Part1 陰鬱な日常とささやかな幸福
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※月曜日以外毎日1話更新予定
「待ってくれ!頼む!」
男が泣き叫んでいる
その前には 緑の目をした青年
手には大剣を携え、いつでも男の首を落とせるよう構えている
「すぐに武器を捨て 降伏して下さい」
青年は警告する
「わ…わかった…!」
男は手に持つ剣を捨て、両手を上げる
青年も構えを解き、男に語りかけながら足を進める
「僕は街灯協会所属5級便利屋のエフィルです」
便利屋とは、裏路地の普遍的な職
協会に属し、依頼を受け、それを遂行する
依頼は多岐に渡る
逮捕、押収、戦闘、探索、そして殺人…
「貴方には依頼規約違反により指名手配がついています」
エフィルは淡々と言う
「…」
「よって貴方を拘束し…/っ!?」
少し迂闊だったようだ
男が抵抗して来る可能性を考えなかった
「油断したなァ!」
男は懐から隠し持っていたナイフを取り出す
「死ねェ!!」
ナイフが首筋に向かう
「クッ…」
エフィルはギリギリで躱す
掠めた刃が頬に赤い線を引く
エフィルは避けた勢いを使い、一閃
加速が乗った大質量が男の脂肪を、筋肉を、臓物を、背骨を切り裂く
「あ…ああ…あ…」
男の口から血が飛び出し、下半身とお別れした身体が地に着く
男は這いつくばり、涙と血を流し、最期の抵抗を始める
命乞いを…
「た…頼む!…い…い…命だけは…」
「…」
「待ってくれ…!嫌だ…死にたくな」
男の号哭は鉄の音に断ち切られた
風切り音がした後、血と脳漿が飛び散る
大剣は正確に男の頭を両断した
その刃に…迷いはない
生きる為なら…
「…やっぱり慣れないな…」
エフィルは息を整える
身体に気怠い疲労感が染みていく
「…ごめんなさい」
「あまり気にするな 帰還しろ」
エフィルは帰路につく
「あの人」がいる場所へ
エフィルはトボトボと足を進める
最悪な気分だ
こんな時は、早く「家」に帰るに限る
「はぁ…今日の夕飯は何かなぁ?」
エフィルが足を止めたのは小さな建物
古ぼけた扉の横にはこう書かれている
「街灯協会」
ここがエフィルの「家」であり唯一の「安息の地」だ
「おかえり エフィル…疲れただろう 今日の事は…まぁ…気にするな」
老人、白髪と皺、古傷が生きてきた時間を感じさせる
その身体にはしっかりとした筋肉
肩には巨大な巨人狩り
体格はかなり良く、威圧的だ
しかし彼に会った者は皆言う
「彗星都市では珍しく「優しさ」を持つ」と…
彼はサルヴァドール 街灯協会長でありエフィルの親代わりだ
「それと怪我をしてるみたいだな 二段目の抽斗に応急パッチがある 貼っておけ」
エフィルはソファに倒れ込むと息を吐く
暫く心地よい革の質感と脳に貼り付いた微睡みに身体を預け…
「エフィルさん!帰ったなら言って下さい!」
預けるところだった
「?…ああなんだエアか…」
「あっ!?怪我してる!」
エアと呼ばれた少女はエフィルの顔を覗き込み、言う
彼女の肌は白く、人形の様だ
いや 暖かく、人間の様だと言うべきだろう
「少し良いか?エア」
「?なに〜!?」
サルヴァドール「いつもの定期検診だ 明日にでも視線協会に行ってきてくれ」
エアは頷く
「ライツさんも心配性ですね」
「あいつなりの気遣いなんだろう」
彗星都市は残酷だ
然し捨てたもんじゃない
サルヴァドールの様な善人がいる限り
街灯は今日も彗星都市を照らす




