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チョコバナナ
佐倉晴は男だ。
それだけは間違いない。
小柄で、人見知りで、少し幼く見られることはあってもれっきとした男だ。
だからこそ友人である夏海蒼を好きになった時も、誰にも言うつもりはなかった。
言ったところで困らせるだけだと思っていたから。
でも言わないでこのままなのはダメだと思った。
ある日の帰り道に、夕焼けに染まる河川敷で晴は言った。
これでもかなり勇気を振り絞った。
この関係が壊れることを覚悟して言った。
「俺さ。」
「……男が好きなんだ。」
風だけが吹いた。
蒼は困ったように言う。
「へー。」
その後に続いた言葉を、晴は一生忘れないだろう。
「俺、そういうのちょっと無理かも。」
その日から二人の距離は少しだけ遠くなった。
その日から晴は化粧用品を買うようになった。
その日から晴は化粧台に座るようになった。
ウィッグも買った。
翌週。
晴は前髪を伸ばし始めた。
翌月。
髪を肩まで伸ばした。
ウィッグを外した。
――半年後。
鏡の前でスカートの裾を整えていた。
似合っているとは思わない。
でも、あのままの姿よりは受け入れてくれると思った。
玄関を出て空を見上げた。
春の空は青かった。
どこまでも青かった。
晴は空を見上げて微笑んだ。
「…同じ色じゃだめだったもんね。」
青空は何も答えなかった。
偽りの性別でも彼のそばにいたい気持ちは変わらなかった。




