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救いなき世界の裏路地で  作者: 案内人
第1章「ロストワン」
12/36

Part5 覚悟

超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。

金さえあれば永久が手に入る時代

然し、当然利益ばかりではない

表世界で人々が自適に暮らす間

裏路地では1人が死ぬ

残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です


※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます

※日曜日以外毎日1話更新予定

シリウスがレバーを引き、ギアを上げるたび身体がシートに押し付けられる


「捕まってくだサイ!」


カーブの度、シリウスはスレスレを通過していく


時には車体を投げ出してドリフトすることさえあった


モーターの咆哮を響かせながら血溜まりを辿る


急がなくては


大切な人(エア)を守る為に



「…ライツさん 逃げてください」


いつにもなく真剣にエアは言う


「出来るわけ無いだろ」


「時間が無いんです!」


エアドローンが破壊された時点で エアは気づいていた


もうすぐ奴がここに来る


なら…せめて…


「逃げて」


「娘置いて逃げれるかよ」


「なら…」


エアは何かを思いついた


「ッ!?あんた…」


エアは拳銃を取り出し ライツに向ける


「逃げなさい」


「ははっ…」


ライツは「そうか…」という様に頷くと扉に向かう


「あんた 死ぬなよ」


去り際にライツは言った


「…」



答えられなかった


覚悟を決めよう


私だけで済むなら



「!見えた」


エフィルが指差す空


遂に湾曲体に追いついた


「使ってくだサイ」


シリウスは拳銃を差し出す


ノウルが受け取り 構える


「任せろ」


狙いを付け 引き金を引く


火薬の香りと炸裂音が広がる


弾丸はたしかに湾曲体の胴体に命中する


しかし小さい拳銃弾一発程度では止まらない


不意に湾曲体は何かをこちらに落とす


「瓦礫だ…来ます!」


瓦礫をこちらに落とし、進路妨害を図ったのだ


「私が!」


ミラは首筋 古い火傷に手を当てる


「安息を…我が道に安寧を…」


ミラの周りを光の粒子が包む


ID(イド)解放」


ミラの周囲 車を包むようにハニカム構造の球体が現れる


「…バリアって事ですか」


バリアは降りかかる礫を弾き、車を守る


ミラのID(イド)「安寧」


自身がかつて持ち得なかったもの


今は ただ「守る為」に



しかし健闘虚しく湾曲体は距離を離していく


「クソっ…これじゃ…」


全員の脳裏によぎる最悪の可能性


「間に合わない」


「…来ましたね…」


エアの視線の先 こちらに向かってくる黒い影


後2分と言った所だろう


「…この命も…拾われたものです…」


エアが言い終わる前に耳を劈く衝撃音が響く


硝子が割れ、壁が砕け、本が散乱する


「ふふっ…ようこそ」


異常に落ち着きを払った声で言う


この時のエアの精神は 恐れや絶望の向こう側である


湾曲体の爪が身体を裂く


エアは意にも介さず歌うように唱える


「せめて…届いて ID(イド)解放」


エアのID(イド)「通信」


誰かに自身を「伝えたい」


周囲の星屑(スターダスト)が共振を始める


エアの身体から星屑(スターダスト)の結晶体が飛び出し湾曲体を貫く


湾曲体は痛みから暴れ出す


乱雑に振り下ろされる爪


その全てを受けながらエアは歩く


構造上の限界など既に超えている


遂に湾曲体の元に辿り着いたエアは…ECHO(エコー)は肩から右腕、顔の左半分、胴体の中心が欠損し 見るに堪えない姿である


しかしエアは不敵に笑い 湾曲体に触れる


「チェックメイトです」


その言葉を合図にしたように湾曲体の体内から数多の結晶体が飛び出し、拘束する


「!…!…!…!」


エアが意識を手放す直前 覚えたのは


安心感と、罪悪感である


(ごめんなさい…ライツさん)


駆動音


視線協会大書庫に突入した一行が見たのは


結晶体に拘束された湾曲体と破壊されたECHO(エコー)である


「エア!エア!?」


サルヴァドールが呼び掛ける


応答はない


「クソっ!…俺が…俺が…」


「サルヴァドール公 冷静二」


何とか心を鎮める


「なら…せめて…」


サルヴァドールは巨人狩り(ツヴァイヘンダー)を湾曲体に突き刺し、梃子の原理で広げる


開いた穴からは光の粒子が舞い散る


「行け!」


サルヴァドールが叫び、エフィル、ミラ、ノウルが穴に向かう


湾曲体を回帰させる為に


少しでも幸せな結末(ハッピーエンド)に近づけるために


「エア…ちょっとだけ…待っててね」


微かに、ECHO(エコー)が光った様に見えた

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