Part14 龍
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※月曜日以外毎日1話更新予定
疲労の嵩んだ身体
あの子達を逃がして数的不利
状況は限りなく悪い
ほぼ詰みだろう
だが盤面を覆す一手は存在する
「全く……この力に縋るのは……好ましく無いんじゃがのぉ」
身体全体で力を溜めていく
向こうも何か察した様だ 武器を構えた
午の矛が風を切る
その身体は黒い旋風を纏っている
「……大人しく首を貰おう 主の名だ」
丑はガラガラと車を引く
車には数多の武具 その一つ一つが黒い輝きを放っている
「うーむ いまいちピンと来ねぇ なんでこの丑公様と午野郎なんだ?」
「おお お二方 一つばかり老人からの助言じゃがのぉ」
特に裏はない 本心だ
「逃げよ」
「……それは出来ぬ 尊命遵守 故に十二支使」
「ならば……祈れ」
身体に溜まった力を一気に使い 叫ぶ
「湾曲ID 発現」
身体が変異を始める
鱗が浮かび 体躯は数百倍に
肉が裂け、伸び 額からは一対の角が突き出す
その姿は 龍
龍は大きく咆哮する
勇ましくもあり、同時に溺れているような苦しさも孕んだ咆哮が雲の合間に反響する
「……雨…か?」
ぽつりぽつりと雨が降り出し、やがて豪雨になる
龍はゆっくりと 2人の獣を睥睨する
龍の口 牙の生えた恐ろしい口から出力された言葉は 一つだった
「哀れだ」
その口に珠が現れる
雨を吸収し 少しずつ大きくなっていく
「…なんだよ…こりゃ無しだろ…」
「……これが……厄災の宝珠…か」
ただ 茫然と眺めるしか出来ない
迫る厄災を前に取れる手段は少ない
奇しくも任務を思い出したからか 午は正気に戻る
「……丑公 車は放棄したまえ…逃げるぞ」
「あ…ああ…そうだ……そうだな!」
逃げなくては
少しでも ほんの少しでも距離を取らねば
充分に大きくなった宝珠が地面に触れた瞬間
音が消えた
「……ウ…リウ……」
ん?なんじゃこの声は…?
「ジジイ!起きろ!」
「はぁ… ここはどこじゃ?」
見るとターニャとレーシャがベッドの周りを囲んでいる
「医者ントコだよ!苦労して運んだんだ」
「そうか…… 2人とも…ご苦労じゃったな」
ただ……これだけは…
「それからレーシャよ 上と交渉に行くぞ」
「へ?」
イル協会 便利屋の総轄担当であり元締め
リウとレーシャは「あれ」を伝える為に足を運んでいた
「リウ様とレーシャ様 ご要件を伺います」
リウは重々しく告げる
「儂の名前を使って全便利屋協会に連絡しろ 「これは止められない流れ」じゃとな」




