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第79話:魔力を奪われて


「どこを歩いても、同じ場所に思えますね此処は」


 確かに違う場所を歩いている筈。

 そんな意識の元、私達は――壁に閉ざされていた場所を進んでいた。


 ちなみに私の頭部は、少なからずダメージを負っている。

 それもこれも、迷路なんて壁を歩けばとか言って飛んだのが悪い。

 何もない筈の壁の上部に見えない障壁があるのか、途中で頭をぶつけ地面に押し戻されていた。


「少し休もうか?」


 頭を片手で抑えていた私を見て、ノエルさんが横から覗き込んで来る。


「いえいえ、これぐらい大丈夫ですから!」


 少し痛いけど、これ以上足を引っ張る訳にはいかない。

 ただでさえ、魔術が使えない私のせいで負担が分散している。


 そんな状態で、いちいち止まってたらキリがないし、申し訳なさすぎる。


「いちいち、待つ気はないぞ。さっさと歩け」


 小言を言ったルイスさんが私を追い越していく。

 それを見ていた私は、握りこぶしを作っていた。


 子供だからって、言いたい放題言ってくれちゃって……。

 魔術が使えなくてもあんたぐらい、一捻りして頭撫でてやれるんだからね……。


「ふんっ」


 振り向いたルイスさんが鼻を鳴らし、直ぐに前に向きなおった。


「ノエルさん……。ちょっと私、行って来ても良いですか」


「……出来れば、止めてほしいかな」


 軽く手で静止され、私の行くてをノエルさんが阻んでくる。

 しかし、こう何度も突かれては笑えない。


「おい、早くしろ。はぐれても知らんぞ」


 覚えてなさいよ……。

 魔術が戻ったら、空中に浮かべてぐるぐる回してあげるからっ……。


「ふぅ……よし。行きましょうノエルさん」


「収まったみたいで、良かったよ、うん」


「何言ってるんですか、今度やったら、許しませんよ」


 一人で納得して、私は先に進むルイスさんとテレンスさんの後を追う。

 けれど、進んでも進んでも道は殆ど変わらない。


 行き止まりにも当たらないのだから、不自然と言えば不自然だった。


「こっちで、あってるんですか?」


「歩いとけば、そのうち着く」


「もしかして来た事とか、あるんですか?」


「そんな訳ないだろ。知ってたら、こんな面倒な事になってない」


 でもルイスさんに、迷っている気配はない。

 どうしてだろう……。


 まるで道を知ってるかのように……知ってる? 

 だとしたら、もしかして落下の時に覚えた?

 もう、そうとしか考えられない。


 左右と直進分かれてる道を、ルイスさんは迷うことなく何故か右に曲がった。

 本当にこの道が当たっているのかは別問題だけど、行き止まりらしき箇所も確かにあった筈の場所でそれに当たらないんだから、確信を持って進んでいると思って間違いない。


 そのまま平面だけかと思っていたら、どんどん前を歩くルイスさんの位置が高くなり、緩やかな坂道をのぼって行く。


「何だ、じろじろと人の事を見て」


「道。覚えてるんですね?」


「誰がそんなこと言ったんだ?」


 そう言いながらルイスさんが進むと、少しひらけた空間に私達はたどり着いていた。


 ――四方を長い壁で囲われた場所。

 その壁には私達が入って来た道も合わせ、それぞれ一本ずつ道があり、部屋の中央には噴水が置かれていた。そこから周囲に溢れ出し水が、噴水を中心にして緑の足場を部屋全体に広げている。


 ルイスさんは足元が変わる直前で立ち止まり、代わりに追いついた私が先に足を踏み入れた。

 積み上げた草を踏んだような柔らかい感触が足先から伝うも、水気は感じない。


「こんなに水が溢れてるのに、足元はそんなに濡れてませんね」


「ここを抜けた先だ、行くぞ」


 やっぱり私って、安全確認要員だったんだ。

 先を行くルイスさんを見て、なんとも言えない気持ちになってしまう。


 まぁ、これぐらいは喜んで引き受けますけど……。

 せめて一言ぐらいは、というか。

「やっぱり、道覚えてるんじゃないですか」


「覚えてない奴が居るなんて、思う方が無理だろ」


「いやいや、私はあの時、衝撃を――」


 ルイスさんを追っていた身体が、自然と脱力してしまう。


「あれ……何これ――」


「クローディア?」


 同じように続いたノエルさんが心配そうに私を見て、前に居るルイスさんや、テレンスさん。一番後ろにいるアレクシアさんまでもが私の事を見ていた。


 皆は平気そうで、私だけが――。


 ふらついた私の視線が地面に流れる。

 他四人と変わらない緑の植物達。


 けれど、私の足元だけ――異常に植物が盛り上がっていた。


「こいつら魔力を――」吸い取って……。


 足から力が抜け、膝が言う事を聞かず折れ曲がってしまう。


「クローディア!」


 ノエルさんが慌てて近づこうとするも、足元の植物が伸びそれを阻んでいた。


「ノエルさんっ……」


 手を伸ばしてもまだ遠く、届きそうにない。

 身体が不自然に下がり再び下を向くと、膝から下が――植物に飲み込まれていた。


「この――!」


 抜け出そうと素手を下に叩きつけて身体を上げようとするも、びくともしないまま私の身体は下に向かって引きずりこまれてしまう。


「テレンス!」


 離れた場所でテレンスさんが同じように身動きを取られ、身体が沈み始める。

 そんな状況で、ノエルさんが私を助けようと近づいていた。


「クローディア、今は助けに」


「来ちゃ、駄目ですっ!」


 私の声でノエルさんの動きが僅かに止まるも、直ぐに動き出そうとする。けれど、その一瞬に沈みかけていた私の身体は完全に地面に飲み込まれ――視界を暗く閉ざしてしまった。



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