Part14 救世主
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※月曜日以外毎日1話更新予定
心象空間が急速に縮小していく
中心である罹湾者の負の精神エネルギーが消え去ったからである
そこに遺ったのは青に光り輝く球 「幻子核」
湾曲体の力の源であり 回帰できなかった罹湾者が最期に遺すもの
A社の回収対象であり 非回帰時の報酬の条件でもある
「さっさと回収して帰んぞ」
「2人ともよく頑張ったのぉ」
ターニャが幻子核を取ろうと手を伸ばす
その指先が触れる瞬間 悪寒が走る
(なんだよ……これ…)
針で肌を刺されるような感覚
(これに触れたら……俺は…)
「!?」
背後を振り返る そこには黒い霧があった
濃く、不気味に立ち込める霧は向こうを覗く事が出来ない
ただこれだけは分かる
向こうには「何か」が居る
とてつもない負のオーラを纏う何か
その匂いは……元罹湾者のそれだ
霧の中から 幾人の異形が歩み寄る
子、丑、寅…… 全部で13人だ
なんとか人の形は保っているが その顔は歪んでいる
その中心に立つ女 長い髪を揺らし、紅い瞳を持つ彼女は口を開いた
「おやおや自ら退化を選ぶ愚か者達よ」
口調は軽いが、その声色はゾッとする様に冷たい
「私の名は「メシア」… 十二支使を統べる者」
その瞳が一瞬 恍惚の色を帯び、光る
「そんな立派そうな奴が何の用だ?失せろ」
こういう輩には舐められてはいけない
「おやおや元気の良い 我々の目的はその幻子核だよ」
「渡すと思ってんのかクソが!」
「ターニャ 待っ…!」
わりぃレーシャ
我慢できねぇ
アイツの顔面に一発入れて……
「戌 止めよ」
「御意」
女の隣に控えてやがった戌が飛び出してくる
腹に拳がめり込み 肺から息が押し出される
平時ならなんとも無いだろう
しかし今は湾曲体との戦闘後 3人漏れなく疲弊している
「クソ……が……」
見ているしか出来ない…
無力感が身体を襲う
だから弱いのは嫌いなんだ…
ああいうニタニタ笑ってやがる野郎をぶん殴れねぇからな
「此方の狙いは幻子核のみ 直ちに譲るよう」
「ターニャ 渡すんじゃよ」
渋々幻子核を投げる
「ははっ それではまた 来たるべき「位置」来たるべき「刻」にまた逢おう」
メシア達は霧の中へ戻って行く
「ああ それから 丑、午 留めなさい」
「御意」「尊命」
2人だけなら……なんとか……
拳を固め、臨戦体勢をとる
しかし…… 後から肩に優しい衝撃が当たる
「もうよい ターニャ 逃げなさい」
「阿呆か!? テメェ殿とか言う気じゃ?」
「逃げなさい」
優しくも 拒絶を許さぬしっかりとした声
だから此方も一言だけ…
「死ぬなよ クソジジイ」




