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第108話:ノエルさんと二人で


 あれから子供たちと遊んだ。

 疲れ知らずの子供たちを何人か、疲れさせたのだから私の勝利である。


 暫くしてテレンスさん戻った。

 そのまま私とノエルさん断りを入れ、ルイスさんを連れてどこかへ行ってしまう。


 ルイスさんも伯爵様だ。

 色々と忙しいのも無理はない。



 そして――遊び終えた私は今、

 街を歩きながら衣服に風を当てて乾かしている。


 広場を出る前に大半を乾かしたから、そんなに酷くはないけど放置もしたくなかった。そんな私が誰かにぶつからないように気遣いながら、ノエルさんが一緒に歩いてくれている。


「ノエルさんの方は大丈夫ですか?」


「僕は、余り水を受けない様にしていたからね」


 子供たちに水をかけられ、華麗に避けるノエルさんを思い出してしまう。


 確かに、あれだけ綺麗に避けられた受けろとは言えない。


 実際に私だけじゃなくて、男の子たちも静かな歓喜の声を上げていた。


「風邪とかひかないようにね」


「大丈夫ですよ、こう見えて、見た目以上には濡れてないですから」


 水と言っても、元は私が作った水だ。

 ぶつかる直前で消そうと思えば、魔力で無理やり消せる。


 けど、全部そんな事をしては意味がないから、少しだけ受けていた。


「魔力を操れば、色んな事が出来ますから」


「本当に驚いたよ。魔力の操作に、そんな使い道もあったんだね」


「もっと色々あると思いますよ。魔術の探究に終わりはないですから」


 ただ使うだけでも幅は広い。

 それを他の事にも使おうとしたら限りなく増えてしまう。


「そう言えば、ノエルさんって。魔術、使えたりするんですか?」


「使えない事もないかな」


 少しハッキリとしない答え方だけど、それで十分だ。


「なるほど、大変ですね」


 ただ使えないで許されないのが、貴族や王族の人達だ。

 

 きっと何かしら辛い思いをして、頑張ったに違いない。でも、ノエルさんがちゃんと魔術を使う所を見てみたい気もする。


「いつか、見せて下さいね」


「勿論、必要とあれば使わせてもらうよ。誰かを守る為に、身につけたからね」


 それを聞いて、私は考えを改めてしまう。


「やっぱり、使わなくて大丈夫です」


「良いのかい?」


 少し驚いたノエルさんが歩きながら、私の方を見てくる。


「だって、ノエルさんが魔術を使う状況って、何だか。とってもピンチって事になりません? 騎士は剣を振るって、魔術師が魔術を扱う。これにつきますよ」


 見返したまま答えると、ノエルさんが静かに笑った。


「それもそうだね。でも、君は魔術師なのに、良く剣を持っているのを目にするけど?」


「それはそれ、あれはあれです」


「そういう事なら。今度、君さえ良ければ、剣だけで手合わせしてもらおうかな」


「私がですか!?」


 今度は私の方が驚いて聞き返してしまう。


 ノエルさんと手合わせ!?

 少し考えただけでも色々と不味い気がする。


 攻撃が当たっても喜べないし、傷を負わせてしまったら私の方が心に傷を負ってしまう。

 いくら治癒出来るとしても。


「なしです! 絶対になしです! そんな事になったら無条件降伏しますから」


 少し考えるだけで、直ぐに思考が止まる状況だ。


「騎士団の皆に、怒られてしまうよ」


「何言ってるんですが、寧ろ褒め称えられる姿が思い浮かびます」


 戦わなかった私に、拍手喝采が起こるに違いない。

 よく戦わなかったと。


 もし戦ってしまえば、勝っても喜べず、負けても誰も嬉しくない。


 不毛の戦いだ。


 ノエルさんは自分がどう思われてるのかを、少し読み違えているのかもしれない。


「ノエルさんも、まだまだですね」


 微笑んでノエルさんを見ていた私が、前を向いて先に進む。


「美味しい食べ物が、私達を待っています!」


 テレンスさんに聞いた。というよりも、既に席はとってありますと言われたお店に今は向かっている。


 ルイスさんの指示で少し離れたと思ったら、そんな事も済ませていたのだから本当に凄い。



 やがて、いくつもの道が交差する広い場所に辿り着いた。

 中央には大きな噴水が設けられ、建物同士がかなり離れている。


 広場から見て東側側。

 そこに教えてもらったお店を見つけた。


 三階建てのレンが造りの建物。ガラス越しに見える一階部分にはカウンターとテーブル席が見え、二階の窓にも同じ様に客席が用意されている。


 そして――特徴的な、三階から突き出ているテラス席。全体的にテラス部分だけは木材で造られ、二階からも支える形で木材が伸びている。

 

 ちゃんとした屋根はテラス席にないけれど陽の光を防ぐパラソルらしき物が並び、日陰になっている事が離れている場所からでも一目で分かった。


「これはまた、凄い所を……」


 恐らくこの街で一番、立地が良さそうなお店だ。


 余り街を歩けてはいないけど、大通りというのはそういう場所になる。


「きっと美味しい物があるに違いないですよ! 行きましょうノエルさん」


 自然と私は、ノエルさんの手をひいて建物へと向かった。


 美味しい食べ物に引き寄せられるのだから、仕方がない。


 けれど私は――お店の中に居る楽しそうなカップルを見つけてしまう。



 あれ、もしかしなくても……。

 今の状態は、デート最中の二人組に見られているんじゃ――。


 ルイスさんも居なくなって、今は二人だ。

 ブレンダさんが居る訳でもない。


 更に私が手をひいた事で、余計にそういう感じになってしまっている。


 後ろを振り向こうとする動きを止め、前だけを向く。


 意識した事で動きがぎこちなくなり、

 どうにか前に突き進み、ノエルさん二人でお店に入った。




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