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臨時運搬者一括同意簿は、帰っていない名を次の礼服へ縫い込めません

銀の賃金皿の下で、三枚目の銀貨だけが名札を持っていなかった。


エリナは皿を動かす前に、皿の縁へ青糸を一本掛けた。皿の下から薄い紙がずれる。表紙には、きれいな字で「礼服搬入済み・臨時運搬者一括同意確認」とあった。


皿の上には銀貨が三枚。脇に置かれた名札は、ハルとシオの二枚だけ。


「一人分、銀貨だけ先に済みにされています」


王妃付き記録係が小さく言った。エリナはうなずき、外套掛けの端を見た。そこに、結びかけの細い紐を握ったまま、女中見習いの少女が立っている。濡れた袖口を隠すようにして、彼女は自分の外套を掛ける場所を探していた。


「名前は」

「……ナギです。台車の後ろを押しました。でも、名札は、まとめてあるから不要だと」


シオが前話から残した青布の車輪止めを、もう一度強く結び直した。


「私だけの待機ではありません。ナギが読めるまで、この次の台車も待ちます」


押し棒へ伸びかけた手が止まる。エリナは一括同意簿を開き、縦に四本の青線を引いた。


「これは同意簿ではありません。名札、賃金皿、南門帰宅札、次作業同意欄。四つの生活到着条件が、同じ一枚に縫い込まれています」


一列目、名札欄。ハル、シオ、空白。エリナは空白の横へ、臨時札を置いた。


「ナギ。本人が聞こえる声で呼びます。臨時運搬者、ナギ」


ナギは肩を震わせ、結べなかった紐を胸の前で握り直した。


二列目、賃金皿。三枚目の銀貨は礼服搬入費の合計ではなく、ナギ本人の半刻賃金として皿の手前へ戻された。ナギが受け取るまで、記録係は「受領済み」を書かなかった。


三列目、南門帰宅札。ハルの札はまだ外套掛けの青糸に戻される。帰宅灯を通っていない札を、礼服搬入済みの束へ入れないためだ。


四列目、次作業同意欄。シオの空白欄には、シオ自身が「本人確認待ち」と書いた。辞退ではない。弱いから止まったのでもない。読めないまま次の台車へ押し出されないための、本人の待機だった。


王妃付き記録係が、帳面を二つに分ける。


「礼服搬入済み」と、「運搬者帰宅済み」。


同じ済み印を押さない。その一行が書かれた瞬間、ナギの外套紐はようやく掛け金へ結ばれた。


エリナは一括同意簿を閉じようとして、裏面の薄い転記印に気づいた。


――祝典労務整理費回収簿へ転記済み。


「まだです」


エリナはその印を青糸で押さえた。


「帰っていない名と、払っていない賃金と、読んでいない次仕事同意を、整理費へ縫い込むことはできません」


台車は動かない。けれど、ナギの名前だけは、初めて皿の前で呼ばれた。

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