804話 Eroi ossan 2nd 02
「───まず、誤解を解いておきたいのだがね」
2杯目の物騒なホットドリンクを飲みつつ、男は言った。
「我々ダークエルフは。
ごく普通に平和を愛する、非常に温厚な種族なのだよ」
「はあ」
「『CBS』と同じさ。
見た目で引く者もいるだろうが、蓋を開けてみれば何という事もない。
他者を害さず、争いを好まず。
去る者を追いはしないが、来訪者は大歓迎!
鳥や魚とて、種が違えば色も習性も異なるのが道理。
しかし、大まかにはやはり、鳥は鳥、魚は魚さ。
そうだろう?」
「ええ・・・まあ」
「邪な存在に仕えるだとか、復活を目論むだとか。
そういうのは、少しも真実ではない。
人間が作り出した都市伝説みたいなものさ!
そもそも、神も邪神も敬うつもりがない。
基本的に我等は、《自然調和》こそを第一に掲げているんだ」
「・・・自然、調和」
「そう。
どうしてこんな事を話すかと言うとだな。
貴殿は我等と、かなり近い感性を備えているからだよ」
「・・・・・・」
「何となくでも、《感じている》んだろう?
通り過ぎる風の中。
水や炎の内側。
大地にも。
こうやって座っている周囲にさえ、《それらがある》と。
誰に否定されようが貴殿は。
それを信じ、彼等の微かな息吹に思いを馳せている。
その点において、我等は同類なのだよ」
「・・・むむ・・・」
確かに私は、業界屈指の《アレな奴》。
スピリチュアルにスピリチュアルを混ぜ。
スピリチュアルで割ってからもう一発、スピリチュアルを足したような男だ。
《自然主義万歳!》な、あまり。
そういうテーマのアルバムを制作して大爆死した経験すら、恥じていない。
奏でるギターが官能的なだけでなく、面倒臭さにも相当な定評があるのだ。
「・・・やはり、精霊は存在する、のか」
「勿論だとも!」
「ならば、《地脈》や、肉体における《気》の存在なども」
「ある、ある!
ありまくりだ!
大体にして《神》以外は、この世に溢れ返っているぞ!
それらは、いかなる時も万物に対して影響を及ぼすが。
『目を背けぬ者』『親しき者』には、更なる恩恵を与えるのだよ!」
「おおっ!」
我、核心に至れり!!
精霊こそ、パワー!
自然主義万歳!
これまで散々に変人扱いされ、半笑いの目で遠巻きに見られてきた。
”幽霊を見た”くらいなら、誰が言ってもそれなりに受け入れられるのに。
精霊の事を口にした途端、皆から『頭がオカシイ』という認定を受け。
妻は、息子を連れて出て行った。
一人きりになったので曲制作に精を出していたら、電気代が2倍になり!
買ったばかりの冷蔵庫が冷えなくなって、メーカーに交換させても駄目で!
風呂場の排水管が詰まり!
愛車が故障し!
尻にできた大きなニキビが、未だ治らず痛くて!
けれど、私は!!
少しも間違っていなかったのだ!!
この夢は、まさに《啓示》!
母なる自然が私に、新たな段階へと導く為に送ったものであろう!
つまり、もう一枚。
いや、二枚組でニューアルバムを出せ、という事かっ!!




