第六話 「歴史改変組織(ヒストリーリビジョンズ)」
第六話
「歴史改変組織」
市立歴史資料館での戦いから一夜。
大十字ラボの作戦室には、重い空気が流れていた。
巨大モニターには、昨夜の戦闘データが映し出されている。
真田幸村たちは黙って見つめていた。
やがて大十字大和が口を開く。
「昨日の敵について、分かったことがある」
画面が切り替わる。
黒い空間。
歪んだ人影。
そして、怪物を生み出した謎の存在。
「敵組織の名称を決定した」
大和は静かに言った。
「歴史改変組織――ヒストリーリビジョンズ」
幸村が眉をひそめる。
「歴史を改変する組織か」
「そのままだな」
政宗が腕を組む。
大和は頷いた。
「奴らは歴史を歪めることで世界を作り変えようとしている」
「そして、その中心にいるのが――」
画面に巨大な黒い目が映る。
見るだけで不快になる存在。
「邪神天統」
室内の空気が冷たくなった。
光秀が目を細める。
「まるで人の悪意を集めたような姿ですね」
「その通りだ」
大和は答えた。
「奴は人類の後悔、憎悪、絶望が集まって生まれた存在だ」
「目的は?」
謙信が尋ねる。
「人類を最悪の歴史へ導くこと」
沈黙。
信長だけが笑った。
「面白い」
全員が振り向く。
「世界を支配したい者は多い」
信長は椅子にもたれた。
「だが、歴史そのものを支配しようとはな」
その時だった。
警報が鳴り響く。
《歴史歪曲反応確認》
《レベル3》
《発生地点・中央商店街》
「来たか!」
大和が立ち上がる。
「出動だ!」
中央商店街。
昼下がり。
買い物客で賑わう通りが混乱に包まれていた。
人々が逃げ惑う。
店の看板が砕ける。
黒い霧が広がる。
その中心に立っていたのは――
一人の男だった。
鎧武者。
しかし顔は見えない。
黒い炎に包まれている。
《認識確認》
《歴史改変開始》
「また歪曲体か」
政宗が呟く。
だが風間史郎が顔色を変えた。
「あれは違う!」
全員が振り向く。
「どういうことだ?」
幸村が尋ねる。
風間は震えていた。
「あの鎧は……戦国時代のものだ」
「何?」
大和の表情が変わる。
男はゆっくり顔を上げた。
その目が赤く光る。
《守るために勝つ》
《勝つために全てを捨てる》
《敗北は許されない》
幸村の背筋が凍った。
聞き覚えがある。
あまりにも。
「まさか……」
男が笑った。
《真田幸村》
《お前は弱い》
幸村の目が見開かれる。
「俺を知っている……?」
黒い炎が吹き上がる。
《私は可能性》
《お前が敗北を拒んだ未来》
《獄炎》
その瞬間。
幸村の胸が激しく脈打った。
獄炎。
それは幸村のIF。
もし敗北を認めず。
勝利だけを求めたなら。
生まれていた存在。
「ふざけるな!」
幸村が叫ぶ。
「俺はそんなものではない!」
《違うか?》
獄炎が笑う。
《守れなかったではないか》
その言葉が胸を刺す。
主君。
仲間。
失った者たち。
《勝てば守れた》
《もっと力があれば》
《もっと強ければ》
幸村は言葉を失った。
その時。
命が叫んだ。
「幸村さん!」
ハッとする。
振り返る。
そこには不安そうな命の姿。
「そんな顔しないで!」
幸村の心が揺れた。
獄炎が笑う。
《弱さだ》
《その甘さが敗北を生む》
黒炎が爆発した。
商店街が吹き飛ぶ。
「危ない!」
謙信が前へ出る。
「義心結界!」
緑の光が広がる。
人々を守る壁が展開される。
轟音。
衝撃。
しかし防ぎきれない。
結界に亀裂が走った。
「強い……!」
謙信が歯を食いしばる。
「ならば!」
幸村が前へ出る。
「変身!」
「変身!」
五人の声が重なる。
『勇士・起動!』
『独眼・起動!』
『布武・起動!』
『義心・起動!』
『幻影・起動!』
五色の光が商店街を照らした。
グレンレッド!
ムーンブルー!
オウゴンイエロー!
セイギグリーン!
シャドウパープル!
五人が並ぶ。
獄炎は静かに見つめていた。
《来い》
《真田幸村》
《お前の弱さを終わらせてやる》
幸村は双槍を構えた。
赤い炎が燃え上がる。
「違う」
静かに言う。
「弱さがあるから、人は強くなれる」
獄炎が笑う。
《甘い》
二人が同時に駆け出した。
赤と黒の炎が激突する。
轟音が商店街に響き渡る。
そして――
幸村最大の試練が始まろうとしていた。
第七話へ続く
次回予告
「勝利のためなら全てを捨てろ」
そう囁く獄炎。
心を揺さぶられる幸村。
だが仲間たちは諦めない。
そして明かされる、
ヒストリーリビジョンズの新たな幹部――。
第七話「獄炎 ―もう一人の真田幸村―」。




