Part4 無意識
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※日曜日以外毎日1話更新予定
「これが今回の鎮圧対象か」
サルヴァドールは穏やかな 同時に冷たさを孕んだ視線で湾曲体を見る
「はぁ…」
サルヴァドールはゆっくりと背中の巨人狩りを構える
ゆったりとしながら 隙の無い構え
長い呼吸
「…」
目を瞑り 無言の儘 一閃
湾曲体は何故か動かない 「反応出来ない」
これが…「無意識」
ある道を極めた者
幾度と無く修羅をくぐった者
幼少から鍛え上げられた者
生まれながら「才」を持つ者
都市に置いて「強者」と呼ばれる者達にはある力が備わっている
「無意識」
IDと対極にある技術
自我を、意識を排し ある意味では仮死状態の様になる
修羅をくぐった経験が、本能が、身体を動かす
無意識であるが故 攻撃に「起こり」が存在し得ない
何より感情を無くし、油断や情による加減も行わない
使用者は唯戦う為の兵器となる
サルヴァドールは淡々と斬撃を浴びせ続ける
重たい金属音と風切り音 肉の音だけが裏路地に響き渡る
反応出来ないのだから成す術はない
脚、右腕、胴、背、肩、腹、
湾曲体のあらゆる部位から粘性のある液体が噴き出す
「!…!…!」
湾曲体が再び咆哮する
しかしその声は威嚇ではない
苦悶の絶叫である
その隙を歴戦の老兵が逃す筈無かった
より力の籠もった腕が、足が、腰が、サルヴァドールの鍛え上げられた身体中全てが駆動し 巨人狩りを水平に薙ぐ
音が止まる
次の刹那 大量の血飛沫が舞い、壁を濡らす
巨人狩りが湾曲体の両足
その肉を、健を、髄を切断する
「!…!…!」
サルヴァドールは倒れた獣に
無心、無我、無慈悲に歩き寄る
巨人狩りを その巨大な刃を大上段に構える
この大質量に掛かる重量 サルヴァドールの筋力、技量 砥がれた刃の切断力を持てば
たかが獣一匹の首を落とすなど造作もない
刃がギロチンの様に落とされる直前
湾曲体が目を開く
斬られた足で無理矢理飛び上がる
その身体は重量に従い 落ちる筈だが…
湾曲体に変異が起こる
肩甲骨が嫌な音を立て 変形する
鮮血を噴き出しながら骨が伸び、神経と肉が周りを覆っていく
肩があったそこには
血塗られた一対の翼
グロテスクな「肉の翼」があった
そのまま湾曲体は空へ羽撃く
空中で爪を振るう
狙われたのは…
「!?何故!?」
エアドローン
湾曲体の瞳 心の動きを見る瞳
その瞳には 今最も感情が動いているもの
3人が相次いで重傷を負うこの戦いで
一人一人倒れていく絶望
自分は何も出来ない焦燥感
見えない勝機
平静を保てとは酷だろう
その瞳には
視線協会にてサポートをしている機械義体
その姿が確かに映っていた
湾曲体は大きく羽撃き 進路を変える
「…まさか…」
サルヴァドールも気付く
「あの方角には視線協会が…」
エアが危険だ
しかし どうすれば…
突如 スーツ姿の男が現れる
胸には特徴的なA社のロゴ 腕には腕章
「お困りですかカ?」
シリウスは大袈裟に周りを見渡す
「重傷者3人 これはいけませんネェ…」
シリウスは懐から小瓶を取り出す
星生社製アンプル
平たく言えば回復、再生薬だ
適量さえ守れば、大抵の傷は治せてしまう
シリウスは慣れた手つきで中身を3人に注射していく
「…うう…ここは…?」
エフィル、ノウル、ミラの3人はハッと起き上がる
「生憎説明してる暇は無い エアが危険だ」
それだけで 3人は理解する
サルヴァドールがここまで焦るのを目にするのは始めてだ
「…仕方ない様ですネェ」
シリウスが何やら操作すると 突如空間に亀裂が走り
車が現れる
シリウス「私の愛車です お乗りくだサイ」
全員が乗り込む
幸い湾曲体の通った後には血溜まりが出来ている
辿れば追跡可能だろう
「先程のアンプル分の活躍を見せてくださいネェ」
シリウスがアクセルを踏む
身体にGが掛かり シートに押し付けられる
追跡戦開始




