805話 Eroi ossan 2nd 03
「”ダークエルフは、闇の一族”。
”邪神に与し、光の勢力と敵対する”。
いったい誰が言い出した事やら───実は、調べが付いてはいるのだけどね。
だが、訂正しようと喚いたところで、情勢は変わるまいよ。
とにかくもう、”連中は悪い奴等だ”という噂が出回って、皆が信じ込み。
今やすっかり、『ファンタジー世界で定番の悪役』にまでなってしまった。
どう否定してもそれが、紛れもない現状だな」
「むう」
「いずれ我等が人の世に対し、公然と身を明かす際。
その時には、様々な偏見と憶測で反発されるのが目に見えているが。
まずは、少しずつ『理解者』を増やそうと思っている。
貴殿のように精霊を感じられる人間と交流し、一つずつ誤解を解いてゆく。
地道だがその分、最も確実で穏便な手段さ。
幾ら時間が掛かろうと、そこは構わんよ。
どうせ我等の寿命は、世界樹のように長いからな!」
ダークエルフの男が、心底楽しげに笑う。
私が自分の立場に置き換えて考えれば、とても笑える状況ではない筈だ。
真実を歪められた悔しさ。
反論出来ぬ歯がゆさ。
恨みの感情を抱き、目の前の相手に噛み付いても無理はなかろうに。
───だが、サリウフォルト殿は、こちらを責めなかった。
───”憎き人間め!”と私を非難せず、穏やかに事情と心中を告白してくれた。
精霊。
大地の力。
気。
目には見えぬものを信じるならば、見えるものも同様に大切にすべきだ。
少なくとも、眼前のダークエルフという存在が有害だとは思えない。
こうして話していると、良く分かる。
彼の性格は。
前の夢で触れ合ったエルフ達と、非常に似通っている
享楽的でフレンドリーな雰囲気が、彼等とそっくりなのだ。
まるで、《肌の色だけ》変えたか、と思えるほどに。
「───さて。
せっかくの機会であるし。
もう一歩踏み込んで、確実に証明しておこうか」
「・・・証明?」
「実は、この近く。
少し南へ行ったところに、エルフの集落があってだな。
そこを訪れたならば、ダークエルフが彼等といかに接しているか。
『一種族』として、どのように受け入れられているか。
そういったところが、貴殿にもしっかりと理解出来るだろうよ。
なあに、さほど遠くはないぞ?
言葉を重ねるより、自身の目で見るのが一番さ!」
「はあ」
───やや急かされ、木造の家屋から外へ出て。
───合流した数名のダークエルフと、霞み掛かった森の奥へ進み。
5分も歩いたところで私達は、何のアクシデントも無く目的地に辿り着いた。
そこには確かに、大勢のエルフがいて。
その誰もがサリウフォルト殿達、ダークエルフに敵意を向けてはいなかった。
私も同様、《吹いて来た風》の如く、自然に迎えられた。
「ちょっと、あんた!
また顔色が《濃く》なってるけど、大丈夫なの?
野菜は毎食、ちゃんと食べてる?
誰も叱らないからって、夜更しばかりしてないでしょうね?」
「ああ───うん、まあ───」
「『まあ』じゃないでしょう、『まあ』じゃ!」
母親のような物言いのエルフ女性に、サリウフォルト殿が後ずさっているが。
私は。
それよりも聞き捨てならないものがあり、そちらへ気を取られてしまった。
音楽。
エレキギターの響き。
広場の中央で演奏している若者に、見覚えがある。
実際に会うのは初めてだが、音楽雑誌やMVで顔は知っている。
こいつめ。
生で聴いてもやっぱり、《いい音》を出すもんだな。
ニューウェーブなど、遥か昔の遺物。
オルタナ世代すらとっくに過ぎ去った、現在のミュージックシーンだが。
《こういう今風の》もまあ、嫌いじゃないぞ。
ソリッドで攻撃的なリフを主線としつつも、そこに熱いグルーブを潜ませ。
泣きメロの中に、若干のセクシーさまで溶かし込むとは。
若造のクセに、中々渋いところを突くじゃないか。
これは、私への挑戦と見ていいな?
そういうことだな??
「ギルバート・サイクス君、だったかね?」
「えっ?
えええっ!?
ア、アンタ───いえ!あなたは、もしかしてっ!?」
曲が終わったタイミングで声を掛けると、驚愕の余りピックを取り落とす青年。
ははは!
君くらいの年齢でも、私のことは知っているようだね。
感心、感心!
それとも単に、私の顔がエロ過ぎるのかな??
「こうして出会ったのも、精霊の縁。
自己紹介などせずとも、我々はギタリストだ。
弾くだけで十分。
それで全てが分かるだろう?
さあ。
セッションといこうじゃないか。
観客も、それを期待している様子だぞ?」
「!!!」
予想通り、いつの間にやら出現したmyギターを撫で、笑ってみせる。
前回のようにまた、アンプやエフェクター無しで思う存分に弾けるのだろう。
相手もさっきまで、同じように様々な音色を出していたしな。
さて。
《年季の違い》というものを、たっぷりと御披露しようか。
業界随一の『ねちっこさ』に、『いやらしい合いの手』を存分に混ぜ込んで。
この場に集いし、全ての者よ。
私の演奏によって欲情し、絶頂し。
性別お構いなしで、もれなく妊娠するがいいぞ!
ハッピー・セクシー・ウェーーーブ!!




