因果応報
「ゆうって本当に冴えないよね。一生彼女なんてできないんじゃない?」
私の隣には、彼氏のしょう。
ゆうの前に立つときだけ、
私はいつも彼と腕を組む。
ゆうの視線が少しでもこちらを向いてほしくてわざわざ選んだ数合わせの男だ。
でも、ゆうはため息すらつかず、ただ冷めた目で私を見つめている。
私はそんな彼をさらに煽るように笑った。
そうしないと自分の心臓の音がうるさくて耐えられなかったんだと思う。
ゆうは小さく首を振った。
「…そっか。お前もういいわ」
それが最後だった。
「は?なにいってんの―」
「いつも上から目線でばかにされて。ぶっちゃけもう呆れてくるんだよね。絶縁しよ。二度と話しかけないでね。これからは赤の他人だから。」
冷え切った声だった。
頭が真っ白になる。
可愛いとちやほやされてきた私のプライドは、ゆうの拒絶にあっけなく粉砕された。
しょうと腕を組んだまま私はただ立ち尽くす。
胸の奥が、今までに経験したことがないほど激しく痛んだ。
ゆうのいない一週間は、まるで世界から色が無くなったようだった。
放課後、私はゆうに謝りたくて、よりを戻したくて、学校の近くの花屋で小さなヒヤシンスの鉢植えを買った。彼を引き止める言い訳にするために。
花を抱えて私はゆうの教室へ向かうと、そこには新しい彼女がいた。
「とわ……?」
同じ学年の誰もが知る、みんなに憧れるモテモテの美少女。
私の親友。
サラサラの髪をなびかせてゆうの腕に嬉しそうに絡みついている。
ゆうも、私には一度も見せたことのない優しい笑顔を彼女に向けていた。
その笑顔を見た瞬間、視界が涙で歪みそうになり私は慌てて顔を背けて乱暴に、ごしごしと涙を拭いた。
「狙ってたんだよね、ゆうくんのこと。高1のときから」
鈴の鳴るような可愛い声。だけど、その瞳は冷酷に私を見下ろしている。
「みらいちゃんが勝手に自爆してくれて助かったよ、ありがと。
付き合ってもない男使ってまでゆうの気を引こうとするとか、自分を嘲笑ってばかにしてくる人に『好きです』だとか今更言われて許す人なんていないでしょ。」
「なっ…」
「そういうのが許されるのは二次元だけなの。
現実はそんなに甘くないんだよね。
ゆうは優しいからずっと我慢してくれてたのにね。
これからは私たちがお似合いの二人だからさ、もう近づかないでね?」
とわは煽るようにそう言い残し、軽やかな足取りで去っていった。夕暮れの廊下に、ぽつんと一人。
私のスマホのアルバムには彼氏のしょうの写真なんて一枚もない。
入っているのは、こっそり後ろから撮ったゆうの背中や、不意に目が合ったときのボケた写真ばかりだ。私はなんであんな酷い態度をゆうに取っていたのだろう。
もう二度と見れないゆうの笑顔を思い出しながら、私の手からヒヤシンスの花がするりと落ちた。




