Part6 紙と巳
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※月曜日以外毎日1話更新予定
肩に音速近く加速された弾丸が掠め、鮮やかな赤が噴き出す
「っ!」
『クソッ!誰だ!?』
「その場の全員 動くな」
金属質な冷たい声が響く
「そんニャ〜…」
見ると周りにも大量の鉄工会構成員が居る
スコープの反射光に囲まれていた
「わかると思うが 妙な真似したら な?」
鉄工会の特徴の一つはその統率力だ
「製錬」された構成員達はフェルムの号令一つで迷いも躊躇も無く引き金を引くだろう
「目的は何だ?」
レイセンが問う
目的があるなら交渉の余地も残されている筈だ
「貴様らが盗んだ湾曲物『孤独紙』 渡してもらおうか?」
そりゃそうだよな……
「全部お見通しだったのか……なら何故…?」
フェルムは不敵に笑う
「当たり前だろ あそこで糾弾した所で競り勝てるかは分からない なら盗まれた所を横取りする方が確実だ」
その思考も、表情も、全てプログラムされた様に合理的だ
「あんたらが湾曲物を持っても活かせないだろ」
「まぁな だが金にはなる」
この徹底した合理実利主義こそが『鉄』工会足る所以である
「交渉の余地は無いか……」
「でもな………」
不意にフェルムの表情が変わる
冷たい笑みから一転 闘争心に溢れた笑みに
その裏には灼けた鉄の様な熱があった
「お前の事が気に入った チャンスをやろう」
何かを懐から取り出し 投げる
慌てて受け取ったそれは 一丁の拳銃とナイフだった
「私が使っているのと同じ物だ 下らない小細工はしていないぞ」
フェルムは首を掻き斬る真似をする
「1発入れたら助けてやる 2発入れたら湾曲物は諦める 3発入れたらお前らのボスを援護してやるよ」
所長を援護……?
「どういう事だ?」
「何だ気づいて無かったのか 狙われてるぞ 薄気味悪い奴に後を付けられてる」
――――――――――――――――――――――――
「さてと………この辺で良いかな」
エニグマは立ち止まり、振り返る
………誰も居ない……
「そろそろ出てきたらどうだい?居るんだろ」
エニグマの声は少し 固くなる
「おやおやバレてしまったのならこれ以上は止めましょうかねぇ」
上から一人の男が電柱に絡みつくように降りてくる
男は丁寧な、然し同程度の冷たさを孕んだ雰囲気を纏う
何より特異な点は顔が蛇 白蛇になっていることだ
「私もかなりの湾曲体と罹湾者を見て来たけど……蛇は初めてだな なんて呼べば良いんだろう」
男は恭しく礼をし、名乗る
「十二支使『巳』とお呼び下さい」
男は何か粘性を持った液体の滴る刀を抜く
「逃げ果せる……のは無理だろうね 苦手だけどさてさて……」
「やろうか」「殺りましょうか」
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