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第十四話 「桜の記憶」

第十四話 「桜の記憶」

春――。

天城市の桜は満開だった。

川沿いの並木道を、一人の少女が歩いている。

長い黒髪。 優しい瞳。 そして、どこか寂しげな横顔。

名前は、巴。

二年前。 山奥の古い神社で倒れているところを発見された。

記憶はなかった。

名前も。 家族も。 故郷も。

ただ――

剣と薙刀だけは覚えていた。

だから今は、大学に通いながら、剣道教室で子どもたちに剣を教えている。

「巴先生ー!」

「一本お願い!」

巴は優しく笑った。

「ええ。今度は負けませんよ?」

木刀を構える。

その姿は美しかった。

風のように柔らかく。 花のようにしなやかで。 誰よりも強い。

命は、そんな巴を尊敬していた。

「巴ちゃんって、本当に昔のお姫様みたい!」

巴は少し困ったように笑う。

「そんな大した人じゃないですよ」

そう言った瞬間。

胸の奥が少し痛んだ。

自分は誰なのか。

なぜ、こんなにも剣を振れるのか。

時々、夢を見る。

馬に乗っている夢。

戦場を駆ける夢。

誰かを守ろうとしている夢。

でも、その顔だけが思い出せない。

「私は……誰なんだろう……」

巴は舞い散る桜を見上げた。

その頃。

大十字ラボ。

警報が鳴り響いていた。

《未確認家紋コア反応》

《桜紋、出現》

命が飛び上がる。

「桜紋!?」

大和博士も驚いていた。

「ついに見つかったか……」

幸村が尋ねる。

「仲間なんですか?」

大和は静かに頷く。

「おそらく最後の追加戦士だ」

その時だった。

天城市上空。

空間が裂ける。

黒い雷。

邪神天統の声が響いた。

「目覚めよ」

「桜を断ち切るための刃」

黒い霧が集まり。

巨大な異形が現れた。

歴史獣――妖桜鬼。

全身を黒い桜で覆われた巨大武者。

右腕には巨大な妖刀。

左腕には無数の荊棘。

咆哮。

衝撃波で周囲の桜が吹き飛ぶ。

人々が悲鳴を上げた。

「逃げろ!」

巴は迷わず前へ出る。

「みんな、下がって!」

だが。

妖桜鬼の妖刀が振り下ろされた。

巴は木刀で受け止める。

しかし。

圧倒的な力。

木刀が砕けた。

吹き飛ばされる。

地面を転がりながら、それでも立ち上がる。

「まだ……!」

妖桜鬼が迫る。

逃げ遅れた子どもが泣いていた。

巴は振り返る。

その瞬間。

心の奥で何かが叫んだ。

守れ。

守れ。

守れ――!

視界が白く染まる。

記憶が溢れ出した。

馬上の自分。

戦場。

源平合戦。

降り注ぐ矢。

薙刀を振るい。

仲間を守る。

名を呼ぶ声。

――巴御前!!

巴の瞳から涙が流れた。

「そう……」

「私は……」

桜吹雪が舞い上がる。

「巴御前!」

右手に光が宿る。

桜色の家紋。

《桜紋認証》

《戦極起動》

花びらが身体を包む。

胸部に桜紋。

腕には花弁装甲。

背中には桜の翼。

《ブロッサムピンク》

誕生。

命が歓声を上げる。

「巴ちゃん!!」

巴は静かに微笑んだ。

「ただいま」

右手を掲げる。

光が集まる。

《桜薙刀・花霞》

桜色の薙刀が出現。

妖桜鬼が突撃。

だが。

巴の姿が消えた。

《花弁分身》

桜の残像が十体。

敵が混乱する。

「そこです!」

一閃。

二閃。

三閃。

花びらと共に、敵の装甲が裂けていく。

妖桜鬼が怒り、黒い桜吹雪を放つ。

巴は舞うように避ける。

薙刀が円を描く。

桜色のエネルギーリボンが伸びた。

《花霞縛》

敵の腕を拘束。

さらに。

「終わりです!」

空高く跳躍。

無数の花びらが集まる。

巨大な桜が空に咲いた。

《桜花乱舞!!》

桜色の閃光。

巨大な一閃が妖桜鬼を貫く。

敵は静かに崩れ落ちた。

黒い桜が浄化され。

本物の桜へ変わって舞い散る。

幸村が笑った。

「仲間が増えたな!」

政宗が頷く。

「しかも強い」

信長も豪快に笑う。

「見事!」

光秀は深く礼をした。

「よろしくお願いします」

巴も優しく頭を下げる。

「こちらこそ」

命が抱きつく。

「巴ちゃん、おかえり!」

巴は少し照れながら笑った。

「ただいま」

その笑顔は、記憶を失っていた頃よりも、ずっと優しかった。

舞い散る桜。

幸村は、その光景を見ながら大きく頷く。

「これで七人――いや」

「ようやく全員が揃ったな」

信長が笑う。

「戦国の英傑がこれほど集まるとは」

「天下統一も夢ではないな」

「お断りします」

光秀が即座に返し、周囲が笑いに包まれた。

                    次回予告 第十五話「束の間の休息」

妖桜鬼との激しい戦いを終え、ついに巴も仲間になった!

久しぶりに訪れた平和な時間。 商店街では幸村がお手伝い! 信長はハンバーガーに大興奮!? 政宗はクレーンゲームに大苦戦! 謙信や信玄、巴たちも、それぞれ現代の日常を楽しむ。

だけど、その平和は長くは続かなかった――。

闇では邪神天統が、新たな恐るべき計画を動かし始める。

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