幕間α 例え不必要でも
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※月曜日以外毎日1話更新予定
これは…少し昔の話し
エアの誕生秘話 ってとこだろうか
「ライツ様!?拾ってきた「どうするんですか?」
ミラが容器を抱えながら問いかける
その中はパチパチと弾け、火花と光を放っている
回収に結構な費用が掛かったのだが…
ライツはニヤニヤと笑いながら宣言する
「なぁ アンタ?」
ライツは容器をコツンと突く
「歩ける様にしてやるからな」
容器が…微かに揺れた
「はい?歩ける様に?」
「全身義体を用意すりゃ 出来るさ」
「はい?」
全身義体…新品ともなればかなりの費用が…
「勿論オーダーメイドだ!」
ミラの顔が引きつる
新品オーダーメイド全身義体?
何年分の給与が飛ぶと思って…
「第1オーダーメイドって言っても聞きようが…」
「まず喋らせるところからだな」
ライツは不敵に笑い 高らかに言う
「プロジェクトECHO始動!」
「あ〜あ〜聞こえるかい?」
ライツが容器に語りかける
容器の周りには配線やアンテナが乱立していた
「今からそこの端末に繋ぐから 上手くはいるんだよ」
ライツは手を挙げ、ミラに合図する
「…いきますよ」
配線を繋いだ瞬間 容器が激しく揺れる
ホースの中を水が流れる様に「が配線を走る
端末には はっきりと「声」が観測されていた
「喋れるんだろう?何か言いな」
「「あ…あ…」
「ははっ! 喋った! 喋ったよミラ!」
「良かったですね」
ミラ曰く当時の心境は
「子供の自由研究をみている気分だった ちなみに喜び方は小4」
らしい
「今日は「言語Ⅳ」「文化Ⅲ」「歴史Ⅰ」を入れるよ〜」
当然 「は言語も 文化も知らない
幸いにも都市には素晴らしい教育方法がある
例えば 知識を回線を通して直接入れる
「知識チケット」だろう
「まぁ最低限の知識さえ入れれば…」
ライツはニヤリと笑う
その顔には今後の期待があった
「後は勝手に学ぶだろう」
「えぇ~ 書くのぉ?」
「当然ですよ」
目の前には巨大な紙
「義体の設計図 書いてくださいね」
ライツは駄々をこねる様に手足をバタつかせる
「取り敢えず作ってみるのは…」
「ダ…ダメに決まってますよ!」
「いや私が恐れているのは設計図を書くことで素晴らしい創造性やインスピレーションが抑圧され、結果として…」
ミラは呆れ顔で言う
「要約すると?」
「書きたくない!」
「よく言えました書け」
「ひゃ ひゃい…」
「さぁてたのしいカタログタイムだよ!」
「「カタログ…タイム?」
「端末の前には 冊子が置かれていた
冊子には 義体の部位やサイズが書かれている
「アンタの理想の身体を作ってやろう!選べ!」
「「え…髪はこれぐらいで…」
「どんどん言いなさい!さぁさぁ!」
最後まで要望を聞いたのは ライツの道楽である
「ここがA12番で…」
「早く探せ〜!」
「な…何で俺まで…」
いよいよ組み立て…のはずだったが
今や細かい部品を探す羽目になっている
なぜなら 少し前
「部品が届いたぞ〜!」
「ちょ ライツ様 走ったら…」
「あっ」
ライツは走り 足を引っ掛け 盛大に
転けた
部屋中に飛び散る部品
ライツの嘆き
…というわけで 部品探しという工程が増えたのだ
ついでにノウルの休みが減ったのだ
「良し!良くやった 褒めて遣わそう」
「はぁ…」
部品が揃ったのは 「転倒事件」から3日後の事であった
ミラとノウルの目の下には色濃い隈が出来ている
何ならノウルは
「助けてくれ!部品が襲ってくる!」
と叫び気絶していた
「後は私が作る!」
「もう好きにして下さい…私は寝ます」
ここから ライツの「狂気の沙汰」とも言える拘りに満ちた作業が始まった
「ふぁ~よく寝…ってライツ様!?」
ミラの視界には組み立て作業中のライツ
口角が上がり 目は完全にキマっていた
その姿はさながら童話に出てくる魔女である
「ライツ様〜やり過ぎも良くないですよ〜!」
「ここの角度は+5°…」
ミラはやれやれと手を広げる
「聞こえてない…か」
ミラは知っていた
こういう時はライツに任せよう
それが最善だ と
「…せめてやっておきますか」
ミラは「端末に語りかける
「歩くイメージトレーニング しますか?」
「…まだやれるな…」
完成した義体を見ながら ライツは呟く
「もう少し…改良しよう…」
実に56回目の「もう少し」である
異常な拘り それこそがこの義体を作る原動力であり
既存技術を超える唯一の方法
この瞬間 ライツの思考回路は大書庫管理人ではなく
技術者であった
「よ~し!完成!」
「全数値異常無し 行けますね」
「やっとか…」
遂に来た完成
ライツの機嫌も最高だ
「アンタ 遂に歩けるよ!」
ライツはゆっくりと義体に配線を差し込む
「さて 移りな」
義体がビクンと振動する
「…」
「…」
「…」
全員が固唾を飲む中 ゆっくり義体は口を開いた
「「こん…にちは?」
大書庫は歓喜の渦に包まれた
「やった!大正解だねぇ!」
「良かったですね…」
「…良かったな」
ライツは手を差し出す
「立てるかい?」
「は ふらつきながら 立ち上がった
「「バランスを…こう?」
その際の感動は 親が赤子の成長を喜ぶそれに似ていた
「あの時やった様にですよ ゆっくり」
「は 震える足で 何度もバランスを崩しながら
確かに一歩を踏み出した
…完成から数週間
初めこそ日常生活に手間取っていたが
料理に失敗したり、大書庫の本を崩した姿は実に滑稽だったが
今やある程度のことは1人で出来るようになっていた
「…やっぱり若いっていいねぇ…」
「「ライツ様…少し…」
「ん?どうしたんだい?」
「は改まった口調で言う
「「私の「ナマエ」を教えて頂けませんか?」
「曰く 「親が子に与える最初のプレゼントである」と本で読んだらしい
「名前…名前か…」
「ライツ様一応親でしょう?考えなかったんですか?」
「そういや度忘れしてたなぁ」
ライツは「に向き直り らしくなく抱き締める
「これから宜しくね 「エア」 空から生まれた子…」
確かに エアはその身体を抱き返したのだった
章の間にはこんな感じの幕間を入れる予定です
キャラの掘り下げなどをやります!




