Part13 例え止まれなくとも
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※月曜日以外毎日1話更新予定
ランプが1つづつ点灯していく
5……
4……
身体に熱が籠る
3……
2……
全神経が研ぎ澄まされ 心地良い緊張が走る
1……
同時に唸るモーター 回るタイヤ
急激にGがかかり 身体が押し付けられる
2つの車はほぼ横並びに走っていた
マシンの性能ではこちらが辛うじて勝っているが、技量の差は圧倒的だ
カーブの度に差が開いていく
この狂気的なイン攻め
少しでもズレれば衝突 0.1秒が命取り
彼はこれで天下を取った男だ
「っ! くそ〜っ! 追いつけないニャ」
負けじと喰らいつく
必死にアクセルを踏み込み 勇気を出してインを突く
しかし攻めきれない
「逃げ上手」の危機察知能力が返って仇となり 無意識にブレーキを踏んでしまう
あと少しの勇気
その「あと少し」が困難である
やはり本職 その壁は強大だ
視界の先に居る錆び付いた車体
その物理的な距離は僅かだが 千里に等しい
その差を埋めるには……仕方ない
「あんまりやりたくないんだけどニャ」
差を埋める一手 これは賭けでもある
万が一失敗すれば死に至る
普段の逃げ上手なら絶対に取らないであろう手段
足を そっとブレーキペダルに掛け 力を溜める
踏むのではない 「蹴る」
足に溜められた力はブレーキペダルを直撃し 粉砕する
ペダルを破壊することで 止まれなく……いや
止まらなくする
この破壊は物理的なものだけではない
精神的なブレーキペダル 「恐れ」
それすらも破壊する狂気の沙汰である
それを実行したレーシャの顔には緊張はなかった
ただこの時間を楽しむ「笑顔」
「行くよ!」
もう恐れない あの男と同様
いやそれ以上の攻め
狂気と狂気のぶつけ合い
始めて 差が縮まった
ラスト 直線
横並びの形
ふと隣を見る
…ははっ そうだよなぁ…
あの男も レーサーも 笑っていた
もう勝ち負けなんかどうでもいい
だからこそ負けたくない
もう遅いのかも知れないけど
戻って来れないのも分かっているけど
「アンタは……」「テメェは……」
「「真性のレーサーだったよ」」
気づけばゴールラインを越えていた
後には あの男の車が停まっている
錆が落ち ヒロイックな赤が姿を現す
「ありがとな」
確かにそう聞こえた気がした




