第2話 「選ばれし者たち」
第2話「選ばれし者たち」
暗い天井だった。
見たことのない灯りが、白く揺れている。
「……ここは」
真田幸村は、ゆっくりと体を起こした。
硬い床ではない。
畳でもない。
妙に柔らかい寝台。
鼻を刺す消毒液の匂い。
「起きたか」
低い声。
振り向く。
そこにいたのは、白衣の男だった。
四十代ほど。
鋭い目。
疲れ切った顔だが、なぜか武将とは違う覇気がある。
「誰だ」
幸村が警戒する。
男は静かに答えた。
「私は、大十字大和」
「君たちを、この時代へ呼んだ人間だ」
空気が止まる。
「……何だと?」
幸村の目が鋭くなる。
その瞬間。
別の声。
「つまり人さらいというわけか」
ソファにくつろぎながら座っていた
伊達政宗が笑う。
スマホを器用に操作しながら。
「面白い世界だな、ここは」
「笑い事ではない」
窓際の
上杉謙信が言う。
「説明を求める」
「説明、か」
椅子に深く座っていた
織田信長が笑う。
「ならば聞こう。この世は、何だ?」
部屋の隅。
影のように立っていた
明智光秀だけは、何も言わない。
ただ、大和を観察している。
大和は、小さく息を吐いた。
「単刀直入に言う」
「世界は、壊れ始めている」
モニターが起動する。
映し出されるのは、昨日の怪物。
黒く歪んだ存在。
「これは、“歴史歪曲体”」
「人間の後悔、憎しみ、願望……そういった感情が暴走した存在だ」
「感情が、怪物になるだと?」
幸村が眉をひそめる。
「歴史には、“こうだったらよかった”が積み重なる」
大和は続ける。
「救われなかった者」
「負けた者」
「滅びた者」
「その感情が、歴史そのものを歪め始めている」
画面が切り替わる。
崩壊した都市。
燃える空。
巨大な黒い影。
「放置すれば、この時代は消える」
静寂。
政宗が口を開く。
「……なぜ俺たちだ」
大和の目が、五人を見る。
「君たちは、“歴史の分岐点”にいた人間だからだ」
「選択一つで、時代を変えた者たち」
「選択……」
幸村が呟く。
昨日、自分が刃を止めた瞬間を思い出す。
「本来、歴史は固定されている」
「だが今は違う」
「歪みが、過去も未来も侵食している」
信長が笑う。
「つまり、我らに世界を救えと?」
「そうだ」
大和は迷わず答えた。
「断る」
即答だった。
幸村たちが振り向く。
言ったのは、光秀だった。
「我々は、この時代の人間ではない」
「守る義務もない」
静かな声。
だが冷たい。
「……確かにな」
政宗も頷く。
「元の時代へ戻す方法を探す方が合理的だ」
「ならば」
大和が言う。
「これを見ても、同じことが言えるか」
モニターが切り替わる。
映ったのは――昨日の少女。
泣きながら、誰かを探している。
『お母さん……』
その背後で、空間が裂ける。
怪物が現れる。
幸村が立ち上がった。
「……まだ出るのか!」
警報。
赤いランプ。
施設が揺れる。
『歴史歪曲反応、急速増大』
機械音声が響く。
「来るぞ!」
大和が叫ぶ。
「今度は大規模だ!」
地上へ飛び出す五人。
夜の街。
空が裂けていた。
無数の怪物。
人々の悲鳴。
炎。
崩壊。
「……くそっ」
幸村が歯を食いしばる。
「見ろ」
謙信が言う。
瓦礫の下敷きになった人々。
逃げ惑う子ども。
信長の顔から笑みが消える。
そのとき。
五人の腕が、同時に光った。
家紋。
六文銭。
三日月。
織田木瓜。
毘沙門天。
桔梗。
光が脈打つ。
「来たか……!」
大和が振り向く。
「今だ!戦極ドライバーを使え!」
光が腕へ収束する。
粒子が渦を巻く。
手甲のような金属の装甲が腕に形成されていく。
「これは……!」
幸村が目を見開く。
『適合確認』
『歴史因子同期』
『変身承認』
「変身しろ!」
大和の叫び。
「その力は、君たちの“意志”を形にする!」
怪物が迫る。
少女が泣いている。
幸村は拳を握った。
「……今度も、守る」
政宗が銃を構える。
「合理的に片付けるか」
信長が笑う。
「この世も、退屈はせぬな」
謙信は静かに槍を構える。
「ならば、義を通すまで」
光秀だけが、少し遅れて腕を見る。
迷っている。
だが。
少女の声が響く。
「たすけて……!」
光秀は、目を閉じる。
小さく呟く。
「……また、この世でも…選ぶのか」
五人が、一斉に腕を振る。
「変身!!」
光が爆発する。
赤、青、金、緑、紫。
五色の閃光が夜を裂く。
頭の中に声が響き自然と理解する。 『装甲形成』
『ヒストリア粒子展開』
『家紋コア解放』
幸村『勇士・起動!』グレンレッド。 赤い粒子が炎のように吹き上がる。
脚部から装甲形成。
胸部に六文銭。
手には、二双の槍。背後に紅蓮の残光。
正宗『独眼・起動!』ムーンブルー。 青い粒子が流星のように走る。
細身の装甲。
片目が鋭く発光。
長銃〈三日月式〉が展開される。
信長『布武・起動!』オウゴンイエロー。 黄金の粒子の衝撃波。
重厚な装甲が、一気に形成される。
背後に揺らぐ金炎。
巨大な覇王大剣が地面に突き刺さる。
謙信『義心・起動!』セイギグリーン。 風が吹く。
静かな緑の粒子が全身を包む。
長槍と同時に、半透明の結界が展開。
周囲の瓦礫が止まる。
光秀『幻影・起動!』シャドウパープル。 紫の粒子が増える。
一人だったはずの姿が、三つ、五つに揺ぐ。
最後に本体だけが前へ出る。
音もなく、刀が現れる。
五人が並ぶ。
その姿を見た少女が、涙を浮かべながら呟く。
「……ヒーローなの?」
幸村は、その言葉に戸惑う。
戦場では、呼ばれたことのない名だった。
だが。
胸の奥で、何かが燃え始めていた。
《調査開始》
空の裂け目から、冷たい声が響く。
《歴史修正対象を確認》
これから本当の意味で、彼らの戦いが今始まる。
第3話へ続く。
変身システム ■名称:戦極ドライバー
腕部装着型デバイス(手甲型)
「家紋コア(各武将の家紋エネルギー)」を装填して変身
音声:「勇士・起動/独眼・起動/布武・起動/義心・起動/幻影・起動」など個別トリガー




