Part3 サトリ
超巨大企業による先進技術「星欠片」により、世界は大きく変化した。
金さえあれば永久が手に入る時代
然し、当然利益ばかりではない
表世界で人々が自適に暮らす間
裏路地では1人が死ぬ
残酷な彗星都市で自我を叫び、泥臭くとも生きる者たちの話です
※流血描写、グロ描写、鬱展開を含みます
※日曜日以外毎日1話更新予定
「ノウル 合わせてください」
グレイブを握る手に力が籠る
ミラが右 ノウルが左から走り込む
左右からほぼ同時に攻撃 反応等出来るわけが無い
だが…
「っ…!?」
「それ」は異常な反応速度で爪を振るう
火花が散り 2人の武器が弾かれる
ノウルの顔が動揺で歪む
「こいつ…どうなって…!?」
言い切る前に「それ」が動く
爪が振り下ろされる
「ノウルさん!」
ノウルの肩から赤が噴き出す
「…クソ…」
ノウルは一度 「それ」を観察する
落ち着け俺 冷静に…
「ん?」
違和感
「まさか こいつ?」
常に動かない目線
正面だけを見据える頭部
少しふらついた足回り
そこに見出す勝機
「ははっ…」
疑念が確信に変わる
「おい ミラ エフィル エア よく聞け」
ノウルの口に不敵な笑みが浮かぶ
「こいつ 目見えてねぇぞ」
盲目
ならこの反応速度は何故?
「これならっ どうですか!」
「それ」が爪を振るう隙を狙った一撃
何より最速に近い一撃
至近距離での乱打
その悉くが弾かれている
こちらにも 疲労が徐々に嵩んでいく
流れを変えなくては
「…すみません」
ミラは近くに落ちていた瓦礫
戦闘中に破損した壁の一部だろう
それを拾い上げる
「「賭け」にでます」
ミラは瓦礫を投げる
瓦礫は放物線を描き 「それ」の背後に落下する
瓦礫が砕け 音が鳴る
そのタイミングに合わせ ミラが前に出る
「盲目である以上 頼る感覚は…」
ミラがグレイブを振るう
「「音」の筈!」
「それ」が聴覚に頼っているなら 瓦礫の音で撹乱出来るはず
「え?」
然し 「それ」は…
瓦礫の音には目もくれず
ミラのグレイブを弾いた
「読みが外れた…か…」
ミラの身体に赤い線が引かれる
袈裟懸けの様に爪が抉る
「ミラさん!」
「仕方ないな やるか」
ノウルが額に手を当てる
「智慧の輪の完成を…」
ノウルの身体を光の粒子が包む
「ID解放」
完璧な本解析開始
頭の中に情報が流れ込む…
筈だった
ノウルの視界が歪み 頭の中に青写真が浮かぶ
余りにも凄惨な青写真が
「お前…なんか…産…なければ…良」
「口答…する…生意気…だ…」
「消え…しまえ」
「お前…家の子…じゃ…無い」
「早く…しろ…」
「また…殴…たいか?」
喜怒哀楽
「もっと…出来…だろ…!」
虚怒哀楽
「すぐ…泣く…な!弱虫…」
虚怒虚楽
「そんな事…しても…意味…無…」
虚怒虚虚
「生意気だ…!」
虚虚虚虚
「こころがほしかった」
ノウルは余りの精神的負荷に意識を失う
薄れる視界の中で何とか紡いだ言の葉
「あいつ…反応して…心…」
「…!ノウルさんまで」
心
攻撃前の気の昂り
被弾時の焦燥感
この「それ」は心の揺らぎにに反応している
東洋に伝わる心を読む怪物「サトリ」
サトリを殺すには「偶然」「無意識」しかない
然し人間には偶然を操る力など無い
但し「無意識」なら…
「エア… 呼んできて…」
「!」
エアドローンが離脱していく
ミラは重症 ノウルは気絶
1人で耐え切るしかない
「命の赤よ…巡れ ID解放」
圧倒的劣勢
でも やるしかない
「生きるために」
エフィルは必死にデオルを振るう
IDを発現した時点で精神は昂る
故にこの攻撃では「それ」に反応される
しかし 狙いは撃破では無い
「あの人」が来るまでの時間稼ぎだ
「はぁ…はぁ…」
疲労しきった身体を無理やり動かす
身体が重い
腕を持ち上げることすら遠い
でも…止まれない
「!?」
エフィルの手からデオルが弾かれる
視界を戻すと 目の前には「それ」の口
巨大な牙が乱立し
まるで断頭台の様に振り下ろされる
間もなく首は 胴と別れを告げるだろう
金属音が響く
「…何とか…間に合いましたね…」
「良く耐えたな」
エフィルが目を開けるとそこには…
サルヴァドール その背中だった
反転攻勢 開始




