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救いなき世界の裏路地で  作者: 案内人
第2章「ノンストップ・サーキット」
26/35

Part10 止まった者の思念回廊

超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。

金さえあれば永久が手に入る時代

然し、当然利益ばかりではない

表世界で人々が自適に暮らす間

裏路地では1人が死ぬ

残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です


※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます

※日曜日以外毎日1話更新予定

レーサーの思念回廊


そこは殺風景な部屋


白い壁とテーブルが一つ 家電はテレビのみの簡素な部屋


「…点けてみるかのぉ」


チャンネルを取り 点ける


テレビは繋がらず 砂嵐が映るのみだ


とあるチャンネルを除いて


そのチャンネルでは あるニュースの特集が放送されていた


「悲劇のレーサー 激走の記録」



明るいオープニングの後 ニュースが始まる


しかし何かがおかしい


「……仮面か…」


キャスター ゲスト アナウンサー


全員揃ってやけにリアルな狸や狐の面をつけている


恐らく罹湾者の思念によって見え方が歪んでいるのだろう


思念回廊から外部を覗くとき よく起こる現象だ


罹湾者の思念の源流なのだから 当然罹湾者のフィルターがかかる


割れ、歪み、ひび割れたレンズで外界を望めば そうなるのは必然だ


天気予報や時事、エンタメなどの内容の後 特集が始まった



さて 皆様ご存知あのレーサー 「ファスト」


彼の衝撃的な引退から実に一年が経過しました


ここでは その歴史を一挙プレイバック


さて それでは見ていきましょう!



2〓〓〓年 彼はレースの世界に踏み込みました


裏路地出身の境遇も相まって人気を集め 期待の新星としてプロデビュー


瞬く間に勝利を重ね 最高リーグへ登り詰めました


しかし 迎えたグランプリファイナル


彼に悲劇が起こります



アナウンサーの声が低くなる



ライバルの車両と不慮の接触 手足を失う大怪我を負いました


彼は引退を余儀なくされたのです


それ以来 彼の消息は不明 姿を消しました



……かつては人気者だったのだろう


娯楽や俗世に疎いリウの耳にも入る程にその活躍は連日放送されていた


湾曲の要因は不幸な事故によるショックと夢を諦めなくてはならなかった絶望だろうか


そう考えた所で スタッフ達の仮面が落ちる


全員の顔に浮かんだ表情は……笑み


それもどこまでも歪んだ醜悪な笑い


そして彼等の後ろに1人の男が見える


「あの顔…見覚えが……」


俯いた暗い顔 よく見ると手足はない


元「期待の新星」その者であった


彼はゆっくりと語り始める


「悲劇の裏側」を



……なぁ…お前…俺のこと 知ってるか?


そうか……良かった…でもな


誰も俺のことを知らないんだ…本当は…


皆不幸な事故だと思ってるだろ?


この世界にはつきものな悲劇だと思ってるだろ?


信じちゃ貰えないかもしれんが……


ありゃ事故なんかじゃない


なぁ…俺は…はっきり見たんだ……


あの屑…確かどっかの企業理事だった…


アイツが金を渡してるのを…


「潰せ」って囁くのを…


おかしいと思わねぇか?


こっちは大怪我 向こうは無傷だぜ?


…ははっ…「まだなんとかなる」だって?


いいよ…もう…いいんだ…


あの日で…あの日で俺の人生は止まったままだ…

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