表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/114

第74話:戸惑い


「どうしてこんな事に……」


 少し離れているも私達は、街の人と一緒に広場で座っていた。

 そんな私の前には今――良く分からない食べ物が置かれている。

 これは……その、失敗したとかじゃない。

 そう思いたかった。


「すみません……皆さん」


 座ったまま、近くに居るノエルさんやブレンダさん達に謝る。

 私が手伝ったのは、もちろん私達が食べる分だけだ。

 街の人が食べる分は街の人達が作ったり、料理がちゃんと出来る団員の人が作業した。だからこそ人手が足りず、後回しになっていた私達の分を殆ど私が料理したとも言える。

 

「少し水分が飛んだだけだから、平気だよ」


 そう言ってノエルさんがシチューっぽい物を食べ、私も同じように口にする。

 口から水分を奪い去ってしまう何故か硬い食材は、噛めば不思議と口の中で崩れながら更に水分を奪い取っている。


 確かにノエルさんの言う通り、少し火加減を間違っただけとも言えなくはないのかもしれない……。


 こう……火の魔術を使ったら、何故かいつもより鍋が火を通し、私も戦ってばかりで火力が違ったのか少し強火になってしまった。


「食材が、火に弱かったんですよ!」


 私がそんな事を言うと、ブレンダさんが姿勢を正してから口を開いた。


「道中、適切に食材を管理出来ておらず、申し訳ありません」


「違いますよ、ブレンダさんのせいじゃ……」


 じゃあ誰のせいだと言われたら、間違いなく私だ。


「本当に、すみません……」


 何かを言われる前に、私は再び頭を下げていた。


「気にしないで。魔術と同じように、何度でも挑戦すると良いよ」


「ありがとうございます、ノエルさん。でもそれは、帝国に戻ってからにしますね」


「楽しみにしてるよ」


「任せてください。今度こそ、まともな料理をお出ししてみせますから……!」


 次作った時にこれよりも美味しい物を作る為にと、私は自分で作った料理の味を覚えようと更に食べる。というか、食感を気にしなければ、そこまで食べられない物でもないと思えてしまうのは、私が作った本人だからだろうか。


 やはり、料理の奥は深い……。

 そう強く思っている時だった。


 ――少し離れた所でご飯を食べていた小さな子供の人影が、私達の所に向かって歩いて来る。


「あの……っ」

 近づいて来ていたのは、マルレーネちゃんじゃなく弟のマルレーンくんだった。

 私が過去にお菓子をあげたのは、多分マルレーネちゃんだけな……筈。さっき聞きそびれたけど、一緒に貰っとは言ってなかったよね。

 いったいどうしちゃったんだろう。


「マルレーンくんだよね。何かあった?」


「……いつになったら、魔物が居なくなるの?」


「居なくなる?」


「……うん」


 魔物が居なくなるって、何の事だろう。

 いつになったら、助けてくれるかと聞かれたならまだしも、魔物が居なくなるか……。もしかして私達の任務は、救助じゃなくて殲滅だったのかもしれない。


「どういう事か、聞いてもいいかな」


「だって、お菓子の人は、魔物を倒しに来たんじゃないの?」


「ううん、私は皆を助けに来たんだよ。一緒に違う街に行くの。大丈夫、魔物なら私が追い払うから移動中は安全に――」


「嫌だッ!」


「えっ――」何で!?

 訳も分からず、私は慌ててノエルさんたちの方を向いてしまう。


 どういう事ですか、ノエルさん。

 私達は救出であって、殲滅の目的で来た訳じゃないんですよね!?


 そんな私の思考が伝わったのか、ノエルさんが木のお皿を置いてから、そっと近づいて来てくれる。そのまま歩いて来たノエルさんは、立っている子供の目線に合わせるように膝をついて屈んだ。


「君は、この街が好きなんだよね?」


「……うん。皆と一緒に居られるから」


「大丈夫。皆と一緒に居られるようにするから、安心して」


「ほんと? 街から出て行った皆とも?」


「この街でかは分かんないけど、今居る皆とも、先に出て行った子達ともまた会えるように、僕の方から偉い人に頼んでみるよ。いいかな?」


「皆と一緒になるなら……」


「任せて」


 少し納得したのか、マルレーンくんが小さく頷いていた。やはり、お菓子の人よりも王子であるノエルさんの方が色々と安心感があるのだろう。


「もぉマルレーン! 何してるの」


 声が聞こえた方を見ると、マルレーネちゃんが立っていた。

 居なくなったマルレーンくんに気づいて慌てて探し始めたのか、その手には木のフォークが握られたままだった。


「お姉ちゃん、この人が、皆と居れるようにするって」


「そう……なんだ」


「だから、外に行ったロッティとも、また一緒に遊べるんだよね?」


 ロッティ?

 聞いた事のない子供の名前だった。

 けど、そんな事を気にしてられない叫び声が、私の耳に入り始める。


「変なこと言わないで! あの子は、私達を見捨てて逃げたんだから、一緒になんか遊べる訳ないじゃんッ!」


 そう強く言い放ったマルレーネちゃんの声が、夜の広場に響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ