表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/113

第90話:行き着いた先にある場所


 通路を進んだ先にあった階段を下ると、設置された障壁にぶつかる。

 他の場所にあったものと違うのか、先が見えず白い障壁。


 それを前にして立ち止まるなんて事はなく。

 ルイスさんが問答無用で障壁を超えたので、全員で急いで後を追う。


 障壁を通り抜けた途端に、視界がいっきに明るくなった。


 最初に見えたのは、卵型の薄青い障壁。


 それが部屋の中央に置かれ、床から根元が離れてている木が少し浮かんだ形でその障壁内に取り込まれていた。そのまま伸びた木は、この部屋に来る前に見ていた状態と似たような形をしており、枝が平たく広がる上には、それに乗っかる様に街をぐるりと囲っている壁が青い状態で見えている。


 その壁がある場所は、手が届かない程度には高く。

 街の内部まで、この青い光で再現されているかは確認出来ない。けれど、この装置が街とそれを覆う障壁を小さいスケールで再現しているのは間違いなかった。


 ――そして障壁から飛び出している木の根の更に下に、この装置の要となっているコアと共に、円形の階段状になっている床に描かれている刻印を目にする。


「凄いですね、此処」


 魔道具。

 そう呼んで良いのかすら分からない規模で、部屋全体に刻印が施されている。


 部屋の中央に置かれているコアに至っても、私とノエルさんがダンジョンで手に入れた物よりは少し小さい筈だ。それなのに、これだけの規模と強度を維持している事に驚かされてしまう。


「王国はいつの間に、こんな技術を手にして……」


 ノエルさんがそっと呟きながら、壁にも描かれている刻印に手を触れさせながら見入る様に歩き始めていた。


「全くだ、これが攻撃に転用されなかったのは、救いか、過ちか、考えたくもない」

 

 私ですら知らなかった事実。それを他国という視点でずっと見てきてノエルさんや、ルイスさんが手放しで凄いと喜ぶのはどう考えても無理というものだ。


「ノエルさん、あっちに部屋があります」


 私が少し横にそれると、中央にある装置で見えていなかった部分に部屋が見える。

 そしてその木の扉には、打つ付けられた一枚の紙切れがあった。


 それに自然と私達が近づいて行く。

 けれど近づくにつれ思考が物凄い勢いで回り始めてしまう。


 どうして考えなかったのか。

 この場所、この街に張られた障壁は、一度入ると外には出られない。

 それは屋敷に入る時も、地下空間に入ってからもずっと続いていたのに。


『辿り着いた貴方に、託します 』


 そう書かれた張り紙を前にして、自然と立ち止まってしまう。


「今日で、何日目でしたか」


「いつ入られたかにもよるけど、二週間以上はこの空間に居る筈だよ」


 木の扉に設けられたドアノブに、そっと魔力を流しながら手を触れさせる。回したドアノブは意図も容易く動き始めるも、魔力が反対側に届くと私は手を止めていた。


「クローディア?」


「ノエルさん、開けるのは止めましょう」


 例え保存食があっても、いつまで待てば良いのか分からない場所で陽の光もなく待ち続けるのは、殆どの人が無理と言ってもいい。


 最期がどうだったかは分からないけど、

 もうこの向こう側の空間には、生きて魔力を発している存在はいなかった。


「わざわざ扉に張り紙もしてあるんです、中に入っても何もない筈です」


「君がそう言うなら、僕はそれで構わないよ」


「こちらも同じだ。好きにしろ」


「ありがとうございます」


 私が王国側の人間だからなのか。

 ノエルさんだけでなくルイスさんも、すんなりと同意してくれる。


 そのままルイスさんは離れ、ノエルさんは私の少し後ろで立ち止まっていた。

 そして私は、扉の前に立ったまま静かに手を合わせ始める。


 もし何かが違っていたら、なんて事は考えない。


 ただ、

 ――私のせいで「ごめんなさい」


 街に来るのが遅れたからではない。

 私が王国側に居なかった結果として起こった事だ。


 その居なくなった理由がどうでも、結果は残り続ける。

 だからと言って私が引きずるのは話が違う。


 貴方がこの街を守ると自分で決めたように、

 ――この街に残ってる人達は「私が助けます」



 お互いが、やりたい事を勝手にやる。



 それで怨みっこなしです。


「怨みっこ、なしですからね……」


 重厚感もない木の扉が、何かを発している気がした。

 もちろん気の所為だろうけど、勘弁してほしい。


 私を呪って良いのは、失敗した時だけだ。

 その時はどうぞ、好きなだけ怨んでください。


 どうせ私も――自分を許せるかなんか、分かんないですから。



 そのまま数秒が経ち、

 もう一度だけ目を瞑った私は、そっと振り返った。



「もう良いのかい?」


 後ろで待っていてくれたノエルさんに、私は少しだけ表情を緩めて答える。


「はい。バッチリです!」


「でも一つだけ良いかな?」


「どうか、しましたか?」


「街の方々は、僕達で助けるつもりでね。だって君は、一人じゃないよ」


 緩めた表情が、そのまま崩れてしまいそうだった。


「はいっ。そうですね、私達で助け出しましょう」


 気づかない内に一人で抱え込んでいた重荷が外れ、だいぶ肩の力が抜けた気がする。


 だからか強張っていた手足からも力が抜け、身体が前に倒れてしまう。

 けれどそれを、前に出てくれたノエルさんが支えてくれる。


「すみません。魔力を慣れない使い方しちゃったみたいで……」


 魔力が全快していない状態で瞬間的に魔力を放出した反動が現れ、僅かに震える手足には思うように力が入らず、どうする事も出来ないまま私はノエルさんにもたれかかっていた。


「少し、休もうか」


「すみません……。そうさせて、いただきますね」


 手足が思うように動くまでは、休ませてもらおう。

 そう考えた私はノエルさんの提案を受け入れ――少しだけ回復に専念するのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ