Part12 ノンストップ・サーキット
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※月曜日以外毎日1話更新予定
「行くニャ!」
アクセルを踏み込むと同時にモーターは咆哮する
ギアを入れる度シートに身体が押し付けられ、景色を置き去りにしていく
この加速なら充分に追いつけるだろう
身体に心地良い緊張と興奮が滲む
かつての彼と同じ様に
「おーおーやっぱ速ぇなあの車」
南部レイズボスは走り去った方向を眺めながら言う
「いいんすか?ボス 援助金っても端金ですよ」
「へっ わかってねぇなぁ」
チッチッチと指を振りながら笑った
「俺等ギャンブラーにはな 損得じゃ片付けられねぇ何かがあんだよ」
「それは……なんすか?」
「敢えて呼ぶなら……「熱」だな それから…」
「それから?」
ニヤリと笑いながら言う
「あの猫娘が可愛かった」
「ええ……」
「俺ああいうのタイプなんだよ! 今度フィクサーの雑誌でも漁ってみるかな」
「途中までカッコよかったのに……」
「窓開けるぞ」
ターニャが窓を開け 身を乗り出す
「ちょっ 危ないニャ!」
「見えたぞ」
「何がニャ」
「アイツだ 良いから前見ろ 3時辺りの方向だ」
一応 目を凝らす
確かに土煙が上がっている
微かに排気音も聞こえて来た
「追いつけるニャ」
アクセスを踏む足に 一層力が籠る
「全速前進じゃ!」
レーサーを追って辿り着いたのは 「心象空間」
強すぎる自我が周りの空間に影響を及ぼした空間
そこは…サーキットだった
誰も居ない 静かな空間
ふと脳内に記憶が流れ込む
子供達の声援に応え、サインを書いてやる手
ライバル達とコンマ1秒を競った車体
誰よりも爽やかな笑顔を浮かべる顔
そうだったな……
ここが……
この舞台なら……
俺はヒーローだったんだ
不意にレーサーの車が停止する
スタートラインの前で
「なるほど…ニャ」
ならば……答えてやるのが筋だろう
2台の車が並ぶ
観客も、旗手も、キャスターも居ない
でも……それでいい…
例えもう戻れなくても 止まれなくても
世界で最も身勝手なレース
ただ1人の男の為のレース
満足するまで走ろうぜ
もう戻れない道でな




