外にいたからさ。集落ごとルッジェーロ山の麓に帰って来たのが、丁度若様と会う前の日だよ」
「そうだったんですか?」
「うん。いつもはもう少し前の時期からルッジェーロ山にいるんだけどさ、今回はちょっと訳ありでね。戻ってくる時期がズレちまってたんだよ」
いずこも訳ありばっかだな。
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