Part9 雨垂れ石穿つ
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※日曜日以外毎日1話更新予定
上からリウの合図が飛ぶ
優しく、しかし腹から出た声である
「ターニャ!抑えるんじゃ!」
その声に即座に反応し、動く
突進に合わせて自身も構えを取る
レーシャと同じく呼吸を整え 相手に過集中していく
しかし 避けない いなさない
「受け止める」
「淵龍拾伍式奥義「明鏡止水 戦狼」」
水は 決まった形を持たない
それをモチーフとする淵龍式も同じく 決まった形を持たない
使用者という器に合わせて柔軟に形を変え
用途、環境によって流れを変える
ある意味ではオーダーメイドとも言えるだろう
故にターニャの淵龍式はまるで激流の様
強く 激しく 真っ向から叩き付ける
彼女の言葉に合わせるならば「性に合う」らしい
極度の集中により眼は「隙」を捉える
最も力を加えやすい点を掴む
最も受け止めやすい瞬間を感じ取る
迫るモーター音 上る土煙
怯まない 退かない 唯待つ
「ソコダ!」
咆哮と駆動音がぶつかり合う
爪とタイヤが互いに地面を蹴る
肉と金属の間に拮抗が生まれる
完全に勢いを殺され タイヤは静止する
「イマダゾ ジジイ」
「良くやった ターニャよ!」
リウが静止したボンネット目掛けて飛び込む
空中にて拳を固め 構えを取る
「淵龍弐式「流水降山」」
山を降る水の様に
落下の勢いを力に変え 叩く
激しく金属音の後に ボンネットが少しへこむ
「貫けぬか…なら…」
再度拳を持ち上げる
「淵龍拾壱式「雨垂石穿」」
例え雨の様な威力でも
いつか石を穿つ
ただ 一点に集中する打撃
目にも留まらぬ速さで へこみを突き続ける
連続した金属音が響く
「ここだ」
一際力の籠もった拳がボンネットを打った瞬間
穿つ
呼吸を整えるリウの先には ボンネットに空いた黒い穴
思念回廊へと繋がる門
迷いなくリウは飛び込む
如何にしてこの男は湾曲したのか
車の中
運転席には1人の男
欠損した手足
その顔は かつての英雄
期待の新星 最速レーサー
いや 「だった者」が俯きながら座っていた




